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2024/05/29

譚 海 卷之十五 諸病妙藥聞書(20)

○灸、かさ、なほりそんじたるには、

 井の中の靑苔を、靑竹の中の紙を、とり、それに付(つけ)て、「灸のふた」とすベし。

 

○「うるし」にかぶれたるには、

 鰹魚(かつを)を、くひて、よし。

[やぶちゃん注:私は二十年前、大好きだったマンゴーも食べられなくなったウルシ過敏症であるが、大好きなカツオを試したい気は、全く、しない。]

 

○巴豆(はず)の毒に、かぶれたるには、

 黑豆の「せんじ汁」にて洗(あらふ)べし。其儘、いゆる也。

[やぶちゃん注:「巴豆」「(4)」で既出既注。]

 

○「霜やけ」には、

 里芋を、土のまゝ、黑燒にして、胡麻油にて、付(つく)べし。

[やぶちゃん注:小学校を卒業した直後、鎌倉から富山の高岡へ引っ越した。最初の冬、両足が、霜焼けに襲われた。赤斑らになり、激しく痒かったのを思い出す。]

 

○「ひゞ」のくすり。

 「からす瓜」の赤く成(なり)たるを、酒に、すりまぜて、付(つく)べし。

[やぶちゃん注:「からす瓜」実が赤くなったのが好き。家の玄関に乾燥したそれが、十年ぐらい前から飾ってある。ウリ目ウリ科カラスウリ属カラスウリ Trichosanthes cucumeroides や、カラスウリ属 Trichosanthes kirilowi 変種キカラスウリ Trichosanthes kirilowii var. japonica である。キカラスウリの方は、学名から察せられる通り、日本固有種であり、北海道から九州に自生している。ウィキの「カラスウリ」によれば、『若葉は食べる人は少ないが』、『食用になる』。『採取適期は、関東地方以西の暖地では』五~八『月、東北地方以北などの寒冷地では』六~八『月ごろとされる』。『摘んだ葉は茹でて水にさらし、ごま和えや』、『マヨネーズ和えなどの和え物、炒め物などにして利用する』。『生の若葉は、そのまま天ぷらにも出来る』(この「天ぷら」は東北の奥深い温泉宿で食したことがある)。『初秋のまだ熟さない緑色の果実も食用にし、摘んで塩漬けや味噌漬けにしてお新香としたり、汁の実にしたりする』。『食味は苦みがあり』、『万人向きではないが、酒の肴として好まれる』とあった。今度、食ってみんべい。]

 

○「あかぎれ」には、

 足を、よく、あらひ、「おはぐろ」を、わかし、「あかぎれ」の口へ、入(いる)べし。一日の内に愈(いゆ)る也。

 

○「風(かざ)ぼろし」には、

 「えの木」の「は」を、酢にて、せんじたるを、付(つく)べし。

[やぶちゃん注:「風ぼろし」「デジタル大辞泉」に「かざほろし」(風疿)で載り、「ほろし」は発疹のこと。「かざぼろし」とも言うとあり、風邪の熱などが原因で、皮膚に生じる小さな発疹。「かざはな」とも言う、とあった。使用例を「和名類聚鈔」とするから、平安中期には既にあった病名である。]

 

○腫(はれ)やまひを治する法。

 冬瓜(たうがん)の「つる」の所を、茶釜の蓋の如く、切(きり)て、其内に有(ある)たねを、取(とり)すて、其後(そのあと)へ、「かうじ」一升二合、焚(たき)たての「めし」を、六合、あはせ、つめて、其後(そののち)、「ふた」をし、かたく、繩にて、くゝり、晝は、日のあたる所へ出(いだ)し、夜は、「ふとん」などにて、つつみ置(おく)時は、五、六日過(すぎ)て、よきほどの甘酒に成(なる)也。その「あま酒」を、あたゝめ、くらふときは、腫病、よく直る也。扨(さて)、殘りの冬瓜をば、別に「あまざけ」に造りおいて、其(その)甘酒の中へ、冬瓜を、切(きり)、まぜ、用(もちゆ)べし。是も、よきほどの功ある甘酒となり、病氣本復迄に、用ひあまるほど也。

 

○又、一方。

 越後の國にて腫病(はれやまひ)に、山牛房[やぶちゃん注:ママ。](やまごばう)を煮て、くふ事也。「商陸(しやうりく)」よりは、其(その)功、萬々(ばんばん)也。

[やぶちゃん注:「商陸」ナデシコ目ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属 ヤマゴボウ Phytolacca acinosa 。しかし、有毒であり、食用には適さない。なお、ご存知かと思うが、「山牛蒡の漬物」として販売され、寿司屋等で呼ぶそれは、真正のヤマゴボウではなく、キク目キク科アザミ属モリアザミ(森薊)Cirsium dipsacolepis・オニアザミ(鬼薊)Cirsium borealinipponense・キク科ヤマボクチ属オヤマボクチ(雄山火口)Synurus pungens の根である。]

 

○疱瘡には、

 一角を粉にして、時々、「さゆ」にて用(もちゆ)べし。極上の治方也。六ケ敷(むつかしく)手を引(ひき)たる「ほうそう[やぶちゃん注:ママ。]」に、よし。

[やぶちゃん注:「一角」「極上の」と言っているからには、哺乳綱鯨偶蹄目イッカク科イッカク属イッカク Monodon monoceros の♂の一本の歯が変形した牙であろう。当該ウィキによれば、『中近世ヨーロッパでは、ユニコーンの角には解毒作用があるという伝承があったため、ユニコーンの角と偽ってイッカクの角が売買された』。『江戸時代の日本でも、オランダ商人を通じてイッカクの角がユニコーンの角として輸入されており、「烏泥哥兒」(うにかうる、うにこーる)などと呼ばれていた』。『ユニコーンの角は今村源右衛門(今村英生)や青木昆陽によって紹介されており』、『当時の百科事典』「和漢三才図会」にも『掲載されていた』。『そのようななかで、木村兼葭堂(木村孔恭)は』「一角纂考」を『著した』。『同書では、オランダ人による北極捕鯨誌などをもとに』、『西洋のユニコーンの伝説だけでなく、その正体であるイッカクの生態や詳細な骨格、さらには珍しい二本角のイッカクのことも紹介している』とあった。私の「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 一角(うんかふる/はあた:犀角) (海獣イッカクの角)」を参照されたい。

『六ケ敷手を引たる「ほうそう」』医師が匙を投げた天然痘。]

 

○又、一方。

 享保年中、淸朝より、白牛(しろうし)を、とりよせられ、房州において飼仰付(かひおほせ)られ、「もぐさ」斗(ばかり)を飼立(かひたて)て、其牛の「ふん」を、御用にて、俵に入(いれ)、江戶へ取(とり)よせ給ひ、町へも下されける。是(これ)、疱瘡の至極の治藥也。其時の「御用がゝり」齋藤三右衞門と云(いふ)人、牛込に居住せしかば、其子孫の家に、たくはへたるべし。求(もとめ)て用(もちゆ)べし。

[やぶちゃん注:「日本酪農発祥の地 千葉家 酪農のさと」の「安房の酪農―はじまりから江戸時代」を読むに、「淸朝より」というのは誤認のようである。『江戸時代の中ごろ』の、享保一三(一七二八)年、第八『代将軍徳川吉宗は美作(現在の岡山県北東部)から白牛を』三『頭導入し、嶺岡牧で飼育しました』。『嶺岡牧では』、『この白牛の数を増やすとともに』、『搾った牛乳で「白牛酪」という生キャラメルに似た乳製品を作り、日本橋の「玉屋」などで庶民へも売られるようになりました』。『この時』、『始まった「酪農」が』、『現在の酪農や乳業へとつながっていったので、千葉県が日本酪農の発祥の地といわれているのです』とあった。次の項の注も必ず参照されたい。

 

○疱瘡、かろくする「まじなひ」。

 橘町二丁目大坂屋平六と云(いふ)藥店に、「フランカステテン」と云(いふ)石、所持せり。おらんだ物にて、「まむし」の「かしら」より出(いで)たる石也。是にて疱瘡前の小兒の體中(からだぢゆう)を、なづれば、疱瘡、輕くする也。何にても腫物(はれもの)に付(つく)れば、ひつたり[やぶちゃん注:ママ。]と付(つき)て、膿水(なうすい)を、すひ出す也。膿(うみ)を吸盡(すひつく)せば、自然に、「ほろり」と落(おち)る。其後(そののち)、乳をしぼりたる中へ、此石を、ひたし置(おか)ば、吸(すひ)たる膿・血・毒氣などを、乳の中へ、吐出(はきいだ)す也。

[やぶちゃん注:前の「白牛」の話と、この話は、実は、既に、「譚海 卷之二 唐山白牛糞疱瘡の藥に用る事」と、「譚海 卷之十一 スランカステインの事」の二話で、同内容の記事が出ている。そちらの私の注を見られたい。]

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