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2024/06/10

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 盧會

 

Rokai

 

ろくはい   奴會 訥會

       象膽

盧會

       黒而苦故名

       象膽者隱語

ロウ ホイ  也

 

本綱盧會原在草部爪哇三佛齋諸國所出者乃草屬狀

如鱟尾采之以玉噐搗成膏生波斯國者乃樹脂也狀似

黒餳蓋二說不同豈亦木質草形乎

氣味【苦寒】 厥陰經藥其功專於殺蟲清熱故能治小兒

 癲癇驚風五疳殺三蟲𧏾齒甚妙

△按盧會難辨眞僞亞于阿魏其味苦而後微甘者爲眞

 然本草謂只甘

 

   *

 

ろくはい   奴會 訥會《とつくはい》

       象膽《ざうたん》

盧會

       黒くして苦す。故、「象膽」と

       名づく。隱語なり。

ロウ ホイ

 

「本綱」に曰はく、『盧會、原(もと)、「草の部」に在り。爪哇(ジヤワ)・三佛齋《さんぶさい》の諸國、出だす所≪の≫者、乃《すなはち》、草の屬にして、狀《かたち》、鱟(かぶとがに)の尾のごとし。之れを采るに、玉《ぎよく》の噐を以つて、搗きて、膏と成す。波斯(ハルシヤ)國に生ずる者、乃ち、樹の脂《やに》なり。狀、黒餳(《く》ろあめ)に似《にる》≪と≫。蓋し、二說、同じからず。豈に亦、木の質にて、草の形ちなるか。』≪と≫。

『氣味【苦、寒。】 厥陰經《けついんけい》の藥。其の功、蟲を殺し、熱を清《せい》するに專らなる故、能く、小兒癲癇・驚風・五疳を治し、三蟲を殺す。𧏾-齒(むしくいば[やぶちゃん注:ママ。])に、甚だ、妙なり。』≪と≫。

△按ずるに、盧會、眞僞を辨し難きこと、「阿魏」に亞(つ)ぐ。其の味、苦くして、後《のち》、微《やや》甘き者、眞と爲す。然≪れども≫、「本草」には、只、『甘し。』と謂ふ。

 

[やぶちゃん注:「盧會」は、中文の「維基文庫」の「蘆薈」により、

単子葉植物綱キジカクシ目ススキノキ科アロエ属シンロベラ(アロエベラ) Aloe vera

に比定される。当該の日本のウィキによれば、『アラビア半島南部、北アフリカ、カナリア諸島、カーボベルデが原産地だと考えられている。乾燥地帯でも育ち、アフリカ、インドやその他の地域に広く分布している。生薬としてもしばしば用いられる。アロエベラの薬効については多くの研究が行われている。その中には相反するものもあるが』、『抽出物は怪我・火傷・皮膚感染・皮脂嚢胞・糖尿病・高脂血症等に効くという証拠も多い』。『特にインスリン抵抗性の減少・レベル低下は、加齢関連の病態の予防に効果を発揮する可能性があると推測されている』。『これらの薬効は多糖・マンナン・アントラキノン・レクチン等の存在に依ると考えられている』。『治療用途に必要な成分抽出については品質管理が課題とされ、現在、流水で着色物質を洗い流し、特許取得済みの超乾燥システムを使用する方法が有効とされている』。『また、アロエ酪酸塩の免疫調節や慢性炎症に対する有用性も認められているものの、一方で新たな洞察が提出されることを期待する見方もある』。『増やし方は、挿し木、株分け。もっぱら葉挿しでも可能とされているが』、『真偽は不明である』。『茎がないか、非常に短い茎しかない多肉植物で』六十センチメートルから一メートルの『高さに育つ。葉は厚く、緑色から灰緑色で、表や裏に白い斑点が入っているもの等、様々な種類がある』。『葉の縁は鋸葉状で、白い小さなとげが付いている。葉の皮内細菌から抽出される酪酸発酵成分にはヒトの健康に対する予防的および治療的役割を発揮する可能性があるとされている』。『花は夏期に、高さ』九十センチメートルの『穂の上に咲く。それぞれの花には、黄色い』二、三センチメートルの『管状の花冠がぶら下がっている』。『他のアロエ属の種と同様にアーバスキュラー菌根』(arbuscular mycorrhiza:AM:は、根に菌類が共生した構造である菌根の一型)『を形成し、共生することによって土中の栄養分を効率的に得ている』。『多糖体のため保水力に優れており、腸内環境改善や摂取した栄養分の働きをサポートするなど、近年の研究により様々な特徴が明らかになりつつある』。『世界中で栽培されており、自生範囲は明確ではない。アラビア半島南部から北アフリカ(モロッコ、モーリタニア、エジプト)、スーダン、カナリア諸島、カーボベルデ、マデイラ諸島辺りが原産地だと考えられている』。『かつて硬葉植物の森林が広い範囲を覆っていたが、砂漠化によって急速に減少し、少数の種類の植物が残ったことが推測される』。十七『世紀に中国や南ヨーロッパに持ち込まれ』、『オーストラリア、バルバドス、ベリーズ、ナイジェリア、パラグアイ、アメリカ合衆国等の温帯地域から亜熱帯地域でも生育するようになった』。「医薬品」の項。『アロエベラの化粧品や医薬品としての効果に関しては限定されたものであり、しばしば議論になっている』。『現在熱傷や肝炎の治療に広く使用されてはいるものの、治療上の証拠が不足しており、その原因は、アロエベラゲル中の着色物質、成分が汚染によって変化する可能性にあるとされている』。『一方で、後述するようにアロエベラの鎮静効果、保湿効果、治癒効果について一定の有用性を認める研究結果もあり、化粧品や代替医療の業界は、これらの効果を用いた商品を取り扱うことがある』。『例えば、アロエベラのゲルは、流通しているローション、ヨーグルト、飲料、デザート等にも用いられている』。『アロエベラ』・『ジュースは胸焼けや過敏性腸症候群等の消化器疾患の解消のために飲用されている。実際に、治療が難しい過敏性腸症候群に対し、アロエベラが症状の改善に有効であることが米国消化器学会で発表されている』。『化粧品会社は、メーク、化粧水、増毛剤、ティッシュ、保湿剤』、『石けん、日焼け止め、香料、シャンプー等の製品にアロエベラの液汁等を添加している』。『その他には、ヒツジの人工受精で精液を薄めるために用いたり』、『生鮮食品の保存料』、『小さい畑の節水のためにも用いられている』。『長い間民間療法で用いられてきたが、医薬用としての利用がいつ頃から始まったのかは定かではない。紀元前』十六『世紀のエーベルス・パピルスには既に記述が見られる』。『また』、一『世紀中盤に書かれたペダニウス・ディオスコリデスの』「薬物誌」や『ガイウス・プリニウス・セクンドゥスの』「博物誌」にも『記述が見られる』。『アロイン』『という成分を除去したアロエベラは無毒で副作用も知られていないが、アロインを含むアロエベラを過剰に摂取すると様々な副作用が起こる』。『しかし、この種は中国、日本、ロシア、南アフリカ、アメリカ合衆国、ジャマイカ、インド等で伝統的な民間療法薬として広く用いられてきた』。『便秘、疝痛、皮膚疾患、寄生虫侵入、及び感染症に対する伝統的なインド医学に使用されている。また、トリニダード・トバゴでは高血圧に、メキシコ系アメリカ人の間では』、二『型糖尿病の治療に使用されている。中国医学では真菌性疾患の治療に推奨されることが多い』。『アロエベラは適切な用法を守ることで怪我の治療に一定程度有効だと言われている』。『例えば、ある研究では傷が治癒する速度を上げるという結果が得られているが』、『別の研究でアロエベラゲル(英:Aloe vera gel)を処置した傷は、他の伝統薬で処置した傷よりも効果的であるとは限らないことが指摘されているが』、『子供や幼児の間で一般的な炎症性疾患であるおむつ皮膚炎などの治療に研究結果も存在する』。『また、抗炎症作用として、紫外線による皮膚の炎症状態の局所治療に有用である可能性についても指摘されている』とし、近年の研究が続く。私は、ムカデ咬傷に効果があるという研究者の指摘を若き日に知り、たまたま、ムカデに咬まれた同僚の女性教諭が、痛みを訴え、保健師が困っているところに行き合わせ、窓辺にあったアロエの葉の肉を採取し、彼女の患部に塗布して、包帯を巻いていたところ、即時に痛みが消え、以来、私を怖がっていた彼女は、私を見直したのが、妙に忘れられない。

 「本草綱目」の引用は、「卷三十四」の「木之一」「香木類」の「盧㑹」の独立項で(「漢籍リポジトリ」)、ガイド・ナンバー[083-65b]から始まる。時珍にして、疑問を提示している部分は、特異点である。

「厥陰經《けついんけい》」東洋文庫の後注に、『体内をめぐる十二経脈の一つ。手の厥陰心包経と足の厥陰肝経とがある。足の厥陰経は足の親指から出て内股をあがり陰部へ、陰部から上行して肝、さらに側胸部から咽喉を通って眼、額から頭頂部へ。支脈は肝から肺へ。手の厥陰経は胸中から心包へ、次いで横隔膜を下って三焦につなぐ。また一支脈は、胸から側胸へ出て肢下から手を通って中指に至る。その病症は上熱下寒、胸苦しく煩悶を起こしたり、陰部が腫れたりする』とある。

「五疳」同前で、『小児の神経過敏症。それによって臓腑に病変がおこる。風疳(肝疳)・驚疳(心疳)・滾(こん)疳(肺疳)・気疳(肺疳)・急疳(腎疳)』とある。

「三蟲」東洋文庫訳では、割注して、『蛔(かい)虫・蟯(ぎょう)虫・条虫』とある。これらのヒト寄生虫が、果してちゃんと古くに認識されていたかどうかに、ちょっとクエスチョンを感じたのだが(「庚申信仰」の道教の「三尸(さんし)の蟲」を想起してしまった)、薬学論文を見るに、後漢に成立した「神農本草本經」に既に「厚朴は三虫を殺す」という記載があり、その「三虫」について、以上の三種の寄生虫がちゃんと挙げられてあった(「厚朴」はモクレン目モクレン科モクレン属ホオノキ節ホオノキ Magnolia obovata 、或いは、シナホオノキ Magnolia officinalisの樹皮を乾燥させたもの)。]

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