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2024/06/06

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 麒麟竭

 

Kirinketu

 

きりんけつ   血竭

麒麟竭   【此物如乾血

         曰麒麟者隱

         語也】

 

キイリンキツ

 

本綱麒麟血今南番《✕→蕃》諸國及廣州皆出之木髙數尺婆娑

可愛葉似櫻桃而有三角其脂液從木中流出滴下如膠

飴狀久而堅凝乃成竭赤作血色或於樹下堀《✕→掘》坎斧伐其

樹脂流於坎旬日取之

 試之以透指甲者爲眞又以火燒之有赤汁涌出久而

 灰不變本色者爲眞也凡使先研作粉篩過入丸散用

 若同衆藥擣則化作塵飛也

氣味【甘鹹】 治心腹卒痛金瘡血出破積血止痛生肉

 和血之聖藥也乳香没藥雖主血病而兼入氣分此則

 專於血分者也

△按麒麟血柬埔寨咬𠺕吧暹羅皆渡之有數品以籜包

 之如唐粽故名粽手爲上爲粉正赤者良今試之所謂

 透指甲者亦燒之灰赤不變本色者未見之

 

   *

 

きりんけつ   血竭《けつけつ》

麒麟竭   【此の物、乾ける血のごとし。

         「麒麟」と曰ふは、隱語なり。】

 

キイリンキツ

 

「本綱」に曰はく、『麒麟血、今、南蕃の諸國、及び、廣州、皆、之れを出づ。木の髙さ、數尺、婆娑《ばさ》≪として≫、愛すべし。葉、櫻桃(ゆすら)に似て、三角《みつかど》、有り。其の脂-液(しる)、木≪の≫中《うち》より流れ出で、滴り下《くだり》、膠飴(ぢわうせん)の狀《かたち》のごとし。久しくして、堅く凝《こ》り、乃《のち》、「竭《けつ》」と成る。赤くして、血の色を作《な》す。或いは、樹の下に於いて坎《あな》を掘りて、斧にて、其の樹を伐り、脂、坎より、流し、旬日にして、之れを取る。』≪と≫。

『之れ、試みるに、指甲(ゆびのつめ)に透る者を以つて、眞と爲《な》す。又、火を以つて、之れを燒くに、赤≪き≫汁、涌(わ)き出づること有り、久しくして、灰、本《もと》≪の≫色に變ぜざる者、眞と爲すなり。凡そ、使ふに、先づ、研《けん》して、粉に作《な》し、篩《ふる》ひ過《とほ》し、丸《ぐわん》・散《さん》に入れ、用ふ。若《も》し、衆藥と同≪じく≫擣《つく》時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則ち、化して、塵《ちり》と作《なり》て、飛ぶなり。』≪と≫。

『氣味【甘、鹹。】 心腹≪の≫卒痛《そつつう》・金瘡、血≪の≫出づるを、治す。積血《しやくけつ》を破り、痛を止め、肉を生《しやうじ》≪させしむ≫。血を和《わ》するの聖藥なり。乳香・没藥、血病《けつびやう》を主《つかさど》ると雖も、兼ねて、氣≪の≫分に入る≪とも≫、此れ、則ち、血≪の≫分に專《もつぱら》なる者なり。

△按ずるに、「麒麟血」は、柬埔寨(カボヂヤ)・咬𠺕吧(ヂヤガタラ)・暹羅(シヤム)、皆、之れを渡す。數品《すひん》有り。籜(たけのかは)を以つて、之れを包み、唐《もろこし》の粽(ちまき)のごとくなる故《ゆゑ》、「粽手《ちまきで》」と名づくるを、上と爲す。粉と爲して正赤なる者、良し。今、之れを試みるに、所謂《いはゆ》る、「指-甲(≪ゆびの≫つめ)に透《すきとほ》る者」≪も≫、亦た、「之れを燒≪きたる≫灰≪の≫、赤く、本《もと》≪の≫色≪と≫變ぜざる者、未だ之れを見ず。

 

[やぶちゃん注:「麒麟竭」「麒麟血」とは、熱帯地方に産する、「龍血樹」と呼ぶ、

単子葉植物綱ヤシ目ヤシ科トウ連トウ亜連トウ属キリンケツヤシ(中文学名:麒麟竭)Calamus draco 及び、その近縁種の幹などから採取される紅色の樹脂

を狭義には指す。止血剤・着色剤・防食剤に用いられる。「維基百科」の「血竭」の画像がその鮮烈な色をよく伝える。英文ウィキの「Calamus dracoには、Calamus draco Willd. のシノニムとして、

Calamus draconis Oken

Daemonorops draco (Willd.) Blume

Daemonorops rubra (Reinw. ex Blume) Mart.

Palmijuncus draco (Willd.) Kuntze

を掲げ、以下、簡潔に、『 Calamus draco はヤシ科Arecaceaeのアジア産の蔓性の籐(とう)植物ラタン(Rattan)の一種で、原産地はタイ半島からマレーシア西部。「龍の血」として知られる赤色の樹脂の原料で、薬用色素として使用される』。『Calamus draco は、茎が房状に集まって、十五メートルまで伸びる茎(一般の「籐」に相当する)を形成し、鞘の直径は三センチメートルに達する。葉身はスィアレイト(cirrate:巻髭(まきひげ)。但し、籐の葉では先端が硬い鉤爪状に装備している)で、葉鞘から生じる。葉鞘は明るい緑色で、若い個体はチョコレート色の被毛を持つ。葉柄(最大三十センチメートル、長さ六ミリメートルの短い側刺群を装備する)を含めると、長さは二・五メートルに達する。スィアレイトの総体であるスィーラス(cirrus)は約一メートルに達する。約 二十枚の小葉が、複葉の主茎の両側に規則的に並んでいる。成熟した果実は、多かれ少なかれ、卵形で、二・八~二センチメートルで、十六列の垂直な鱗片葉で覆われるが、時に「龍の血」で、ひどく覆われている場合がある』といった解説がある。学名のグーグル画像をリンクさせておく。

 さて、日本語版のウィキでは「竜血」が該当するが、そこでは、細述されているものの、あらゆる情報をテンコ盛りし過ぎて、私のダラダラ注同様に迂遠な解説になってしまっている。まあ、しかし、外来の奇品にして稀品であり、「龍血」と呼ばれて珍重された、上記の基原とされるCalamus draco とは全く異なるものが、本邦に知られ、渡来もしたであろうからして、これも、全文を引かざるを得ない。『竜血(りゅうけつ)とは、古来洋の東西を問わず、貴重品として取り引きされ、薬用やさまざまな用途に用いられてきた、赤みを帯びた固形物質のこと』を指すが、『とはいえ、実際にはさまざまな名称あり、それらが複数の物質を指すために使われてきている。この事情がやや錯綜しており、項目をいくつかに分割するのも難しい。 複数の物質とは、おもに以下の通り』として、四つの全くことなる基原植物、及び、植物ではない物質が掲げられてある(そこは引用二重括弧を外した)。

1.リュウゼツラン科ドラセナ属に属するいわゆる“竜血樹”、すなわち Dracaena cinnabari Dracaena draco などから採れる樹脂のこと。

2.東南アジア系の“竜血樹”、Dracaena cochinchinensisDracaena cambodiana などからとれる樹脂のこと。

3.ボルネオ島、スマトラ島などで採れる籐の一種、ヤシ科ヒメトウ属(キリンケツ属)・キリンケツヤシ( Daemonorops draco ) の果実を加工したもの。現地名は jernang(ジュルナン)。

4.鉱物の一種・辰砂、英名 cinnabar。

以下、『呼称については下の解説の中でふれることとするが、呼称に言及するときにも呼称がないと不便なので、ある種のメタ呼称として“竜血”の語を用いることとする』と前置きして、「西洋における“竜血”」の大項目で、『紅海の入り口の東、インド洋の西端に浮かぶソコトラ島は、遅くともプトレマイオスの時代には、古代世界の重要な貿易中継地であった。島は乾燥した岩山ばかりで農業はほとんど成り立たなかったが、唯一とも言える特産品であったのが、世界中でも同島にしか育たないベニイロリュウケツジュ( Dracaena cinnabari )から採れる竜血であった』。紀元一『世紀のペリプルス』の「エリュトゥラー海案内記」にも、『同島の特産品として記載が見える』。十五『世紀には、大西洋・カナリア諸島に赴きリュウケツジュ( Dracaena draco )の竜血を入手した者たちがいたという』。『これら』二『種の“竜血樹”はアフリカをはさんで東と西に遠く離れて分布しているが、同じドラセナ属に属する近縁種である。ほかにも類似の種が各地に分布している』。『こうした“竜血樹”の樹皮を傷つけると』、『滲みだしてくる』が、その『血のような色をした樹脂を集め、乾燥させてドロップ状にしたものがいわゆる“竜血”であり、アラビア、インド、ギリシアなどの商人の手によって各地に流通してきた』。『“竜血”の呼称としては、「竜の血」系の名(ラテン語: sanguis draconis、英語: dragon's blood)と「シナバル」系の名(古代ギリシア語』。『ラテン語: cinnabaris、英語: cinnabar)とがあったが、どちらの系統の名も、“竜血樹の竜血”以外に辰砂をも意味したという点には注意が必要である。古くは両者は同じ物質として扱われ、たびたび混同されたという』。『なお、現在の英語では“竜血樹の竜血”は dragon's blood、“辰砂”は cinnabar と呼ぶのが一般的である』。『古代ローマ時代から鎮痛効果や止血のための薬品としても使用されたほか、中世期には染料やラッカーとして用いられ、『赤い金』ともてはやされた時代もあったという』。『傷の手当てなどに外用することもあり、また内服でも用いた』。『ペダニウス・ディオスコリデスの著作にも薬用品としての記述が見られ』、『ソコトラ島』(イエメンのソコトラ県に属するインド洋上の島。ここ。グーグル・マップ・データ)『の地元民は一種の万能薬として竜血を使用するという』。『家具、バイオリンなどの製作において、仕上げ用のワニスに赤みを加える目的で用いられることがあ』り、『化学染料以前の時代には赤インクの原料として使用された』。『その他』、『薫香に練り込んだり』、『ボディオイルなどに配合されることがあ』り、『中世には錬金術や魔術の用材としても用いられたという』。以下、「東洋における“竜血”」の大項目。『中国においては「血竭(xuějié; けっけつ)」「麒麟竭(qílínjié; きりんけつ)」などと呼ばれる“竜血”が古くから知られ、漢方にも用いられてきた』。『これらの中にソコトラ島産の“竜血”が含まれていたかどうかは不明だが、「』一九七二『年に中国国内で“竜血樹”が発見されるまでは、血竭の需要は東南アジアとアフリカからの輸入に頼っていた。アフリカではリュウゼツラン科植物の幹から血竭をとり』、二千『年以上の歴史がある」とする資料がネット上には見られる』。『現在は、Dracaena cochinchinensis(剣葉竜血樹; Cochinchina はベトナム南部を指す旧称)とDracaena cambodiana(海南竜血樹)の』二『種がおもに利用され、東南アジアや中国南部で血竭が生産されている』。『なお』、『上の資料とやや矛盾するようだが』(★☞)、「本草綱目」には『「騏驎竭」として記載があり、さまざまな資料を引いておおむね「松脂のような樹脂の流れてかたまったもの」としていて、これは“竜血樹の竜血”について解説していると見て間違いがないが、蘇頌』の「本草圖經」(十一世紀成立)『からの引用として』、『今南蕃諸國及廣州皆出之』と『する。しかし』、『同書にはまた』、『別資料からの引用として「此物出於西胡」ともある』(★☜)(★☞)『いずれにしても』、『現在の中国で漢方薬、民間薬、その他に利用される“麒麟竭”は、ドラセナ属とは全く別種の植物・キリンケツヤシ Daemonorops draco の実から精製したものが最も多い。 ちなみに、ドラセナ属由来のものとキリンケツヤシ由来のものとを混同しているような様子は全く見られないのだが、とはいえ』、『両者を区別して用いることはあまり行われていないようである』(★☜)とある。この部分は、本「和漢三才圖會」の「麒麟竭」を理解する上で重要な示唆と言え、また、以下の『「到福」の紅紙』と題する一節も重要である。特異的に太字にした)。「本草綱目」に『よれば』、『“騏驎竭”の主治は「心腹卒痛,金瘡血出,破積血,止痛生肉,去五臟邪気」。“活血の聖薬”であるという。 おもな方剤には七厘散(しちりんさん)などがある』。『また』、『民間薬としては創傷、打撲、皮膚癬などに外用することもある』。『その他、西洋の竜血と同様に塗料や着色の用途にも用いられる。春節や慶時に使う紅紙(hóngzhǐ; ホンチー)の着色にも用いるという』とあった。

 「本草綱目」の引用は、「卷三十四」の「木之一」「香木類」の「騏驎竭」の独立項で(「漢籍リポジトリ」)、ガイド・ナンバー[083-54a]から始まる「集解」以下の部分引用だが、同サイトでは珍しく、表示不能の漢字がごっそりある。但し、これは、そこの影印本画像を見れば、イッパツで判る通り、殆んどが「紫『緋』樹」の「緋」の異体字(崩し字の一種)に過ぎない。(つくり)の部分が「非」の「グリフウィキ」のこれに酷似しているから、間違いない。

「廣州」現在の広西省・広東省。

「婆娑」原義は「舞う人の衣服の袖が、しどけなく、美しく翻るさま。」で、他に「影などが乱れ動くさま」「樹竹の葉などに雨や風があたってガサガサと音がするさま」を言う。ハイブリッドにとってよかろう。英文サイト“Heaven & Nature Store”の“Dragon’s Blood   Calamus draco の同種の全景の樹形を見ると、実にしっくりくる姿であると、私は思う。

「櫻桃(ゆすら)」これは、時珍の記載であるから、

双子葉植物綱バラ目バラ科サクラ属カラミザクラ(唐実桜) Cerasus pseudo-cerasus の中文名

である。当該ウィキによれば、『名の通り、中国原産であり、実は食用になる。別名としてシナミザクラ』『(支那実桜)』、『シナノミザクラ』、『中国桜桃などの名前を持つ。おしべが長い。中国では櫻桃』(☜)『と呼ばれる』。『日本へは明治時代に中国から渡来した』。『実は食用になることが知られている。大きさは』一。五センチメートル『程度であり、始めは緑色で徐々に黄色を経て』、『赤く熟する。セイヨウミザクラ』(サクラ属サクラ亜属セイヨウミザクラ Prunus avium )『よりも小粒のサクランボで美味である』が、『現在、食用種としてはセイヨウミザクラが使われることが多い。佐藤錦などの種もセイヨウミザクラを改良したものである。これはカラミザクラは』、『若干』、『酸味が強いためである』とあった。しかし、実は、食用果実として「さくらんぼ」(同系統の原産地はトルコとされる)を日本人が食すようになったのは、

明治元年、プロイセンの貿易商ライノルト・ガルトネル(Gaertner, R.)が渡島国七重村(現在の北海道七飯町)に農場を開き、果樹栽培をはじめ、本格的西洋農業を試みた折、日本に初めて「さくらんぼ」を導入してから

であって、

江戸時代の日本人は、所謂、現行の「さくらんぼ」を食べたことはない

のである。されば、良安は、この「本草綱目」中の『櫻桃』を、別名でこの名で示される、中国北西部・朝鮮半島・モンゴル高原原産で、本邦には江戸初期に渡来し、主に庭木として栽培されていた、果実が薄甘く、酸味が少ない、今の「さくらんぼ」に似た味がするところの、

サクラ属ユスラウメ Prunus tomentosa

と認識していたことに注意しなければならないのである。

「膠飴(ぢわうせん)」東洋文庫後注に、『地黄(薬草)を煎じた汁を加えて作った飴。地黄煎飴。水飴状で杉箸につけて売った』とある。この「地黄」は、キク亜綱ゴマノハグサ目ゴマノハグサ科 アカヤジオウ属アカヤジオウ Rehmannia glutinosa の根を陰干ししたもの。同種は、日本には奈良時代に薬用目的で持ち込まれた。古名を「サオヒメ」といい、中国原産で淡紅紫色の美しい花をつける。内服薬としては補血・強壮・止血の作用が期待され、外用では腫れものの熱をとり、肉芽形成作用を持つとする。

「竭《けつ》」この字には「枯れる」の意がある。水分が失われて、枯れひねこびたような個体の塊となることを言っている。

「指甲(ゆびのつめ)に透る者を以つて、眞と爲す」この真贋の識別法は面白い。指の爪は言うまでもないが、皮膚が変化して硬くなったものである。されば、麒麟竭の真正品は人間の皮膚に容易に浸透するのだ。肌に附けてためしたのでは、肌に、このドギつい紅色が附いて落ちなくなるから、爪に僅かに附け、直ぐに拭き取っても、浸潤して消えない。されば、直ぐに爪の表面を削ればいいのである。

「心腹≪の≫卒痛《そつつう》」東洋文庫訳では、「卒痛」にルビして、『とつぜんのいたみ』とする。

『今、之れを試みるに、所謂《いはゆ》る、「指-甲(≪ゆびの≫つめ)に透《すきとほ》る者」≪も≫、亦た、「之れを燒≪きたる≫灰≪の≫、赤く、本《もと》≪の≫色≪と≫變ぜざる者、未だ之れを見ず』う~ん、ちゅうことはですよ、……良安先生……お持ちの「麒麟血」は……本物じゃあ、ない、つーことではありんせんか?……

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