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2024/06/05

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十二 木部 香木類 薰陸香

 

Kunrokukou

 

くんろく

 

薰陸香

 

 

本綱薫陸香乳香爲一物以如乳頭者爲乳香主治亦似

而異

薰陸【微温】 治風水毒腫去惡氣伏尸癮𤺋毒

△按今多乳香用唐藥薫陸用倭藥而倭薫陸出於奧州

 南部山中堀地取之松津液乎盛夏則鎔融蚊蟻粘着

[やぶちゃん注:「堀」はママ。近世・近代の小説等でも、この「掘」の誤用はしばしば見られる。訓読では、躓くだけなので、正字にした。]

 者多只合香家多用之入藥用者希也

 

   *

 

くんろく

 

薰陸香

 

 

「本綱」に曰はく、『薫陸香、乳香と一物と爲《な》す、乳頭(ちくび)のごときなる者を、以つて「乳香」と爲す。主治も亦、似れども、異《い》なり。』≪と≫。

『薰陸【微、温。】 風水毒腫を治し、惡氣伏尸《あくきぶくし》・癮𤺋《いんしん》・癢毒《やうどく》を去る。』≪と≫。

△按ずるに、今、多く、「乳香」は唐藥《たうやく》を用ひ、「薫陸」は倭藥《わやく》を用ふ。而して、倭の「薫陸」は、奧州南部の山中より出づ。地を掘り、之れを取る。松の津-液(しる)か。盛夏には、則ち、鎔(わ)き融(どろけ)て、蚊・蟻、粘(ねば)り着く者、多し。只《ただ》、「合香家(かうぐや)」に、多く、之れを用ふ。藥用に入るる者は、希《まれ》なり。

 

[やぶちゃん注:「薫陸」(「ろく」は呉音。「くんりく」と読んでも構わない)は、インドの大部分と、パキスタンに広がるパンジャブ地方の乾燥高地に自生している、

ムクロジ目カンラン科ボスウェリア属ボスウェリア・セラータ Boswellia Serrata の樹脂が固まって石のようになったもの

で、英文の基原植物のウィキによれば、本種は『現在、絶滅の危機に瀕している』とし、『同種はβ-ボスウェリア酸・アセチル-β-ボスウェリア酸・11-ケト-β-ボスウェリア酸・アセチル-11-ケト-β-ボスウェリア酸等の、ボスウェリア酸(Boswellic acid)のさまざまな誘導体を含』んでおり、この成分は『変形性関節症と、関節機能について臨床的に研究されており、研究によれば、関節痛と関節機能に対して有益な傾向(ちょっとした改善性)がある』といった内容が記されてある。その「薫陸香」はインド産の広義の「乳香」(前項参照)であり、「香老舗林 龍昇堂」のこちらで、画像が見られ、そこに『黄褐色または暗褐色をしており、琥珀に大変似ているが』、『成分は異なる』とあり、『主に香料や薬剤として使用されている』とある。「ろく」は「陸」の呉音で、小学館「日本国語大辞典」には、第一義に『インド、イランなどに産する樹のやにの一種。盛夏に、砂上に流れ出て、固まって石のようになったもの。香料、薬用となる。乳頭状のものは、乳香という。くろく。なんばんまつやに。薫陸香(くんろっこう)』とし、第二義に、所謂、「和の薫陸」として、『松、杉の樹脂が、地中に埋もれ固まってできた化石。琥珀(こはく)に似るが、琥珀酸を含まない。粉末にして薫香とする。岩手県久慈市に産する』とある。本底本では、次項が「薰陸香」である。①の本邦の初出例は九二七年の「延喜式」とする。

 「本草綱目」の引用は、「卷三十四」の「木之一」「香木類」の「薫陸香」の合体した独立項で(「漢籍リポジトリ」)、ガイド・ナンバー[083-48b]から始まる、長い記載のごく一部を拾ったパッチワークである。直にこの記事に来られた方は、まず、前項の「乳香」を先に読まれたい。その最後で、良安が、「本草綱目」の纏めて書かれた香類(こうるい)を、独自に各条に独立させ、解説をする旨の断り書きがあるからである。

「風水毒腫」この「風水」は広義の思想としてのそれ(中国の伝統的な自然観の一つ。都市や住宅・墳墓などを造る際、地勢・方位・地脈・陰陽の気などを考え、そこに生きる者と、そこで死んだ者総てに、よりよい自然環境を求めようとするもの)ではなく、疾患としての「関節水腫」を指す語である。「毒腫」は分離させずに読み、それに屋上屋で添えたものであろう。

「惡氣伏尸」東洋文庫訳では割注して、『(死骸から発する悪気)』とする。

「癮𤺋《いんしん》」同前で『(じんましん)』(蕁麻疹)とする。

「癢毒《やうどく》」同前で『(皮膚がかゆくなる症)』とする。広義の皮膚の搔痒症状を指すということであろう。

「奧州南部」南部藩=盛岡藩。陸奥国北部(明治以降の陸中国及び陸奥国東部)、現在の岩手県中部を地盤として青森県東部から秋田県北東部にかけての地域を治めた南部氏の藩。藩域は、複雑で、正確に示すのが困難なので、岩手県文化スポーツ部文化振興課文化芸術担当の作製になるサイト「いわての文化情報大事典」の「盛岡藩と八戸藩」にある、冒頭の図がよい。

「津-液(しる)」漢方のヒトに用いる語を漢方基原植物に対して擬人表現したもの。ウィキの「津液」によれば、『津液(しんえき)は、津(陽性の水分、清んで粘り気がなく、主として体表を潤し、体温調節に関与し、汗や尿となって体外へ排泄される)と液(陰性の水分、粘り気があり体内をゆっくりと流れるもので、骨や髄を潤す。体表部では目、鼻、口などの粘膜や皮膚に潤いを与える)で構成される体内の水分の総称である。源は飲食物で、胃や腸に入って水様のものが分離されて作られる。別名、陰津、水液、水津、水湿とも呼ばれる』。『脾胃(中焦)、肺(上焦)、腎・膀胱(下焦)と関係が深く、脾胃は水穀から津液を分離して脾の働きでこれを上部の肺へ送り、肺は胃から送られた津液を全身へ布散し、腎は全身に輸布された津液を管理して、不用のものを膀胱に貯めて尿として排泄する』とある、それである。

「融(どろけ)て」「とろけ」ではなく、この「ど」は珍しく、原本に、ちゃんと『ド』と濁点を打ってある。]

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