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2024/06/23

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 岡桐

 

Okagiri

 

おかぎり     紫花桐

岡桐

 

 

本綱岡桐文理細而體性堅亦生朝陽之地不如白桐昜

長其葉三角而圓大如白桐色青多毛而不光且硬微赤

亦先花後葉花色紫其實亦同白桐而微尖狀如訶子而

粘房中肉黃色與白桐皮色皆一伹花葉小異體性堅慢

不同爾又有冬月復花者

桐葉【苦寒】 治癰疽發背大如盤臭腐不可近者桐葉醋

 蒸貼上退熱止痛漸漸生肉収口極驗秘方

 外面なる桐の廣葉に雨落て朝け凉しき風の音哉爲家

[やぶちゃん注:標題の「おか」はママ。「目録」でも、そうなっていた。]

 

   *

 

おかぎり     紫花桐《しくわとう》

岡桐

 

 

「本綱」に曰はく、『岡桐《こうとう》、文理《もんり》、細《こまやか》にして、體性、堅し。亦、朝陽《てうやう》の地に生ず。白桐《はくとう》の長《ちやう》じ昜《やす》きにしかず。其の葉、三角《みつかど》にして、圓《まろく》、大いさ、白桐のごとく、色、青。毛、多くして、光からず。且(そのう)へ、硬(こは)く、微赤≪たり≫。亦、花を先にし、葉を後《あと》にす。花の色、紫なり。其の實《み》も亦、白桐に同じくして、微《やや》、尖り、狀《かたち》、「訶子《かし》」のごとくして、粘《ねん》す。房中《ふさうち》の肉、黃色なり。白桐と、皮≪の≫色、皆、一《い》つ≪なり≫。伹《ただ》、花・葉、小異《しやうい》≪ありて≫、體性≪の≫堅慢《けんまん》、同じからざるのみ。又、冬月、復た、花さく者、有り。』≪と≫。

『桐葉【苦、寒。】 癰疽(ようそ)、背に發し、大いさ、盤(さら)のごとく、臭-腐(くさ)く≪して≫近づくべからざる者を治す。桐葉≪は≫、醋《す》≪にて≫蒸《む》≪したるを≫、上に貼(は)る。熱を退≪けて≫痛みを止め、漸漸(ぜんぜん)に、肉を生《しやう》じ、口を収《をさむる》。極《きはめ》て、驗《げん》あり。秘方≪なり≫。』≪と≫。

 外面(そとも)なる

   桐の廣葉に

  雨落(おち)て

        朝け凉しき

          風の音哉

                爲家

 

[やぶちゃん注:「岡桐」(こうとう:個人的には、心情として良安が和訓を附している気持ちは判らぬではないが、「本草綱目」のそれであり、ここは「コウトウ」と音読みしておかないと、今までのようにトンデモ異種である可能性を排除出来ないからであるは平凡社「普及版 字通」によれば、種名ではなく、「桐油」(とうゆ/きりあぶら)「を作る桐」とある。ウィキの「桐油」(きりあぶら)によれば、『アブラギリ類の種子(種核)を搾油して得られる油脂。毒性があるため食用に用いられず、主に工業用途に古くから使用されてきた。流通する桐油の大半はシナアブラギリ由来のシナ桐油(tung oil)である』。『乾性油としては優秀な物で、同じ乾性油のアマニ油よりも優れている。桐油そのままの乾燥皮膜は不透明で、粘性や弾性にも乏しく』、『工業用途には向かないため、二酸化マンガンや酸化鉛などの添加剤を加えて加熱処理を行って製品化される』。『原料となるアブラギリの種子は、主にトウダイグサ科』Euphorbiaceae『のアブラギリ、シナアブラギリ、カントンアブラギリの三種。日本のアブラギリから作られる日本桐油は、シナ桐油と比べて比重、屈折率、ヨウ素価などが低い特徴があるが』、既に二〇一〇『年代では』殆んど『生産されていない』。『また、シナアブラギリとカントンアブラギリはほとんど区別されていない』とあった。『江戸時代には燈火油、油紙、雨合羽などに利用され』、『農村では防虫剤として重要な役割を果たした』。文政九(一八二六)年に刊行された農学者大蔵永常の「除蝗錄」(稲の害虫であるウンカ(浮塵子)稲の害虫となる体長五ミリメートルほどの昆虫群を指す。ウィキの「ウンカ」によれば、カメムシ目ヨコバイ亜目 Homoptera に属する種の内、アブラムシ・キジラミ・カイガラムシ・セミ以外の成虫で当該体長の昆虫害虫の典型の一つが「うんか」であるため、この仲間には、「ウンカ」の名を和名内に持つ分類群が非常に多い。但し、『「ウンカ」という標準和名を持つ生物はいない』とある)の防除法(鯨油を水田に流す方法)を述べたもの。文政七年刊の同人の書いた農害虫の防除法を記した「豐稼錄」を修正増補したもの。長谷川雪旦が挿絵を担当している) には、『鯨油を水田に張って害虫を落として駆除するという方法が紹介されているが、鯨油を用意できない地域では』、『桐油を用いることが提案されている』。『明治時代に入ると、石油の輸入活用や近代農法の普及によって、燈明用・農業用の桐油の役割は小さくなるが、工業用塗料としてペンキ、ニス、印刷用のインク等の需要が生じた』が、『太平洋戦争後は、中国産の桐油が大半を占めるようになり、国内生産は下火になっていった』。『島根県の農家では』、十八『世紀終わりから』二十『世紀初頭にかけて、現金収入を得る重要な副業として桐油が位置付けられており、稲作とアブラギリ栽培・販売を組み合わせて生業としていた』とある。とすれば、以上に出た、桐油を採取する、

双子葉植物綱キントラノオ目トウダイグサ科アブラギリ属アブラギリ Vernicia cordata

同属シナアブラギリ Vernicia fordii

の二種で、よいようだ。掲げてある「カントンアブラギリ」というのは、調べてみると、Aleurites montana の学名が記されている記事が、複数、見られるのだが、これは、シナアブラギリのシノニムだからである。

 良安の「本草綱目」からのーク引用は、「卷三十五上」の「木之二」「喬木類」(「漢籍リポジトリ」)の「桐」(ガイド・ナンバー[085-24b]以下)の「集解」に、以下のように「岡桐」がたっぷりと出る(面倒なので、ベタでコピー・ペーストした)。

   *

頌曰桐處處有之陸璣草木疏言白桐宜為琴瑟雲南牂牁人取花中白毳淹漬績以為布似毛服謂之華布椅即梧桐也今江南人作油者即岡桐也有子大于梧子江南有頳桐秋開紅花無實有紫桐花如百合實堪糖煮以噉嶺南有刺桐花色深紅宗奭曰本經桐葉不指定是何桐致難執用但四種各有治療白桐葉三杈開白花不結子無花者為岡桐不中作琴體重荏桐子可作桐油梧桐結子可食時珍曰陶注桐有四種以無子者為青桐岡桐有子者為梧桐白桐冦注言白桐岡桐皆無子蘇注以岡桐為油桐而賈思勰齊民要術言實而皮青者為梧桐華而不實者為白桐白桐冬結似子者乃是明年之華房非子也岡桐即油桐也子大有油其說與陶氏相反以今咨訪互有是否蓋白桐即泡桐也葉大徑尺最易生長皮色粗白其木輕虚不生蟲蛀作器物屋柱甚良二月開花如牽牛花而白色結實大如巨棗長寸餘殻内有子片輕虚如榆莢葵實之狀老則殻裂隨風飄揚其花紫色者名岡桐荏桐即油桐也青桐即梧桐之無實者按陳翥桐譜分别白桐岡桐甚明云白花桐文理粗而體性慢喜生朝陽之地因子而出者一年可起三四尺由根而出者可五七尺其葉圓大而尖長有角光滑而毳先花後葉花白色花心微紅其實大二三寸内為兩房房内有肉肉上有薄片即其子也紫花桐文理細而體性堅亦生朝陽之地不如白桐易長其葉三角而圓大如白桐色青多毛而不光且硬微赤亦先花後葉花色紫其實亦同白桐而微尖狀如訶子而粘房中肉黄色二桐皮色皆一但花葉小異體性堅慢不同爾亦有冬月復花者

   *

而して、本文は最後の太字にした部分であって、意味を明確にするためにちょっと変えているだけである。これは、前半の部分が、複数の先行記事を並べてあるためで、恣意的な改変ではないのだが、結局、良安は、この項を書いているうちに、「岡桐」という種が「桐」とは別項にしたものの、それが独自に存在している可能性が、疑問に思えてきたのであろうと推定する。その結果が、突如として、改行で「桐葉」という、「桐」の項で出すべきものを、ここに出してしまって、一気に、「岡桐」項に相応しからざる(と私は思う)「桐葉」の秘方紹介の記載で終わるという、訳のわからない逆立ちしたような感じで終っているのである。而して、この奇異な部分は、実は「桐」の項のガイド・ナンバー[085-26a] の七行目から始まる「附方」の二つ目に(少しだけ手を加えた)、

   *

癰疽發背【大如盤臭腐不可近桐葉醋蒸貼上退熱止痛漸漸生肉收口極驗秘方也【「醫林正宗」。】。】

   *

とあるのを、持ってきたのである。この「附方」は「岡桐」の桐油の限定効用の部でもなんでもなく、大項目「桐」の「桐葉」の「附方」なのである。

「朝陽《てうやう》の地に生ず」「桐」で既出既注。

「訶子《かし》」双子葉植物綱バラ亜綱フトモモ目シクンシ科モモタマナ属ミロバラン Terminalia chebula 。英語“myrobalan”。別和名カリロク。英文の当該ウィキが詳しい。そこには、『南アジアと東南アジア全域に分布している。中国では雲南省西部を原産とし、福建省・広東省・広西チワン族自治区(南寧)・台湾(南投)で栽培されている』とあった。ミロバランの実の写真もある。う~ん、しかし、画像検索「アブラギリの実」(シナアブラギリの画像も含まれる)と、Terminalia chebula nutsのフレーズ画像検索を比較して見ると……ちょっと……「似ている」とは……私には言い難いがね。

「粘《ねん》す」粘(ねば)りがある。

「房中《ふさうち》」これは実の中の子房部分のことであろう。

「堅慢《けんまん》」桐の木の木質の堅さと、桐と比較すると、アブラギリ類の木質の柔らかさという点の違いを言っているようである。

「癰疽(ようそ)、背に發し、大いさ、盤(さら)のごとく、臭-腐(くさ)く≪して≫近づくべからざる者」これは、進行した重症の背部壊疽、或いは、悪性腫瘍の末期であろう。

「口を収《をさむる》」爛れて決壊した患部が修復されて閉じる。

「外面(そとも)なる桐の廣葉に雨落(おち)て朝け凉しき風の音哉」「爲家」これは、「夫木和歌抄」の「卷十五 秋六」にある一首。「日文研」の「和歌データベース」のこちらで確認した。ガイド・ナンバー「06087」が、それ。

  *

そともなる-きりのひろはに-あめおちて-あさけすすしき-かせのおとかな

  *]

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