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2024/06/23

「善惡報はなし」正規表現オリジナル注 卷一 㐧二 殺生人口ばし有子をうむ事幷父せなかに文字すはる事

 

  㐧二 殺生人(せつしやうにん)、口ばし有《ある》子をうむ事父、せなかに、文字(もんじ)、すはる事

[やぶちゃん注:底本・凡例等は初回を参照されたい。]

 

○同比《おなじころ》、丹州に、殺生を家職として、鳥(とり)・獸(けだもの)をころす事、数年《すねん》なり。

[やぶちゃん注:「同比」前話を受けるので、寛永年間。一六二四年から一六四四年までで、徳川家光の治世。「丹州」古代に丹後国、及び、江戸時代の丹波国の総称。現在の京都府北部が前者、後者は京都府中部・兵庫県北東部・大阪府の一部に相当する。]

 其報《むくひ》によりて、鳥のごとく、「口ばし」ある子を、うめり。

 はじめの程は、鼻のやうに見えけるが、次第に、成人するにまかせて、鼻にては、なくて、「口ばし」と、しれり。

 夫婦のもの、

「こは、いかなる事やらん。」

と、

「余所(よそ)の聞《きこ》へ[やぶちゃん注:ママ。]も、いかゞ也《なり》。」

とかく、[やぶちゃん注:ここ、引用の助詞「と、」を頭に附したいところである。]

『ころさん。』

と、おもへども、さもならずして、是非なく、そだてしが、朝夕(てうせき)の食物《しよくもつ》には、粟(あは)・「ひゑ」ならでは、くはず、「はし」をもつてくふ事なく、かの「くちばし」にて、鳥のつゞく[やぶちゃん注:ママ。「突(つ)つく」。]やうにして、くひけり。

 しかりといへども、夫《をつと》、かやう成《なる》子をもつ事、「現在殺生(げんざいせつしやう)」の報《むくひ》とは、露も、おもはず。

 されば、此子、八才の比《ころ》、病付(やみつき)、死《しし》けり。

 其後《そののち》、三年すぎて、或夕暮に、かみなり、おびたゞしく、なりて、かれが家におちけるに、夫婦ともに、半死半生也。

 されども、漸〻《やうやう》、いき出《いで》けり。

 扨《さて》、二、三日ありて、夫、「ぎやうずい」を、せし時、妻(つま)、

「せなかを、ながさん。」

と、しけるに、せなかに、くろく、文字(もんじ)、

「ありあり」

と、すはれり[やぶちゃん注:「据はれり。」。]。

 妻、あやしみ、夫に、

「しかじか。」

と申(まふす)。

 夫も、ふしぎのおもひをなし、此文字を、うつして見るに、

「汝殺生好事大罪難ㇾ遁 死後大地獄堕受ㇾ苦事無疑(なんぢせつしやうをこのむことだいざいのがれがたし しゝてのちだいぢごくにおちてくるしみをうくることうたがひなし)」

といふ、もんじ也。

 夫、大《おほき》に、おどろき、それよりして、やがて、殺生を、やめけり。

 かくある事を、よくよく見聞(けんぶん)するに、「かたわ子[やぶちゃん注:ママ。]」をうみ、八才にして死(しゝ)たりしかども、何《なん》の報《むくひ》とも、おもはず、しらず、或は、せなかに、文字(もんじ)、すはりけるを見て、其まゝ得心(とくしん)して、それより、後世(ごせ)ぼだひ[やぶちゃん注:ママ。]を祈りけり。

「是、天道の見せしめなり。」

と、のちにぞ、おもひしられけり。

[やぶちゃん注:本篇には挿絵はない。]

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