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2024/06/30

「善惡報はなし」正規表現オリジナル注 卷三 㐧三 女房女のはらみたる腹をやき破事

[やぶちゃん注:底本・凡例等は初回を参照されたい。標題「㚑(れう)」の読みはママ。]

 

 㐧三 女房、女の、はらみたる腹を、やき破(やぶる)事

 攝刕大坂にをゐて[やぶちゃん注:ママ。]、ある「うとく」[やぶちゃん注:「有德」。ここは「裕福」の意。]成《なる》ものあり。

 かれが、おもひ入《いれ》たる女、ありけり。はらみけるに、女房、夫(をつと)のるすをうかゞひ、外にありけるを、たばかり、むかひよせ、一間成《なる》所へ、をし[やぶちゃん注:ママ。]こめて、二、三人、下部の男を、めして、手、とり、あし、とらせて、「火のし」[やぶちゃん注:熨(ひのし)。炭火の熱で皺をのばす柄杓形の道具。現在のアイロン相当。]をもつて、かの、はらみたるはらを、のしける。

 ふくれ、ひわれて[やぶちゃん注:「乾割れて」。]、しゝむら[やぶちゃん注:「肉」。]、どろけきれて[やぶちゃん注:焼け爛れ溶(とろ)け、破れて。]、見へ[やぶちゃん注:ママ。]けり。

 わづかに、いきばかり、かよひける時、母のもとへ、かへしつかはす。

 のり物より、いだきおろしけるに、其《その》まゝ、いき、たへ[やぶちゃん注:ママ。]にけり。

 母、是を見(《み》る)より、大きになげきて、心のあらぬまゝに、やがて、はしりまはり、もろもろの「やしろ」にまうでゝ、おめき、さけび、「やしろ」を、たゝき、をどりあがり、をどりあがりて、

「我が子のかたきを、とりて給はれ。」

と、いのり、あるひは[やぶちゃん注:ママ。]、神前の「いき木」[やぶちゃん注:「生き木」。]に、釘(くぎ)を、うちなどして、さまざま、のろひ、母も、つゐに[やぶちゃん注:ママ。]、おもひ死(じに)に、しけり。

 ほどなく、二人の㚑(れう[やぶちゃん注:ママ。])、日〻に、きたりて、彼(かの)女房を、せむる事、いふばかりなし。

 やがて、やみつき、さまざま、口ばしり、身躰(しんたい)、やすからずして、「かみそり」をもつて、をのれ[やぶちゃん注:ママ。]がはらを、きりやぶり、そくじ[やぶちゃん注:「卽時」。]に、死(しに)うせぬ。

「それよりして、其家、代〻、㚑、たへ[やぶちゃん注:ママ。]ず。」

と、聞ゆ。

 しかるべきものゝ身のうへなれば、くはしくは、しるさず。

 とかく子細をしらぬ身なれば、中〻《なかなか》[やぶちゃん注:呼応の不可能の副詞。「とても・決して(~ない)」。]、其《その》とが[やぶちゃん注:「咎」。]あるべからず。たゞ、人に、因果の道理を、しらしめんがためなり。人のとがを、しるさんには、あらず。されば、人をそんずるは、我身をそんずる事をしらずして、自他の分別、かたく[やぶちゃん注:いっかな、出来ず。]、愛執(あいしふ)の念りよ、ふかきならひは、かへすがへす、をろかに[やぶちゃん注:ママ。]まよへる、心成《なる》べし。

 [やぶちゃん注:なお、次の話の冒頭が、「其比、寬永元年に、河内の……」となっていることから、この話は寛永元(一六二四)年の出来事と読める。]

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