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2024/07/30

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 華櫚木

 

Birumakarin

 

くは りん  俗作花梨誤

       矣

華櫚木

 

ハアヽ リユイ モ

[やぶちゃん字注:「くは」はママ。「くわ」が正しい。但し、訓読でも、そのままとする。「櫚」の字はここでは、「グリフウィキ」のこれ((つくり)の「呂」の中央の一画がない)であり、後の本文でも、同部の一画が左で繋がっている字体であるが、表示出来ないので、通常の「櫚」とした。]

 

本綱華櫚木出於安南及南海其木性堅紫紅色似紫檀

而色赤又有花紋者謂花櫚木可作床几及噐皿扇骨諸

△按華櫚木來於南蠻其木理似欅而帶紫光色作板及

 噐美也今以榠櫨呼花梨且疑思華櫚木誤之甚者也

[やぶちゃん字注:「榠櫨」の「榠」は「グリフウィキ」のこれで、「櫨」は同じく「グリフウィキ」のこれであるが、孰れも表示出来ないので、それぞれ、この字で電子化した。]

 

   *

 

くは りん  俗、「花梨」と作≪るは≫、誤り。

 

華櫚木

 

ハアヽ リユイ モ

 

「本綱」に曰はく、『華櫚木《くわりんぼく》は、安南《アンナン》、及び、南海より、出づ。其の木、性、堅≪く≫、紫紅色。紫檀《したん》に似て、色、赤く、又、花紋、有る者、「花櫚木《くわりんぼく》」と謂ふ。床几(しやうぎ)、及び、噐《うつは》・皿、扇-骨(かなめ)の、諸物に作るべし。』≪と≫。

△按ずるに、華櫚木、南蠻より來《きた》る。其の木理《きめ》、欅(けやき)に似て、紫光色を帶ぶ。板、及び、噐に作りて、美なり。今、「榠櫨《メイサ/かりん》」を以つて、「花梨(くはりん[やぶちゃん注:ママ。])」と呼ぶ《✕→び》、且つ、「華櫚木」かと、疑-思《うたがひておも》ふは、誤《あやまり》の甚しき者なり。

 

[やぶちゃん注:これは、種同定に――非常に――困った。それは、良安の附言が、我々が現在、「カリン」と認識し、和名を「カリン」とする、

双子葉植物綱バラ目バラ科シモツケ亜科ナシ連ナシ亜連カリン属カリン Pseudocydonia sinensis

ではないと否定し、明確に述べ、キョウレツに指弾しているからである。ウィキの「カリン(バラ科)」に、漢字名を「花梨」「花櫚」「榠樝」としており、「維基百科」の同種の「木瓜(薔薇科)」では、別名「榠楂」とするのだが、この「楂」については、「跡見群芳譜」の「さんざし山楂子)」(バラ科サンザシ属サンザシ Crataegus cuneata 。漢名を「野山樝」とする)の解説の中で、「樝」に就いて、漢語の『樝(サ,zhā)・楂(サ,zhā)・柤(サ,zhā)は、同字として通用している』と述べておられるから、「榠楂」は、イコール、「榠樝」だからである。

 そこで、さらに種々の漢語で検索を掛け続けたところ、「華櫚木」で、図に当たった! 沖中忠一氏の論文「木材製品の研究(一〇)の三――木材の樹種別用途」に決定的な記載があることを見出し、「同志社大学学術リポジトリ」のこちらで入手出来た(『同志社商学』巻 九・二号・一九五七年七月十五日発行所収・PDF:因みに、この発行日は、私が生まれて、丁度、五ヶ月後である)。以下に、当該部分を引用させて頂く。「三 貿易木材」の一節である(「(一三二) 四六」ページ」)。学名は斜体にはなっていない。

   《引用開始》

 一〇七 カリンPterocarpus macrocarpus Pterocarpus indicus 花梨、華櫚木、紅花櫚。心材が白色、心材が黄褐色。伐採後数年間水浸して辺材を腐らして除き去り心材のみを用材とする。原産地はシャム[やぶちゃん注:タイ王国の旧名。]で中部以北の高台や山地のジャングル中に他樹に混って育っている。心材の直径一mにも達する大木も出る。材質は紫檀よりも軽く(比重〇・九)かつ軟いが本材全体から見ると重・硬といわねばならない。大材がでるから用途は他の唐木類よりも大きい物にも向けられる。三弦の胴と棹、楽器部品、家具、器物、彫刻置物などのほか床柱、床縁その他装飾向造作材料に用いられる。例えば三弦棹の材料としては紅木紫檀、古渡以下の紫檀も櫧[やぶちゃん注:カシ。或いはアカガシ。]も花梨も用いられるが紅木紫檀が最高価でこの順である。三弦胴ででは花梨胴が最上等とされる。その他の用途でも花梨は紫檀の下位にある。三弦の場合は鳴り音が特に紅木紫檀が勝れているという事もあるが一般用途では、色沢の相違から花梨が紫檀の下位に見られるらしい。

 唐木商がカリンと称する物以外に別名カラナシ、キボケ、アンラクカ、アンランジュ、木瓜、榠櫨、㮊木李[やぶちゃん注:「ボウボクリ」か。]などと呼ばれて器具材とされる樹がある。これは中国原産の樹であって日本でも栽植されている。この樹は植物分類学ではイバラ科で Cydonia sinensis [やぶちゃん注:科は旧分類で、学名はカリンのシノニムである。]と名付けられ、カリンと呼ばれるが唐木の花梨とは全く別物である。材色は心材が稍[やぶちゃん注:「やや」。]赤褐で、硬く木理緻密で紋理がある。美材であって珍重される。

   《引用終了》

スゴいぞ! これでキマりだッツ!! 則ち、この「花梨」「華櫚木」「紅花櫚」の漢名を持つ種は、

双子葉植物綱マメ目マメ科マメ亜科ツルサイカチ連インドカリン属ビルマカリン Pterocarpus macrocarpus

である!!! 当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『ビルマカリン』は英名を『Burma padauk』と言い、別名を『オオミカリン』と言い、『東南アジアの雨緑林に自生する』『広葉樹である。自生地はミャンマー、ラオス、カンボジア、タイ、ベトナムにあり、インドおよびカリブ海に移入されている』。『ビルマカリンは高さが』十~三十メートル『(まれに』三十九メートル『に達するものがある)に成長する中型の木で、幹は直径』一・七メートル『まで太くなる。乾季は落葉する。樹皮は薄片状で灰色がかった茶色である。切ると赤いゴム状の樹脂を分泌する。長さ』二十~三十五センチメートル『の羽状複葉で、小葉は』九~十一『枚』、『つく。花は黄色で、長さ』五~九センチメートル『の総状花序をなす。果実は直径』四・五~七センチメートル『で』、『周囲に丸い翼がついた豆果で』あり、『中に種子が』二『つ』、『または』、三つ』、『入っている』。『木材としては耐久性があり、シロアリにも耐性がある。このため』、『家具、建設用材木、荷車の車輪や工具の柄、支柱などに重用される。実際にはローズウッド』(Rosewoodはマメ目マメ科マメ亜科ダルベルギア連 Dalbergieaeツルサイカチ属 Dalbergia の植物に冠される総称)『ではないが、ローズウッドとして取引されることもある。ビルマカリンの花期は』四『月で、これはミャンマーの新年にあたるティンジャンの時期にあたることから、ミャンマーでは国家の象徴の一つとされている』とあった。ヤッタぜ! ベイビィ! 一件落着!

 なお、言っておくと、当初、ネットを検索するうちに、Woods Hammer氏の驚くべきサイト「カリンとマルメロ(制作中) Pseudocydonia sinensis & Cydonia sinensis 」を見出し、読んでみて、正直、『こりゃ、かなわんな……』と思った。「カリンとマルメロはどのように呼ばれているか」のページを読むと、本項に触れて、『「今,榠櫨を花梨と呼び,これを華櫚木かと思っているのは甚だしい誤りである」と記載されて』おり、『「カリン」の名称は,この木の木目が別の植物である「花櫚」(華櫚木)に似ていることに由来するとのこと。すなわち,カリンと花櫚の区別も注意が必要なのである。』と、非常に慎重な考証が成されてあったからである。しかし、惜しいことに、サイト名に未だ『制作中』ということで、お書きになられた部分だけでは、この私の疑問である「華櫚木」の正体を知り得なかったのである。しかし、非常に素晴らしいサイトなので、是非、読まれたい。

 本篇の「本草綱目」の引用は、「卷三十五下」の「木之二」「喬木類」(「漢籍リポジトリ」)の「櫚木(ガイド・ナンバー[086-42a]の以下)の「集解」のほぼメイン全部である。短いので、以下に全文を示しておく(多少、手を加えた)。

   *

櫚木【拾遺】

 集解【藏器曰出安南及南海用作床几似紫檀而色赤性堅好時珍曰木性堅紫紅色亦有花紋者謂之花櫚木可作器皿扇骨諸物俗作花梨誤矣】

 氣味辛温無毒主治産後惡露衝心癥瘕結氣赤白漏下竝剉煎服【李珣】破血塊冷𠻳煮汁熱服爲枕令人頭痛性熱故也【藏器】

   *

「安南《アンナン》」インドシナ半島東岸の狭長な地方。現在のヴェトナムである。その名は唐の「安南都護府」(唐の南辺統治機関)に由来する。唐末、「五代の争乱」(九〇七年〜九六〇年)に乗じて、秦以来の中国支配から脱却した。一時は明に征服されたが、一四二八年(本邦では室町時代の応永三十五年・正長元年相当)独立。十七世紀には朱印船が盛んに出入し、ツーラン・フェフォには日本町が出来た。

「南海」日中ともに、この語は、古代から中世期に於いて、漠然と広域の「東南アジア諸国」を指すことがあった。

「紫檀《したん》」一説に、二種を含むとし、マメ目マメ科マメ亜科ツルサイカチ連ツルサイカチ属ケランジィ Dalbergia cochinchinensis と、マルバシタン Dalbergia latifolia である。但し、異論を唱える者もあり、それらはウィキの「シタン」を見られたい。

「欅(けやき)」ここは良安の言葉であるから、バラ目ニレ科ケヤキ属ケヤキ Zelkova serrata でよい。]

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