「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 合歡
ねふりのき 合昏 夜合
かうかのき 青裳 萠葛
烏賴樹
合歡
尸利灑樹【佛經】
【和名㧠布里乃木
ホツ ハアン 又云加宇加乃木】
本綱合歡木似梧桐枝甚柔弱葉似皂莢及槐極細而繁
宻互相交結毎一風來輙自相解了不相牽綴五月花發
其花上半白下半肉紅散埀如𮈔爲花之異其綠葉至夜
則合也嫩時煠熟水淘亦可食此樹生山谷人家植於庭
[やぶちゃん字注:「煠」は底本では「グリフウィキ」のこれであるが、表示出来ない。しかし、「漢籍リポジトリ」の「本草綱目」の「合歡」の当該箇所(ガイド・ナンバー[086-3b]の最後から四字目)を見たところが、「煠」の字体で載っている(影印本画像も確認した)ことから、ここでは、特異的にこの字をここに当てることとした。この「煠」は、「焼く・茹でる・油で揚げる」の意である。但し、良安は「むし」(蒸し)と読んでいる。]
除間使人不忿蓋云合歡蠲忿萱草忘憂
木皮【甘平】安五臟和心志令人歡樂無憂消癰腫續筋骨
治折傷疼痛補陰之功甚捷長肌肉與白蠟同入膏用
有神効 治撲損折骨法合歡皮【去粗皮炒黒色四兩】芥菜子【炒末
一兩】每服二錢温酒臥時服以滓傅之接骨甚妙
夫木秋といへは長き夜明すねふの木もねられぬ程にすめる月哉爲家
晝はさき夜は戀ぬるかうかの木君のみ見んやわけさへにみよ
△按合歡木𠙚𠙚山谷有之和州多武峯最多其葉夜合
如𪾶下畧稱㧠布乃木又有睡草秋開花【葉花狀與木同】晚眠
*
ねぶりのき 合昏《がうこん》 夜合《やがう》
がうかのき 青裳《せいしやう》 萠葛《ばうかつ》
烏賴樹《うらいじゆ》
合歡
尸利灑樹《しりさいじゆ》【佛經。】
【和名、「㧠布里乃木」、
ホツ ハアン 又、云ふ、「加宇加乃木」。】
「本綱」に曰はく、『合歡木《がうくわんぼく》は、梧桐に似、枝、甚だ、柔弱《にうじやく》なり。葉、皂莢《さいかち》、及び、槐《えんじゆ》に似、極めて細くして、繁宻《はんみつ》なり。互《たがひ》に相《あひ》交結《かうけつ》し、一風《いつぷう》、來《きた》る毎《ごと》に、輙《すなは》ち、自《おのづか》ら相《あひ》解《と》け、了《しまひ》に、相《あひ》牽綴《けんてつ》せず。五月、花、發《ひら》く。其の花、上半《じやうはん》は白く、下半は、肉紅《にくべに》。散埀《さんじたれ》して、𮈔《いと》のごとし。花の「異」と爲《な》す。其の綠《みどり》の葉、夜に至る時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則ち、合《あは》す。≪葉、≫嫩《わかき》なる時、煠(む)し熟《じゆく》≪して≫、水に淘《よなぎ》[やぶちゃん注:「水洗いして不純物を取り除き」。]、亦、食ふべし。此の樹、山谷に生ず。人家、庭除《ていじよ》[やぶちゃん注:「庭」「除」ともに「にわ」の意。]の間《かん》に植(うゑ)、人をして忿(いか)らざらしむ。蓋し、云はく、「合歡は、忿りを蠲(のぞ)き、『萱草《わすれぐさ》』は憂(うれへ)を忘る。」≪と≫。』≪と≫。
『木皮《もくひ》【甘、平。】五臟を安《やすん》じ。心志《しんし》[やぶちゃん注:「心」に同じ。]を和らげ、人をして歡樂して、憂《うれひ》、無からしむ。癰腫《ようしゆ》を消し、筋骨を續《つな》ぎ、折-傷(うちみ)・疼痛を治す。補陰の功、甚だ、捷《すみやか》なり。肌肉《ひにく》を長《ちやう》ず≪ること≫、白蠟《はくらう》と同じ。膏《かう》に入れて、用≪ふれば≫、神効、有り。』≪と≫。『撲-損《うちみ》・折骨を治する法、「合歡皮《がうかんぴ》」【粗皮《あらかは》を去り、炒りて、黒色≪となすを≫、四兩[やぶちゃん注:明代の「一兩」は三十七・三グラム。]。】・「芥菜子(からし)」【炒りて末《まつ》≪となすを≫、一兩。】、每服二錢[やぶちゃん注:同前で三・七三グラム。]、温酒《ぬくみざけ》にして、臥す時、服し、滓《かす》を以つて、之れを、傅《つ》く。接骨(ほねつぎ)に、甚だ、妙なり。』≪と≫。
「夫木」
秋といへば
長き夜明かす
ねぶの木も
ねられぬ程に
すめる月哉 爲家
晝はさき
夜は戀ぬる
がうかの木
君のみ見んや
わけさへにみよ
△按ずるに、合歡木《ねぶのき》、𠙚𠙚の山谷に、之れ、有り。和州、多武《とう》の峯《みね》、最も多し。其の葉、夜、合《あひ》て、𪾶(ねぶ)るがごとし。下畧して、「㧠布乃木」と稱す。又、「睡《ねぶ》り草《くさ》」有り。秋、花、開く【葉・花の狀《かたち》、≪「合歡」と≫、木、同じ。】。晚に眠る。
[やぶちゃん注:日中ともに、
双子葉植物綱マメ目マメ科ネムノキ亜科ネムノキ属ネムノキ Albizia julibrissin
である。私が幼少の頃より偏愛してきた花である。而して、青年の折りには、芭蕉の句を知ることで、運命的に惹かれていったのだった。私の『今日のシンクロニティ「奥の細道」の旅 49 象潟 象潟や雨に西施がねぶの花』を見られたい。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『別名、ネム、ネブ。山地や河岸などに生える。夜になると』、『小葉が閉じて垂れ下がる就眠運動を行うことが知られている』。『和名のネムノキは、「眠る木」を意味し、夜になると葉が合わさって閉じて(就眠運動)眠るように見えることに由来する。別名はネム。漢字名の「合歓木」は、葉が合うところからの名前で、中国においてネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから付けられたものである』。『中国植物名(漢語)は合歓(ごうかん)』の『他に、馬纓花、絨花樹、合昏、夜合、鳥絨などの異名がある』。『日本の地方により、ネブノキ、ネブタノキ、コウカンボ、コウカンボクの方言名がある。このほか、方言語彙には次のようなものがある』。『ねむたぎ、ねぶたぎ(眠た木):宮城県、山形県、福島県などの一部』。『ねふりのき(眠りの木):京都府の一部』。『ねむりこ(眠り子):大分県、宮崎県の一部』。『イラン、アフガニスタン、中国南部、朝鮮半島、日本の本州・四国・九州・南西諸島に分布する。各地の山野、原野、河岸に自生する。北海道には自生しないが、植栽樹が道南地方で見られる。沖縄には近縁種のヤエヤマネムノキ( Albizia retusa )がある。どの地域でも、明るい砂地、特に川に近いところなどを適地とする』。『ネムノキ属は主として熱帯に』百五十『種ほどが分布するが、その中でネムノキは飛び抜けて耐寒性が強く』、『高緯度まで分布する。温帯で広く栽培され、一部で野生化している』。『落葉広葉樹の小高木または中高木。河原や雑木林に生え、高さは』六~十『メートル』『になる。生長は早いほうで、枝はやや太く、まばらに横に出て広がる。樹皮は灰褐色で皮目が多く、縦筋がある。皮目は横長になったり、縦に裂けることもある。一年枝は暗緑褐色で皮目が目立ち、ジグザグ状に曲がる。枝は折れやすい』。『葉は大型の』二『回偶数羽状複葉で』、二十~四十『片の小葉をつけ、朝は小葉が開いて夜に閉じることを繰り返す』。『花期は夏』(六~七月)で、『小枝の先から花柄を出して、淡紅色の花が』十~二十個、『集まって』、『頭状花序のようにつき、暑い日中を避けて夕方に開き、翌日にはしぼむ。萼は小さく、花冠は細い筒状で、ほとんど目立たない緑色で短く、上部が』五『裂する。そこから先の雄しべの花糸は淡紅色で長く、花の外にたくさん突き出て目立つ。香りは桃のように甘い。マメ科に属するが、マメ亜科に特徴的な蝶形花とは大きく異なり、花弁が目立たない』。『果実は豆果(莢果)で、広線形で細長く、扁平である。莢は長さ』十~十五『センチメートルの長楕円形で、中に長さ』十~十五『ミリメートルの楕円形の種子が』十~十五『個ほど入る。果実は』十~十二『月に褐色に熟す。豆果は冬でも枯れて残っている』。『冬芽は隠芽で葉痕に隠れており、葉痕の上に小さな副芽がつく。枝先につく仮頂芽は発達せず、側芽は枝に互生する。葉痕は三角形や半円形で、維管束痕は』三『個つく。春になるとひび割れて、隠れていた冬芽が見えてくる』。『陽樹であり、荒れ地に最初に侵入する先駆植物(パイオニア植物)の一種である。芽吹くのは遅いが、成長は他の木と比較すると』、『迅速である』。『ネムノキの就眠運動は、葉の付け根の膨らんだ部分に葉枕(ようちん)という細胞があり、昼と夜の気温の変化で内部圧力を変化させる仕組みにより葉を開閉する。周囲が暗くなると葉を閉じるが、光を当て続ける実験を行ったところ、体内時計による概日リズムに従って就眠することが判明している。また』、『夜でなくても、ひどく暑い日などにも葉の就眠運動が起こることもある』。『生長速度は速いほうで、日当たりの良い場所に植えて育てる。土質は全般で湿りがちな場所に、根を深く張る。種子は春蒔きする。植栽適期は』十『月中旬』から十一『月』、二『月下旬』から三『月』、六『月下旬』から七『月とされる。暖帯・熱帯性の植物で、高い気温を好み、陽樹であることから』、『日陰地は好まず、剪定を嫌う性質を持っている。施肥は』一~三『月に行う』とあるのだが、ここで一言言っておかないと、気が済まない。私が青年時代を過ごした富山県高岡伏木の元実家には、三メートルにもなる合歓の木があったが、その後、帰省しても、花が咲いたことがなかった。父母が現在の鎌倉に戻ったのは、その樹を植えて、十五年は経っていたが、遂に最後まで、合歓の花は咲かなかった(近年、ストリートビューで見たが、もう後地には、合歓の木はなかった)。最近になって、調べてみたところ、合歓の木は植えてから、花をつけるようになるのは、最低でも十年はかかるらしいのだ。さすれば、『今、猫額の庭に植えたとしても、私は、死ぬまで、合歓の花を見ることは、ないだろうなぁ。』と、私は、淋しい溜め息をついたのだった。『観賞用に庭園樹になるほか、街路樹としても使われる。材は、器具材や各種木工品として利用される。葉の粉末は抹香に使う。害虫駆除、鎮痛、家畜の飼料などにも利用される。塩害に強い特性から、日本では古くから海岸線の防風林として利用されている』。『枝が横に張り出す個性的な樹形と、涼しげな葉や刷毛を思わせる花の優美な印象から、観賞用に広い庭などに単独で植えて楽しまれる。若木の頃は足下の日当たりは良いが、生長するにつれて足下に日当たりは悪くなる。花の独特の形は観賞性が高く評価されているが、木の高い位置に花を多くつけるため、花を楽しむには建物の』二、三『階くらいの高い場所から眺められるような環境が必要となる』。『園芸品種に、枝が垂れる ‘シダレネムノキ’ 、銅紫色の葉をもつ ‘サマーチョコレート’ などの栽培種もある』。『河原に近い明るい砂地が生育に適し、マメ科に共通する性質をもつことから、砂防用に使われた例もある』。『中国医学では花を生薬として用い、夏に採取して天日乾燥したものを合歓花(ごうかんか)と称する。性は平、味は甘であり、精神安定や不眠解消の効果があるとされる。樹皮は合歓皮(ごうかんひ)と称する生薬で』、七~八月頃の、『樹皮が剥がれやすい時期に』、『幹や枝の一部から剥ぎ取って、表面の粗皮を取り除き、天日乾燥させたものである。樹皮にはタンニンが含有され、利尿・強壮・鎮痛効果があり、花と同様に不眠、不安に対する薬効もあるとされる』。『民間では花・樹皮ともに』一『日量』五~十『グラムを水』六百『㏄で半量になるまで煎じて』、三『回に分けて服用することで、ストレス性の不眠、不安によいと言われている。また関節痛や腰痛を目的に、樹皮』十~十五『グラムを水』四百『㏄で半量になるまで煎じ』、一『日』三『回に分けて服用する用法も知られている。さらに、打撲や挫傷には、合歓皮を黒焼きにして黄柏末(オウバクの粉末)を混ぜて酢で練り、冷湿布に用いる』。以下、最後の「近縁種」の項。
・『ギンネム( Leucaena leucocephala )』:『ギンゴウカン属の樹木で、標準和名はギンゴウカン。熱帯アメリカ原産で、ネムノキに似た白色球状の頭状花序をつける。日本では、沖縄や小笠原諸島に帰化している』。
・『タイワンネム( Albizia procera )』:『台湾に分布するネムノキの近縁種。花色は銀白色』。
・『オオバネムノキ( Albizia kalkora )』:『別名、チョウセンネムノキ。朝鮮に分布する。ネムノキと似ており、花色はピンク色』。
「本草綱目」の引用は「卷三十五下」の「木之二」「喬木類」(「漢籍リポジトリ」)の二項目にある「合歡」(ガイド・ナンバー[086-3a]以下)からパッチワークしたものである。
「烏賴樹《うらいじゆ》」由来不明だが、先の引用に「鳥絨」(ちょうじゅう:これは花を鳥の羽毛に喩えたものであろう)と混同されないように。こっちは、「烏」で「鳥」ではない。
「尸利灑樹《しりさいじゆ》【佛經。】」「大蔵経データベース」で検索したところ、「金光明最勝王經」に記載があり、「金光明最勝王經疏」・「翻譯名義集」・「金光明最勝王經註釋」・「孔雀經音義」・「祕藏金寶鈔」・「多羅葉記」に載ることが判った。「金光明最勝王經」の原典は、四世紀頃に成立したとされる大乗経典で、唐の義浄が自らインドから招来した経典を新たに漢訳したものが、これ。本邦では、「法華經」・「仁經」とともに護国三部経の一つに数えられる。
「梧桐」双子葉植物綱アオイ目アオイ科 Sterculioideae 亜科アオギリ属アオギリ Firmiana simplex 。先行する「梧桐」を参照されたい。
「皂莢《さいかち》」日中ともに、マメ目マメ科ジャケツイバラ亜科サイカチ(皂莢)属サイカチ Gleditsia japonica 。この次の項が「皂莢」である。
「槐《えんじゆ》」」双子葉植物綱バラ亜綱マメ目マメ科マメ亜科エンジュ属エンジュ Styphnolobium japonicum 。先行する「槐」照。
「繁宻《はんみつ》なり。互《たがひ》に相《あひ》交結《かうけつ》し、一風《いつぷう》、來《きた》る毎《ごと》に、輙《すなは》ち、自《おのづか》ら相《あひ》解《と》け、了《しまひ》に、相《あひ》牽綴《けんてつ》せず。」合歓の木の葉の生態を、撮影したような、言い得て妙の描出である!
「合歡は、忿りを蠲(のぞ)き、『萱草《わすれぐさ》』は憂(うれへ)を忘る。」』この引用は、「本草綱目」の「釋名」にあり、前に『嵇康養生論云』とある。三国時代の魏の思想家で「竹林の七賢」の一人である嵇(=嵆)康(けいこう 二二三年~二六二年:自然を尊び、礼教に批判的な言辞を多く残した。琴の名人としても知られた。最後は死罪を受けている。その経緯は当該ウィキを見られたい)の「養生論」。「文選」に所収する。短い。「維基文庫」のこちらで全文が見られる。「蠲」は音「ケン・ケイ・ケ」で中国の文語文で「免除する」の意がある。「萱草」は単子葉植物綱キジカクシ目ワスレグサ科ワスレグサ亜科ワスレグサ属ワスレグサ Hemerocallis fulva 、所謂、「カンゾウ」の名で知られるあれである。当該ウィキによれば、『広義にはワスレグサ属(別名キスゲ属、ヘメロカリス属)』『のことを指し、その場合は、ニッコウキスゲ(H. dumortieri var. esculenta)など』、『ゼンテイカ』(禅庭花: H. dumortieri var. esculenta )『もユウスゲ(H. Baroni var. vespertina)もワスレグサに含まれる。また長崎の男女群島に自生するトウカンゾウ(』(唐萱草)『 H. aurantiaca)などもワスレグサと呼ばれる』とあり、和名は『花が一日限りで終わると考えられたため』である。中国での異名に「忘憂草」がある。
「癰腫」悪性の腫れ物で、根が浅く、大ききなものを言う。
「筋骨を續《つな》ぎ、折-傷(うちみ)・疼痛を治す」昔、ここを読んだ時、私は、『これは本当にそんな神がかった接骨の薬効があるなんて考えられない。これって、合歓の木の葉の就眠運動の類感呪術だろう。』と、てっきり思い込んで、今日の今日まで、いたのだが、漢方サイトを見るに、中国の本草書には勿論、本邦の民間薬法にも、そうした治療法がしっかりと記されているのであった。しかし、それでも、どの成分が、実際に「骨接ぎ」や外傷を修復する効果があるのか、ちゃんと科学的に認め得る記載にも、探し方が悪いのか、逢着することがなかった。何方か、御教授願えると、恩幸、これに過ぎたるはない。
「白蠟《はくらう》」「虫白蠟」(insect wax)。別名「イボタ蠟」。シソ目(或いはゴマノハグサ目)モクセイ科イボタノキ属イボタノキ Ligustrum obtusifolium の樹皮上に寄生するイボタロウムシ(半翅(カメムシ)目同翅(ヨコバイ)亜目カイガラムシ上科イボタロウムシ Ericerus pela )の分泌する蠟。古くから蠟燭の原料や日本刀の手入れに用いられてきた。
「夫木」「秋といへば長き夜明かすねぶの木もねられぬ程にすめる月哉」「爲家」「夫木和歌抄」所収の一首。の「卷廿九 雜十一」にある一首。「日文研」の「和歌データベース」のこちらで確認した。ガイド・ナンバー「14079」が、それ。
「晝はさき夜は戀ぬるがうかの木君のみ見んやわけさへにみよ」これは、」「古今和歌六帖」(全六巻。編者は紀貫之、或いは、源順(したごう)とも言われる。草・虫・木・鳥等の二十五項、五百十六題について和歌を掲げた類題和歌集)。以下の一首は、日文研の「和歌データベース」で確認したが、そこでは、
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ひるはさき-よるはこひぬる-かふくわのき-きみのみみむや-わけさへにみよ
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となっている。「第六 木」のガイド・ナンバー「04289」である。これは、「万葉集」の巻第八の「春の相聞」にある、「紀女郞(きのいらつめ)の大伴宿禰家持に贈れる歌二首」の二首目(一四六一番)だ。
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晝は咲き夜(よる)は戀ひ寢(ぬ)る合歡木(ねぶ)の花君のみ見めや戲奴(わけ)さへに見よ
*
「君」は一人称で自分をさす。「戲奴(わけ)」若者の意。上句は共寝に見立てて、下句で誘っているのである。
「和州、多武《とう》の峯《みね》」多武峰(とうのみね)は奈良県桜井市南部にある山(グーグル・マップ・データ)。]
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