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2024/07/14

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 訶黎勒

 

Mirobarannoki

[やぶちゃん注:上部に種子三個体が描かれてある。]

 

かり ろく 訶子《かし》

 

訶黎勒

 

ヲヽリイレツ

 

本綱訶子生西域今嶺南皆有而廣州最盛樹似木槵而

花白子形似巵子橄欖青黃色皮肉相着七八月實熟時

收之以六路者爲佳六路者卽六稜也【或多或少者是𮦀路勒也】皆圓

[やぶちゃん注:「𮦀」は「雜」の異体字。]

而露文【或八路至十三路者號榔精勒濇不堪用】未熟時風飄墮者謂之

隨風子

嶺南風俗有佳客至則用新摘訶子五枚甘草一寸破之

水煎若新茶賞之今亦貴此湯然煎之不必盡如昔時之

法也

訶子【苦酸温】 止腸澼久泄赤白痢消痰下氣化食實大腸

 伹同烏梅五倍子用則收斂同橘皮厚朴用則下氣同

 人參用則能補肺治咳嗽【伹欬嗽未久者不可驟用之爾】

[やぶちゃん注:割注の「欬」は「咳」の異体字。]

 

   *

 

かり ろく 訶子《かし》

 

訶黎勒

 

ヲヽリイレツ

 

「本綱」に曰はく、『訶子《かし》は、西域に生《しやう》ず。今、嶺南、皆、有りて、廣州、最も盛《さかん》なり。樹、木槵(つぶのき)に似て、花、白し。子《み》≪の≫形、巵子(くちなし)・橄欖《かんらん》に似、青黃色。皮・肉、相《あひ》、着く。七、八月、實、熟する時、之れを、收《をさむ》。六路の者を以つて、佳なりと爲す。六路とは、卽ち、六つ稜(かど)なり【或いは、≪それより≫多き、或いは、少き者、是れ、「𮦀路勒《ざつろろく》」なり。】。皆、圓《まろ》くして、文《もん》を露はす【或いは、八路≪より≫十三路に至る者、「榔精勒《らうせいろく》」と號す。濇《しぶく》≪して≫、用ひるに堪へず。】。未だ熟せざる時、風に飄《ただよひ》て、墮《おつ》る者、之れを、「隨風子」と謂ふ。』≪と≫。

『嶺南の風俗に、「佳客、至ること有れば、則ち、新たに、『訶子』五枚を摘(むし)り、用ひ、「甘草」一寸≪とともに≫、之れを破りて、水≪にて≫煎じ、「新茶」のごとく、之れを賞(もてな)す。」≪と≫。今、亦、此の湯、貴《たふと》ぶ。然≪れども≫、之れを煎≪ずる法(はう)は≫、必≪ずしも≫盡《ことごと》く、昔時《せきじ》の法のごとくならざるなり。』≪と≫。

『訶子【苦、酸。温。】 腸澼《ちやうへき》・久泄《きうせつ》・赤白痢《せきはくり》を止め、痰《たん》を消し、氣を下《くだ》し、食を化《くわ》し、大腸を實《じつ》す。伹《ただし》、「烏梅《うばい》」・「五-倍-子《ふし》」と同じく用ひれば、則ち、收斂《しうれん》す。「橘皮《きつぴ》」・「厚朴《かうぼく》」と同じく用ふれば、則ち、氣を下す。「人參」と同じく用ふれば、則ち、能《よく》、肺を補して、咳-嗽《がいそう/せき》を治す【伹し、欬嗽《がいそう/せき》の、未だ、久しからざる者、之れを、驟《にはかにし》て用ふるべからざるのみ。】。』≪と≫。

 

[やぶちゃん注:「訶黎勒」「かりろく」「訶子《かし》」は、

双子葉植物綱フトモモ目シクンシ科 Combretaceae(中文名「使君子」)モモタマナ属ミロバランノキ(英語:myrobalan/中文名:「訶子」) Terminalia chebula 、及び、その果実と、その生薬名

を指す。「維基百科」の「訶子」(画像もある)を見ると、『元来はアラビア語』(ラテン文字転写)『Halilehで、この語は「本草綱目」の解釈に拠れば、サンスクリット語で「天主が持ち来れるもの」の意である』というようなことが書いてあるようだ。分布は、『ベトナム・ラオス・カンボジア・タイ・ミャンマー・マレーシア・ネパール・インド、及び中国の雲南省に分布する。標高八百~千八百四十メートルの高地の疎林に植生する』とあり、『高さ三十メートルになり、灰黒色から灰色の樹皮を持ち、葉は互生、又は、ほぼ対生で、楕円形から長楕円形を成し、腋窩又は末端に穂状花序があり、円錐花序を形成することもある。硬い核果は、卵形、或いは、楕円形を成し、青色で、無毛。成熟すると、濃い茶色に変わる。開花期は五月、結実期は七月~九月』とある。而して、この実は、『一般的に使用される漢方薬、及び、チベットの生薬剤であり、腸を収斂させ、肺を引き締め、咳を和らげる効果があり、一般的に使用される処方としては、「有真人養臟湯」等などがある』とする。なお、変種の微毛訶子 Terminalia chebula var. tomentella が、『ミャンマーと雲南省に分布する』ともあるので、これも比定種に入れる必要がある。因みに、日本語の同種のウィキは存在しない。しっかりした邦文のページは、「国際農林水産業研究センター JIRCAS)」公式サイト内の「タイ地域野菜データベース」の「Terminalia chebula Retz. (Combretaceae)」のページであろう。それによれば(以下はタイでの個体群の総説であることに注意)、『中型、高さは最大』二十五メートル、『見た目が様々な落葉樹』で、『幹は通常は短く』、『円筒形、長さ』五~十メートル。『樹冠は円形、枝は広がる。樹皮は通常は縦方向の亀裂が生じており、木質の鱗片を持つ。小枝は錆色の絨毛またはほぼ無毛』。葉は『互生葉または対生葉、単葉、薄く』、『革質、卵形または楕円状倒卵形、』七~十二センチメートル『×』四~六・五センチメートル、『基部は円形、葉先は鈍形からやや鋭形、全縁、葉裏は短毛。葉柄の長さは最大』二センチメートル、『葉身の基部に腺が』二『本』ある。花序は『穂状花序が腋生』し、『長さ』五~七センチメートル、『単一花序または稀に穂状円錐花序』。花は『直径約』四ミリメートル、『黄色がかった白色』で、『不快な匂いを放つ』。萼は五裂し、花冠は『なし』。雄蕊は十本で、『伸び出ている』。子房は『下位』にあり、一『室』のみ。果実は、『倒卵形または長楕円状楕円形の核果』で、『長さ』は二・五~五センチメートルで、『大よそ』五『角形』を成す。『成熟すると』、『黄色からオレンジ色がかった褐色』に変じ、『無毛』とある。伝統薬の薬効としては、『喉の痛み, 腎機能低下』の改善が挙げられ、「機能性」の項には、『抗酸化活性』・『肝保護作用』・『神経保護作用』・癌『細胞株に対する細胞毒性』・『抗糖尿病活性』・『抗炎症作用』とある。『機能性成分』は『フラボノイド』・『タンニン』・『フェノール酸』とする。以下、『標高千五百メートル『までの落葉混交林に分布』し、『粘土質から砂質まで』、『様々な土壌で育つ。種子播種により繁殖する。種子休眠は核(stone)を長時間発酵させるか、または胚を損傷させることなく核の広がった端部を切り取り、その後』、『冷水に』三十六『時間さらすことで打』ち『破』ることが『できる。果実は雨期の終わりに収穫される』。『鮮な果実は生で、または保存食として「サモー チェー イム(果実のシロップ漬け)」に利用される。乾燥した果肉に含まれるタンニンの量は平均して』三十~三十二『%である』とあった。

 本篇の「本草綱目」の引用は、「卷三十五下」の「木之二」「喬木類」(「漢籍リポジトリ」)の「訶黎勒」(ガイド・ナンバー[086-18a]以下)からのパッチワークである。

「西域に生ず」東洋文庫の後注で、『訶子は南方の植物である。『新註校定国訳本草綱目』(春陽堂)の木島正夫氏の注によれば、「その產地は中國南部、ベトナム、タイ、ラオス、ビルマ、インドなど南方地域であり……」とある。すれば』、『ここの西域に産するは』、『誤りであろう。『本草綱目』の訶黎勒の項にも西域の文字はない。伝写の際の誤りであろうか。』と述べておられる。

「木槵(つぶのき)」双子葉植物綱ムクロジ目ムクロジ科ムクロジ属ムクロジ Sapindus mukorossi 先行する「無患子」を参照。

「巵子(くちなし)」リンドウ目アカネ科サンタンカ亜科クチナシ連クチナシ属クチナシ Gardenia jasminoides の異名漢字表記。その強い芳香は邪気を除けるともされ、庭の鬼門方向に植えるとよいともされ、「くちなし」は「祟りなし」の語呂を連想をさせるからとも言う。真言密教系の修法では、供物として捧げる「五木」(梔子・木犀・松・梅花・榧(かや:裸子植物門マツ綱マツ目イチイ科カヤ属カヤ Torreya nucifera )の五種の一つ。

「橄欖《かんらん》」ムクロジ目カンラン科カンラン属 カンラン  Canarium album ウィキの「カンラン科」によれば、『インドシナの原産で、江戸時代に日本に渡来し、種子島などで栽培され、果実を生食に、また、タネも食用にしたり油を搾ったりする。それらの利用法がオリーブ』(シソ目モクセイ科オリーブ属オリーブ Olea europaea )『に似ているため、オリーブのことを漢字で「橄欖」と当てることがあるが、全く別科の植物である。これは幕末に同じものだと間違って認識され、誤訳が定着してしまったものである』とある。

「嶺南」中国の南部の南嶺山脈(「五嶺」)よりも南の地方を指す古くからの広域地方名。現在の広東省・広西チワン族自治区・海南省の全域と、湖南省・江西省の一部に相当する。部分的に「華南」と重なっている。地方域は参照したウィキの「嶺南(中国)」にある地図を見られたい。

「甘草」マメ目マメ科マメ亜科カンゾウ属 Glycyrrhiza当該ウィキによれば、『漢方薬に広範囲にわたって用いられる生薬であり、日本国内で発売されている漢方薬の約』七『割に用いられている』とある。

「腸澼《ちやうへき》」東洋文庫の割注に『不節制による腹痛下痢』とある。

「久泄《きうせつ》」同前で『慢性下痢』とある。

「赤白痢《せきはくり》」前項「没石子」の最終注参照。

「烏梅《うばい》」東洋文庫の割注に『半熟の梅の実を採り』、『煙で黒くいぶしたもの』とある。

「五-倍-子《ふし》」東洋文庫の後注で、『塩麩子(ぬるで)の木の葉に寄生した細虫が、中に入ってつくった小毬(虫部卵生類參照のこと)。』とある。「塩麩子(ぬるで)」はムクロジ目ウルシ科ヌルデ属ヌルデ変種ヌルデ Rhus javanica var. chinensis である。私は既に「和漢三才圖會」の「蟲部」は、ブログのこちらで、総て、電子化注してある。従って、「和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 五倍子 附 百藥煎」を参照されたい。

「橘皮《きつぴ》」(キッピ)は、バラ亜綱ムクロジ目ミカン科ミカン亜科ミカン属タチバナ Citrus tachibana や、ミカン属ウンシュウミカン Citrus unshiu などの成熟果実の果皮を乾燥したもので、漢方では、理気・健脾・化痰の効能があり、消化不良による腹の張りや、吐き気、痰多くして胸が苦しい際に用いられる。

「厚朴《かうぼく》」時珍の言うそれは、モチノキ(黐の木)目モチノキ科モチノキ属モチノキ亜属ナナミノキ Ilex chinensis である。これに同定比定した私の考証は、先行する「厚朴」の冒頭注を、必ず、参照されたい。

「人參」言わずもがなであるが、所謂、「朝鮮人蔘」(ちょうせんにんじん)、標準和名は「御種人蔘」(おたねにんじん)、セリ目ウコギ(五加木)科トチバニンジン(栃葉人参)属オタネニンジン Panax ginseng である。]

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