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2024/07/28

平仮名本「因果物語」(抄) 因果物語卷之六〔五〕狐產婦の幽㚑に妖たる事

[やぶちゃん注:底本・凡例その他は初回を見られたい。この回の底本はここから。その左丁に挿絵がある。挿絵には、右上方に枠入りで「京はなたて町」というロケーション・キャプションが書かれてある。本文では「立花町」となっているが、これは現在の京都府京都市中京区花立町(はなたてちょう)であろうから(グーグル・マップ・データ)、このキャプションの方が正しいと言えよう。今回は、「……」を一部で用いた。]

 

Sanpukitune

 

因果物語卷之六〔五〕狐(きつね)、產婦(うぶめ)の幽㚑(ゆうれい)に妖(ばけ)たる事

 寛永二年[やぶちゃん注:一六二五年。]のころ、京にのぼりて、逗留(とうりう)せし時、二村(ふたむら)庄二郞、語られしは、

……此ごろ、きどく[やぶちゃん注:「奇特」。滅多に聴かぬ、非常に不思議で異常なこと。]なる事、あり。

 立花町といふ所に、白かね屋与七郞といふものゝ女房、難產(なんざん)して、死(しに)侍り。

 その夜より、かの女房の「ばうこん[やぶちゃん注:「亡魂」。]、「產新婦(うぶめ)」に成《なり》て、うらのかたなるまど[やぶちゃん注:「窓」。]のもとへ來《きた》り、赤子(あかご)を、なかせけり。

 すさまじき事、かぎり、なし。

 あたりちかきもの共《ども》、わかき女わらはどもは、おそろしがりて、日《ひ》だに、暮《くる》れば、戸を、さしかためて、かほ[やぶちゃん注:「顏」。]をも、さしいださず。

 与七郞、

『口おしき[やぶちゃん注:ママ。]事。』

に、おもひ、寺の長老を、たのみ、仏事を、いとなみ、山ぶしを、かたらひて、いろいろ祈禱いたしけれども、すこしも、しるし、なし。

[やぶちゃん注:「長老」岩波文庫の高田氏の脚注に、『禅宗では寺の住持。もしくはその上位の老僧。』とする。

「山ぶし」同前で、『里山伏。修験道から派生した、民間呪術者』とある。]

 毎夜、來りて、なきけるゆへ[やぶちゃん注:ママ。]に、与七郞は、となりへ、まゐりて、かき[やぶちゃん注:「垣」。]の、ひまより、うかゞひ見れば、まことの「うぶめ」にては、なくして、大いなる「ふるぎつね」なり。

「にくき事かな。」

とて、半弓(はんきう[やぶちゃん注:ママ。そのまま「はんきゆう」でよい。])をもつて、射(い)ければ、ねらひ、はづして、「きつね」の、うしろあしに、たちけり。

 あとかたなく、にげうせてより、「うぶめ」は、二《ふた》たび、きたらず。

 四、五日ほど、ありてのち、かの「きつね」、与七郞に、つきて、口ばしり、

「いかに。わが、あそぶところを、弓にて、射(い)ける事の、はら立《はらだたし》さよ。それが、よきか、これが、よきか、」

と、いふて、さまざま、くるひけり。……

「のちに、与七郞は、死(しに)にけり。」

と、申されし。

[やぶちゃん注:「產新婦(うぶめ)」私の記事では、四十件に上る記載がある。その中でも、古い部類に入るもので、ガッチりとマスに注してあるものとしては、

『柳田國男「一目小僧その他」 附やぶちゃん注 橋姬(3) 產女(うぶめ)』

がよいだろう。以下、時系列で並べると、

宿直草卷五 第一 うぶめの事

和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 姑獲鳥(うぶめ) (オオミズナギドリ?/私の独断モデル種比定)

鈴木正三「因果物語」(片仮名本(義雲・雲歩撰)底本・饗庭篁村校訂版) 上卷「十六 難產にて死したる女幽靈と成る事 附 鬼子を產む事」

奇異雜談集巻第四 ㊃產女の由來の事

等が、それなりに読める内容であり、私も同等の注を附してあるので、見られたい。一応、ウィキの「産女」をリンクしては、おく。

「毎夜、來りて、なきける」ここに高田衛氏は脚注して、『其の声、『をばれう、をばれう』と鳴くと申しならはせり」(『百物語評判』巻二の五)。』とされておられる。私の「古今百物語評判卷之二 第五 うぶめの事附幽靈の事」を見られたい。

「半弓」常の弓より短い長さの弓(全体に半分くらい)で、低い位置で、座位でも射ることが出来、室内での待ち伏せなどにも用いる。しかし、またしても、絵師がアカンな。この弓は普通の大きな弓だ。因みに、矢は、鳥獣を射る雁股(かりまた)である。


「それが、よきか、これが、よきか、」最後の台詞は、恐らく、古い狐の鳴き声のオノマトペイアである「こんくわい、こんくわい、」をインスパイアしたものであろう、と私は思う。

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