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2024/08/16

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 㽔核

 

Henkakuboku

 

[やぶちゃん注:上部に三個の種子の図がある。]

 

とりとまらず 白桵【㽔與桵同】

すいがく   【俗云不鳥止】

㽔核

 

スイ ホツ

 

本綱㽔核樹高五七尺叢生葉細似枸𣏌而狹長花白子

[やぶちゃん字注:「𣏌」は「杞」の異体字。以下同じ。]

附莖生紫赤色大如五味子其花實㽔㽔下垂故謂之桵

莖多細刺其子入藥用中仁或合殻用

仁【甘温】強志明耳目一切眼科良藥【春雪膏百㸃膏撥雲膏等眼藥入用】

△按倭名抄以桵訓太良者非也太良者楤也【見于後】

 山谷中有木髙三四尺葉小團長似黃楊葉又似枸𣏌

 葉而厚其子九月熟赤色枝葉間刺多鳥不能來止故

 俗呼曰鳥不止恐此㽔核矣

 

   *

 

とりとまらず 白桵《はくずい》【「㽔」と「桵」は同じ。】

すいがく   【俗に云ふ、「鳥止《とりとま》らず」。】

㽔核

 

スイホツ

 

「本綱」に曰はく、『㽔核≪の≫樹、高さ五、七尺。叢生す。葉、細くして、「枸𣏌《くこ》」に似て、狹《せば》く、長≪し≫。花、白く、子《み》、莖に附きて、生ず。紫赤色。大いさ、「五味子《ごみし》」のごとし。其の花・實、㽔㽔《すいすい》として[やぶちゃん注:「草木に多くの花・実がつき、その重みで枝が垂れるさま」を言う。]、下《さが》り垂れ、故《ゆゑ》、之れを「桵《ずい》」と謂ふ。莖に細き刺《とげ》、多し。其の子、藥に入《いる》るに、中の仁《にん》を用ゆ。或≪いは≫、殻を合≪はせて≫用ゆ。』≪と≫。

『仁【甘、温。】志[やぶちゃん注:精神。]を強くし、耳・目を明《めい》にし、一切≪の≫眼科の良藥≪なり≫【「春雪膏」・「百㸃膏」・「撥雲膏」等、眼藥に入れ、用ゆ。】。』≪と≫。

△按ずるに、「倭名抄」に、「桵」を以つて、「太良《たら》」と訓ずるは、非なり。「太良」とは、「楤《ソウ/たらのき》」なり【後《うしろ》を見よ。】。

 山谷の中に、木、有り、髙さ、三、四尺。葉は、小さく、團《まろく》、長《ながし》。「黃楊(つげ)」の葉に似、又、「枸𣏌《くこ》」の葉に似て、厚し。其の子《み》、九月、熟≪せば≫、赤色。枝葉の間、刺《とげ》、多く、鳥、來《きて》、止かること能はず。故《ゆゑ》≪に≫、俗、呼んで、「鳥止《とりとま》≪ら≫ず」と。恐らくは、此れ、「㽔核」≪ならん≫。

 

[やぶちゃん注:核」の「」が見慣れない漢字で、邦文で種同定しているものを探すのに、ちょっと手間取ったが、やっとこさっとこ、これは、

双子葉植物綱バラ目バラ科モモ亜科 Osmaronieae 亜連 Prinsepia(プリンセピア)属(中文名「扁核木屬」)ヘンカクボク(中文名「蕤核」) Prinsepia uniflora (プリンセピア・ユニフローラ)

であることが判った(「㽔」は「蕤」と同字)。「維基百科」の「蕤核」によれば、『中国固有種。陝西省・四川省・河南省・山西省・甘粛省・内モンゴル自治区などに分布し、主に日当たりの良い斜面や山麓の標高九百メートルから千百メートルの地域に生育する。未だ人工的に栽培されていない』とあり、「別名」の項に、『蕤李子(「救荒本草」)・扁核木(「中國樹木分類學」)・單花扁核木(「經濟植物手冊」)・山桃(河南)・馬茹(陝西)・茹茹(山西)』とあり、「異名」(シノニム)の項に、

Prinsepia uniflora Batal. var. serrata Rehd.

った。フランス語の同種のウィキには(珍しく英文ウィキは存在しない)、『二種の野生変種がある』とあって、

Prinsepia uniflora var. serrata Rehd.(中文の示すシノニムと同じ)

Prinsepia uniflora var. uniflora(これは種小名から見て、恐らくタイプ種のシノニムであろう)

を掲げ、同種は『高さ一~二メートルの低木で、丈夫な枝で、六ミリメートルから一センチメートルの棘(とげ)を持つ』。『無茎種の葉は長楕円状の披針形を成し、長さは二~六センチメートル✕〇・六~〇・八センチメートルで、縁には鋸歯がある』。『花は腋生で、一~三個、束状に咲き、直径八ミリメートルから一センチメートルの白色で、五~六ミリメートルの白い倒卵形の花弁を、五枚、つけている。カップ状の容器の端に十本の雄蕋がある』。『花は強い蜂蜜の香りを放つ。葉が成長する前、フランスでは四月(中国では五月)に開花が始まる』。『果実は赤褐色の核果で直径約一センチメートルで、光沢がある。食用となる』とし、本種の主たる原産地を『中国の青海省・四川省・内モンゴル自治区の三角地帯の』『海抜九百から一千メートルの高地に生育する』とある。『温帯地域で栽培される 観賞用低木で』、『果実は生で食べることができ、その種は、スープに入れて食される』とあった。最後に言っておくと、本邦には自生しない。従って、最後の良安の謂いは、ハズレである(最終注参照)。私は同種を見たことがない(と思う)ので、学名のグーグル画像検索をリンクさせておく。

 「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「木之三」の「㽔核」([088-30a]以下)のパッチワークである。

「枸𣏌《くこ》」ナス目ナス科クコ属クコ Lycium chinense 。根皮は、漢方で清涼・強壮・解熱薬などに用い、「地骨皮」「枸杞皮」と呼ぶ。

「五味子《ごみし》」被子植物門アウストロバイレヤ目 Austrobaileyales マツブサ科サネカズラ属サネカズラ Kadsura japonica 。常緑蔓性木本の一種。当該ウィキによれば、『単性花をつけ、赤い液果が球形に集まった集合果が実る。茎などから得られる粘液は、古くは整髪料などに用いられた。果実は生薬とされることがあり、また美しいため観賞用に栽培される。古くから日本人になじみ深い植物であり』、「万葉集」にも、多数、『詠まれている。別名が多く』、『ビナンカズラ(美男葛)の名があ』り、『関連して鬢葛(ビンカズラ)』、『鬢付蔓(ビンズケズル)』、『大阪ではビジョカズラ(美女葛)と称したともいわれる』とあり、具体な精製法は、茎葉を二『倍量の水に入れておくと粘液が出るので、その液を頭髪につけて、整髪料として利用』した。既に『奈良時代には、整髪料(髪油)としてサネカズラがふつうに使われていたと考えられて』おり、それは、『葛水(かずらみず)、鬢水(びんみず)、水鬘(すいかずら)とよばれた』、『また』、『サネカズラを浸けておく入れ物を蔓壺(かずらつぼ)、鬢盥(びんだらい)といったが、江戸時代には男の髪結いが持ち歩く道具箱を鬢盥というようになった』とある。また、『赤く熟した果実を乾燥したものは』、『南五味子(なんごみし)と』呼ばれ、生薬とし、『鎮咳、滋養強壮に効用があるものとされ、五味子(同じマツブサ科』マツブサ属チョウセンゴミシ Schisandra chinensis 』『の果実)の代用品とされることもある』。但し、『本来の南五味子は、同属の Kadsura longipedunculata ともされる』とある。

「桵《ずい》」は「白桵・白㮃」(孰れも「ハクズイ」と読む)で、本種 Prinsepia unifloraを示す別漢字である。

「春雪膏」本邦漢方処方についての論文内に眼科薬として挙がっていた。

「百㸃膏」不詳だが、「百」「㸃」から所謂、何度も点眼できる薬であろう。

「撥雲膏」不詳だが、「撥」(はねる・はじく)と「雲」から所謂、眼の曇りを直す薬であろう。

『「倭名抄」に、「桵」を以つて、「太良《たら》」と訓ずるは、非なり』源順の「和名類聚鈔」の「卷第二十」の「草木部第三十二」の「木類第二百四十八」にある。国立国会図書館デジタルコレクションの寛文七(一六六七)年版の当該条を参考に、推定訓読する。

   *

桵(タラ) 「爾雅注」に云はく、『桵【音「蕤」。和名、「太良」。】は、小木の叢《むらが》り、生《しやう》じて、刺(ハリ)、有るなり。

   *

『「太良」とは、「楤《ソウ/たらのき》」なり【後《うしろ》を見よ。】』最後の割注は、実は、この次の項が「楤木(たらのき)」であることの「見よ見出し」なのである。そちらで詳細に考証するが、「楤」はセリ目ウコギ科タラノキ属タラノキ Aralia elata である。当該ウィキをリンクさせるに留める。

「黃楊(つげ)」ツゲ目ツゲ科ツゲ属ツゲ変種ツゲ Buxus microphylla var. japonica である。当該ウィキをリンクさせておく。

「枸𣏌《くこ》」ナス目ナス科クコ属クコ Lycium chinense 。根皮は、漢方で清涼・強壮・解熱薬などに用い、「地骨皮」「枸杞皮」と呼ぶ。当該ウィキをリンクさせておく。

『俗、呼んで、「鳥止《とりとま》≪ら≫ず」と。恐らくは、此れ、「㽔核」≪ならん≫』これは、ハズれである。これは、キンポウゲ目メギ科メギ属メギ Berberis thunbergii である。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『目木』で、『別名では、コトリトマラズ、ヨロイドオシともよばれる』(とあるが、「金澤 中屋彦十郞藥局」公式サイト内の「●鳥不止(とりとまらず、トリトマラズ)」で、メギの異名を『鳥不宿(とりとまらず)』とし、『関東以西、四国、九州に普通に分布するメギ科の落葉低木、メギの枝や幹の木部を用いる』。『枝には鋭いトゲがあり』、『トリトマラズといわれている』とあった)。『和名メギの由来は、茎や根を煎じて洗眼薬に利用されていたので「目木」の名がある。枝に鋭い棘を多く生やし、鳥がとまれそうにないことから、コトリトマラズの別名でも呼ばれる』。『落葉広葉樹の低木で、樹高』二『メートル』『ほどまで成長し、よく枝分かれする。樹形は株立ち。樹皮は灰褐色から褐色で、縦にやや不規則な割れ目がある。枝は赤褐色から褐色で、顕著な縦の溝と稜が目立つ。枝の節や葉の付け根には長さ』五~十二『ミリメートル』『の棘があり、徒長枝の葉の付け根には』三『本に分かれた棘がある。樹皮は黄色の染料になる』。『葉は単葉で、新しく伸びた長枝には互生し』、二『年枝の途中から出た短枝には束生する。葉身は長さ』一~五『センチメートル 』、『幅』〇・五~一・五センチメートル『の卵倒形から狭卵倒形、またはへら形で、先端は鈍頭または円頭、基部は次第に細くなって短い葉柄になり、最大幅は先寄り。葉縁は全縁で、表面は薄い紙質で無毛、裏面は色々を帯び』、『無毛』で、四~五『月に若葉を出す』。『開花時期は』四~五『月。新葉が出るころに単枝から小形の総状花序または散形花序を出し、直径約』六ミリメートル『の淡黄色から緑黄色の花を』二~四『個』、『下向きに付ける。花弁の長さは約』二ミリメートル『で』六『個。萼片は』六『個あり、長楕円形で花弁より大きく、淡緑色にわずかに紅色を帯びる。雄蕊は』六『個で花柱は太く、触ると』、『葯が急に内側に曲がる。雌蕊は』一『個』。『果実は液果で、長さ』七ミリメートルから一センチメートル『の楕円形』で、十~十一『月に鮮やかな赤色に熟す。アルカロイドの』一『種のベルベリン』(berberine:ベンジルイソキノリンアルカロイド(benzylisoquinoline alkaloids)の一種。「ベルベリン」という名は翻種の属名 Berberis に由来する。当該ウィキによれば、)『抗菌・抗炎症・中枢抑制・血圧降下などの作用があり、止瀉薬として下痢の症状に処方されるほか、目薬にも配合される』が、『腸管出血性大腸菌O157などの出血性大腸炎、細菌性下痢症では、症状の悪化や治療期間の延長をきたすおそれがあるため』、『原則として禁忌である』。『ベルベリンの抗炎症作用は』免疫反応において中心的役割を果たすとされる『NF-κB遺伝子』(nuclear factor κB)『の不活性化等に基づくとされる』。『動物実験では、糖尿病性腎症の発症・進展抑制効果が示唆された』とあった)『を含む。秋は熟した赤い果実と紅葉が美しく、冬になっても果実が残る』。『冬芽は枝に互生し、棘の基部につく。冬芽の大きさは小さく、長さは』二ミリメートル『ほどで、赤褐色をした数枚の芽鱗に包まれている』。『ブラジルではこの植物は日本のメギとして広く知られており、生垣や花壇で広く栽培されてい』るという。『日本では、本州の東北地方南部から、四国と九州にかけての温帯地域に分布する』。『山地から丘陵にかけての林縁や原野に生育し、蛇紋岩の地でもよく生育する。自然分布の他、人の手によって植栽されて生垣としての庭木や公園樹として利用されている』。『秋田県では分布域が限定され、個体数が希少であることからレッドリストの絶滅危惧種IB類(EN)の指定を受けていて、森林伐採や道路工事による個体数の減少が危惧されている。新潟県と鹿児島県では、絶滅危惧II類(VU)の指定を受けている。大阪府では準絶滅危惧の指定を受けている。国レベルではレッドリストの指定を受けていない』。『葉が赤紫色の栽培品種(アカバメギ)』(Berberis thunbergii 'Atropurpura' )『があり、黄金葉や歩斑入りの栽培品種もある』。以下の二種の「近縁種」が載る。

オオバメギ(大葉目木)Berberis tschonoskyana (『メギよりも葉が大きく、棘が少なく、枝に稜がない』)

ヘビノボラズ(蛇登らず)Berberis sieboldii (『葉に鋸葉があり、湿地周辺のやせ地に生育する』)]

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