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2024/08/03

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 鐵刀木

 

Tagayasan

 

たがやさん  鐵刀木

       【俗云太加也左牟】

鐵樹

       桄榔木亦名
       鐵樹與此不
       同

 

木本𤲿譜云鐵樹産廣中色儼類鐵其枝先穿結甚有𤲿

[やぶちゃん字注:私の原本と同じ早稲田大学図書館「古典総合データベース」を見て戴きたいが、まず、二箇所の「𤲿」は「グリフウィキ」のこれに近いが、表示出来ないので、個人的により近いと思う、「畫」の異体字「𤲿」を採用した。次に、★「丫」の字であるが、これはやはり見て貰うと判る通り、英語の「Y」のような、或いは、「了」の草書のような字である。漢語では「丫」が最もそっくりである。しかも、この漢字は、「ふたまた・木のまた」及び「総角(あげまき)・角髪(つのがみ)・昔の子どもの髪形」の意であり、前者が挿絵の枝の様子にマッチするのであった。しかし、国立国会図書館デジタルコレクションの中近堂版を見ると、これ、悩ましいことに、「了」と活字化しているのである。当初、私は枝の「了(をは)り」の意で、この「了」にしようと、一時は決めかけたのだが、「了」と採るには、上部の左右が、草書の崩しのようになっているのが、甚だ不審なのであった。今まで、このような崩し字形を、私は本書の原本で他に見たことがないので、『「了」ではない。』と感ずるに至った。そこで、東洋文庫の訳を見ると、この前後は、『その枝尖(えださき)はぼろを綴り合せたようになっていて』とあるのであった。しかし、「尖」の異体字には、この「丫」のような字は存在しないのである。そこで考えたのは、まさに「さき」=「先」であった。実は「先」の、異体字には「グリフウィキ」のこれがあり、下方の「(u2ff1-u4e37-u5140-01)」、及び、次の「(u2ff1-u4e37-u5140-01-var-001)」の、よりスリムな異体字があることが判明した。これなら、「尖」を「さき」とルビせずに、普通に枝先」と読めると考えた。しかし、これらの「先」の異体字は、どれも五画ほどで、原本の「了」の崩し字のような文字に当て嵌めるには、スマートさがない字体で画数も多過ぎ、やはり、無理がある、と結論した。されば、初回に示した通り、「丫」の「木の股」の意を採ることに決したものである。

意又聞有鐵樹花葉宻而花紅想亦一種也

△按鐵刀木今出於廣西木紫黒宻理爲噐甚美貴重之

 

   *

 

たがやさん  鐵刀木《てつたうぼく》

       【俗、云ふ、「太加也左牟」。】

鐵樹

       「桄榔木《くわうらうぼく》」も亦、
       「鐵樹」と名づく≪も≫、此れとは、
       同じからず。

 

「木本𤲿譜」に云はく、『鐵樹《たがやさん》、廣中《かうちゆう》に産す。色、儼(さなが)ら、鐵に類《たぐ》ふ。其の枝丫《えださき》、穿結《せんけつ》≪し≫、甚≪だ≫、𤲿意《ぐわい》[やぶちゃん注:画趣。]有り。又、聞く、「鐵樹花、有り。葉、宻(こまか)にして、花、紅なり。」≪と≫。想ふに、亦、一種あらんや。』≪と≫。

△按ずるに、鐵刀木、今、廣西に出づ。木、紫黒。宻理《こまやかなるきめ》≪にして≫、噐《うつは》に爲《つく》るに、甚だ、美にして、之れ、貴重す。

 

[やぶちゃん注:これは、タガヤサン(「鉄刀木」。中文名「鐵刀木」。)、

双子葉植物綱マメ目マメ科ジャケツイバラ(蛇結茨)亜科センナ属タガヤサン Senna siamea

である。当該ウィキを引く。『広葉樹。タイ、インド、ミャンマー、インドネシアなどの東南アジア原産』。『唐木のひとつで、代表的な銘木である。ビルマ語ではメーザリー』『と呼ぶ』。『荒地にも耐え、比較的造林が容易な』ため、『アジアに広く栽培されている。明治時代には台湾でも栽培された』。但し、『これらは木材としての使用というよりは、小さいうちに伐採され、燃料として使用されることが多い』。『高さ』二十メートル、『直径』四十センチメートル『を超えるものは稀。花は鮮黄色の五弁花で芳香がある。美しい花を咲かせるものもあり、熱帯地方では庭木や街路樹としても用いられる』。『木材は硬く、耐久性がある。気乾比重は』〇・八〇『前後。木材の重くて硬いさまが、まるで「鉄の刀のようだ」ということから「鉄刀木」の漢字が当てられる。なお、「たがやさん」という名称の由来は定かではない。一説に、フィリピン語の「tambulian」が変化したものとされる』。『柾目として使用する際に独特の美しい目が見られる。薬品で色抜きし、明るい色にして使用される。乾燥に狂いやすく、加工は困難。腐食に強い。なお、加工する際に出る木屑は目を刺激するので、加工時には注意が必要。最も良質とされるのは、ビルマ近辺産のものであるが、現在は資源保護のため輸出禁止となっている』。『タガヤサンには表面に黒褐色の面と』、『少し淡い金色を帯びた筋が通ることによる縞模様がみられ、この金色を帯びた黄色い筋は横断面にも見られる。ウェンジなどの類似樹種(後述)は、木目こそ似ているが、無塗装での色合いと柾目面での導管に加え、この黄色の筋が見られない。また、ウェンジなどの類似樹種は、タガヤサンに比べて加工性が良い』。『木材は家具、仏壇、数珠、建築材(床柱、内装)、ステッキ、木刀、ブラシの柄など、主に装飾的な用途に用いられる。腐りにくいことから、家が長く続くということに掛けて床柱に使用される。辺材は燃料用にしか役立たない』。『東南アジアの一部の地方(特にタイとラオス)では、生または塩水に漬けた花と葉を食用にする。タガヤサンを用いた料理の代表的なものに、ゲーン・キー・レッ』『(gaeng-khi-lek)という汁物がある。ゲーン・キー・レッは、水煮した後の葉や花に、焼いてほぐしたカツオの身、あるいは、焼いた豚肉を入れ、ナムプリック・ゲーンと呼ばれるペースト状のタイ・カレーの素、ココナッツミルク、ナンプラー、砂糖などで味付けをして煮込んだものである。具が多く、時にペーストに近いくらいの形状で、見た目には茶色のほうれん草のカレーのようである。味は非常に辛いが、タガヤサンの苦味とココナッツミルクのまろやかさ、また、焼いたカツオの身の香ばしさがある。この汁物は便通にも効くとされ、たくさん食べると、翌朝には効果が現れるという。タイの南部などでは、ほぼ日常食として飯屋の店頭に鍋に入って並ぶが、バンコクなどでは』、あまり、『目にしない田舎料理である』。以下、「代用材」の項。『一般的には同じマメ科だが』、『属の違うミレシア属』『 Millettia 』『が代用材・同類材として用いられる。これらには以下の学名分類がある』。

Millettia leucantha(シノニム: Millettia pendula :『東南アジア産で』、『ムラサキタガヤサン(紫鉄刀木)やチンウィン(ビルマ語:ティンウィン、文献によっては thinwin とラテン文字表記)と呼ばれる。ラオス、ミャンマー、タイに生育』)

Millettia laurentii(アフリカ産でウェンジ(Wenge)・ジゲラ(Dikela)・パリサンドルドコンゴ(Palisandre du congo)などと呼ばれるが』、『指すものは全て同じ。 African RosewoodやFaux Ebonyなどという商品名がつけられる事もある』。旧『ザイール(コンゴ民主共和国)に生育』し、『近年では代用品としてではない』、『それ自身の認知度が上がってきている』)

Millettia stuhlmannii(『パンガパンガ』。『タンザニア産』)

また、「維基百科」の「鐵刀木」を見ると、別名として『泰國山扁豆・暹羅槐』(しゃむえんじゅ)『・暹羅決明・孟買薔薇木・孟買黑檀・鐵路木・挨刀樹・黑心樹(雲南)等』が掲げられてあり、本種は『「黒い芯の木」としても知られている。伝説によれば、雲南省のある村の首長が、生前に多くの悪行を犯し』、『その行為を悔い改め』、死後、『村人に伐採させる木に変じたという』とあり、また、『元来はマレーシア・タイ・ミャンマー・インド南部・スリランカが原産地であったが』、『現在はマレーシア・タイ・ミャンマー・インド南部・スリランカ』中国。台湾南部などに分布している。中国国内では海南・広西・広東・香港・福建・雲南などに分布している。本種は光と温度を好み、乾燥・アルカリ土壌や、公害に強い植物である。日陰や冷害・霜の強い場所では生育できない。土壌要件が緩く、山地や開けた平地で、水はけがよい土地であっても、よく育つため、観賞用や緑化目的で広く植栽されることが多い』とあった。

「桄榔木《くわうらうぼく》」小学館「日本大百科全書」の「アレンガ」(同樹種群の属名)によれば、単子葉植物綱ヤシ目ヤシ科クジャクヤシ亜科クロツグ属 Arenga の種群を指す。熱帯アジアに十六種、日本に二種の自生種がある。幹は単幹直立のものと、萌芽株立ちのものがある。葉は羽状葉で、表面は暗緑色、裏面は灰白色、葉鞘は黒色で繊維質である。雌雄同株で単性花をつける。肉穂花序は橙黄(とうこう)色で、楕円形の核果をつける。単幹種は結実後、枯死するが、株立ち種は若い幹に交代する。代表種にサトウヤシ(sugar palm:Arenga pinnata とクロツグ Arenga engleri がある。サトウヤシは、幹の高さ十二~十七メートル、直径三十センチメートル、葉は長さ六~七メートル。葉軸は斜め上に直伸し、葉鞘の繊維は太くて強く、箒に加工される。インドを中心に東南アジアに自生する。サトウヤシは砂糖のとれるヤシの俗称でもあり、産業的に栽培されるのはオウギヤシ Borassus flabellifer 、サトウナツメヤシ Phoenix sylvestris 、チリーヤシ Jubaea spectabilis の三種である。自生地によって、酒ヤシ toddy palm とも呼ばれる。花序の柄の切り口から出る樹液を、すばやく煮詰めてとれる糖蜜からは、砂糖を作る。樹液のままで放置すると「ヤシ酒」となり、蒸留酒にする。クロツグは日本原産種のヤシで、株立ち幹の高さは二メートル以下、葉の長さは三メートル以下の小形のヤシである。小葉の長さは四十センチメートル、幅二・五センチメートル。観賞用とされるが、摂氏零度くらいでも越冬する。南西諸島・台湾に自生する。コガネクロツグ Arenga tremula は、クロツグより種子が小さく、沖縄・台湾に自生する。なお、ウィキの「クロツグによれば、クロツグという『名称については、ツグがシュロの意味であり、幹を覆う繊維が黒いことによる』とあった。

「木本𤲿譜」東洋文庫の巻末の「書名注」を参考にすると、まず、「木本花詩譜」に『画譜』の中の『木本花譜』一巻のことであろうか。』とした次に、「木本画譜」を挙げ、その『『木本花譜』と同じものを指すか。』とする。而して、「画譜」は複数回既出既注で、再掲すると、「八種畫譜」。明の黄鳳池の編。「唐詩五言畫譜」・「新鐫六言唐詩畫譜」・「唐詩七言畫譜」・「梅竹蘭菊四譜」・「新鐫木本花鳥譜」・「新鐫草本花詩譜」・「唐六如畫譜」・「選刻扇譜」から成るものである。

「廣中《かうちゆう》」現在の広東省+海南省(海南島)と、東の広西チワン族自治区の広域(グーグル・マップ・データ)。

「穿結」破れていたり、結び合わせてあったりすることを言う。Senna siamea branches leaves」のグーグル画像検索をリンクさせておく。

「廣西」前の広西チワン族自治区に同じ。但し、先に「維基百科」の「鐵刀木」で示した通り、現在の広東省に、現在も分布する。]

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