「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 奴柘
いぬくは
奴柘
本綱奴拓生山野此樹似柘而小有刺葉亦如柘葉而小
冬不凋可飼𧑯
[やぶちゃん字注:「𧑯」は「蠶」(=蚕)の異体字。]
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いぬくは
奴柘
「本綱」に曰はく、『奴拓《ドシヤ》、山野に生《しやうず》。此の樹、柘《シヤ》に似て、小《しやう》にして、刺《とげ》、有り。葉≪も≫亦、柘≪の≫葉のごとくにして、小さし。
冬≪も≫凋まず。𧑯《かひこ》を飼ふべし。
[やぶちゃん注:「奴柘」(現代仮名遣「どしゃ」)は、「東海国立大学機構学術デジタルアーカイブ」の「伊藤圭介文庫 錦窠図譜の世界」の「桑科」の「クワクワツガユ」の画像に(手書き稿本。下方に電子化されているものを参考に画像になるべく合わせて電子化した。本画像は所有権の関係上、無断では二次利用することが出来ない。伊藤圭介(享和三(一八〇三)年~明治三四(一九〇一)年)は幕末から明治の本草学者・博物学者。尾張の町医者の家に生まれた。長崎に遊学し、シーボルトに師事し、「泰西本草名疏」を著わして、リンネの植物分類法を紹介した。明治二一(一八八八)年には日本で最初の理学博士となった。著作に「救荒植物便覽」「小石川植物園草木目錄」など多数。当該ウィキもある)、
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雜木鈎
ソンノイゲ
筑前ノ産
葉两對
葉間ニ刺アリ
虎刺ノ如シ
クワクワツガユ 或云和活ハ人ノ名其人ノ家ニ
植テ名ナシ仍テ其持主ノ名ヲ以テ
和活カ柚ト呼トゾ
クワクワツガユ クスドギ江戶 ユキノキ
クストインゲ ユスノキ
クストキト混ス
九州辺ニ多小樹ニシテ枝多ク葉宻ニシテ葉毎ニ刺アリ木大
ニナレバ葉モ大ナリミカンノ葉ニ似テ小澤アリ冬ハ葉ナシ
大和本草ニ曰和活カ柚 葉ハ茶ニ似タリ其樹枝多シ、實ハ
楊梅ニ似テ微大也熟スレバ黄ナリ味甘シ柚ノ類ニハアラズ
世俗枳椇ニ對乄称漢名未詳
江戶岩崎源蔵奴柘ニ充ツ
此木ヲ以テ櫛ニツクルト云
一葉一針大樹ニナレバ皀莢ノ如ク刺多四時不萎
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とあって、内容追記で、『名称:カカツガユ, 学名: Maclura cochinchinensis (Lour.) Corner var. gerontogea (Sieb. et Zucc.) Ohashi』(学名が斜体でないのはママ)とあった。則ち、本項の「奴柘」は、
双子葉植物綱バラ目クワ科ハリグワ連ハリグワ属カカツガユ Maclura cochinchinensis var. gerontogea
である。「熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース」の「カカツガユ」のページに、現行の中文名を『构棘』とし、花期は五月、『生薬名』を『穿破石(センハセキ)』とし、『薬用部位』は『根』、その薬理『成分』を『キサントン類(gerontoxanthone A-C)』と『フラボノイド(morin)』とする。『産地と分布』として(以下、コンマ・ピリオドを句読点に代えた)、『山口県、四国、九州、沖縄、および台湾、中国南部に分布し、暖地に生える。』とあり、『植物解説』の項で、『常緑木本で、蔓状に伸びて』十五メートル『ほどに達することもあるが、普通は』三メートル『内外。葉腋から枝の変形したトゲが出る』。十五~二十五センチメートル(学名でグーグル画像検索すると、外国の画像であるが、恐ろしく長い刺の写真が見られるので、これはトゲの長さである)。『葉は互生し』、『有柄、葉身は長楕円形または倒卵状長楕円形.葉腋から』一、二『個の花序を出し、果実は黄熟し』、『食べられる。』とある。『薬効と用途』の項によれば、『肺結核、黄疸型肝炎、肝臓や脾臓の腫れ、リウマチ性の腰脚痛などに用いられる。骨折や打撲などには煎液を外用する。中国で薬用にされる。』とし、最後に、『果実は甘く、ヤマミカンの別名がある。』とあった。また、「土佐清水市」公式サイト内の「観光地情報」の「貝ノ川のカカツガユ自生地(県①)」で、『カカツガユ(和活が柚)は、本州(山口県)、四国南部、九州、沖縄の沿海部の山地に自生するクワ科ハリグワ属の常緑植物でトゲのある幹は、つる状になり他の樹木にからみついて生長しヤマミカン・ソンノイゲの別名があります。雌雄異株で花は夏に咲き果実はヤマモモ状で』十『月下旬赤橙色に熟します』。『名前のカカツ(和活)は、ホオズキの古名「カガチ」が訛った「カカツ」の当て字で、ユ(柚)は赤黄色に熟した実をホオズキに似た柚に例えて名付けられたと言われています』。『恩神社境内の自生地には、かつて目通り周径が』三十センチメートル『を超える』三『本の巨木がありましたが、これらについては残念ながら』、『枯死等により全て伐採されてしまいました。現在は、この自生地において数本の幼木が順調に生長を続けています』とあって、やっと漢字表記と、不思議な和名の由来が判った。
さて。良安が本項の標題「奴柘」に附した和名「いぬくは」=「いぬぐわ」は、アウトである。「犬桑」は、
✕ミズキ目ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属ヤマボウシ Cornus kousa subsp. kousa
の別称だからである。因みに、この種には別種と紛らわしい異名が多い。当該ウィキによれば、漢字表記は『山法師』・『四応花』(中文名は「四照花」)であるが、『和名ヤマボウシの由来は、中心に多数の花が集まる頭状の花序を法師(僧兵)の坊主頭に、花びらに見える白い総苞片を白い頭巾に見立てたもので、「山に咲く法師」(山法師)を意味するといわれている』。『果実が食用になり』、『クワの実に見立てたことから、別名でヤマグワ』(☜)『とよぶ地域も多く』、『赤い実からヤマボウ(山坊)』『やヤマモモ(山桃)』(☜)、『実の味からワランベナカセ(童泣かせの意)』『の地方名でよばれるところもある。実の形からついたと思われる別名に、ダンゴギ(団子木)、ヤマダンゴ(山団子)、ダンゴバラ(団子薔薇)、ダンゴボク(団子木)、シゾウアタマ(地蔵頭)というものもある』。『ヤマボウシの日本一の名所といわれる箱根』『では昔「クサ」と呼ばれていたので学名の種小名に kousa とつけられた』とある。
「𧑯《かひこ》を飼ふべし」サイト「奄美群島生物資源Webデータベース」の「カカツガユ」の『食用』の項に、『果実を生食または醸造に利用する。葉は蚕の飼育に利用する』とあった(この第二文、個人的には、直ぐ後の『加工と利用』の方に置いた方がいいように思う)。]
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