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2024/08/21

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 胡頽子

 

Nawasirogumi

 

ぐみ     蒲頽子 盧都子

       雀兒酥 半含春

胡頽子  黃婆

       【和名久美

        一名毛呂奈里】

ウヽ トイ ツウ 【本朝式云諸生子】

[やぶちゃん注:この最後の割注の「本朝式」は「延喜式」の誤りであるので、訓点では、訂しておいた。

 

本綱胡頽子生平林閒樹髙六七尺其枝柔軟如蔓其葉

微似棠梨長狹而尖靣青背白俱有細㸃如星老則星起

如麩經冬不凋春前生花朶如丁香蒂極細倒垂正月乃

敷白花結實小長儼如山茱萸上亦有細星斑㸃生青熟

紅立夏前采小兒食之當果味酸濇核亦如山茱茰伹有

八稜軟而不堅核内白綿如𮈔中有小仁

子【酸濇】止水痢 根煎水治吐血不止者

葉【同前】能治喘咳劇者效如神甚者服藥後胸上生

 癮疹作痒則瘥也虛甚加人參等分名清肺散

  夫木 小山田の苗代くみの春過て我か身の色に出にけるかな爲家


木半夏【一名四月子又云野櫻桃】 本綱云其樹葉花實及斑氣味

 並與盧都同伹枝強硬葉微團而有尖其實圓如櫻桃

 而不長爲異耳立夏後始熟故俗呼爲四月子其核亦

 八稜大抵與胡頽子一類二種也

△按胡頽子大抵有三種其葉與實皆有少異耳【一種】當

 春月種苗時實熟大如小棗者名苗代胡頽子【一種】五

 月實熟大如棗而莖長五六寸下垂【一種】九月實熟小

 其大如櫻子而成簇

 

   *

 

ぐみ    蒲頽子《ほたいし》 盧都子《ろとし》

      雀兒酥《じやうじそ》

      半含春《はんがんしゆん》

胡頽子 黃婆《くわうばだい》

       【和名、「久美《ぐみ》」。

        一名、「毛呂奈里《もろなり》」。】

ウヽ トイ ツウ 【「延喜式」に云ふ、「諸生子《もろなり》」。】

 

「本綱」に曰はく、『胡頽子《こたいし》は、平《ひらたき》林《はやし》の閒《あひだ》に生ず。樹の髙さ、六、七尺。其の枝、柔軟にして、蔓のごとく、其の葉、微《わづか》に「棠梨(からなし)」に似て、長く狹《せばく》して、尖《とが》り、靣(おもて)、青く、背(うら)、白し。俱に、細《ほそき》㸃、有り、星のごとく、老《らう》する時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則ち、星、起《おこ》り、麩(むぎこ)のごとし。冬を經て、凋まず、春≪の≫前、花≪を≫生ず。朶《だ》[やぶちゃん注:花のついた枝。]≪は≫、「丁香《ちやうかう》」のごとし。蒂《へた》、極めて細くして、倒《さかさ》まに垂(たる)ゝ。正月、乃《すなはち》、白≪き≫花を敷《し》く。實を結ぶ。小≪さく≫長≪くして≫、儼《おごそか》に≪して≫、「山茱萸《さんしゆゆ》」のごとし。上に亦、細《こまか》なる星、有りて、斑㸃《はんてん》す。生《わかき》は、青く、熟せば、紅《くれなゐ》なり。立夏の前、采りて、小兒、之れを食ふ。果《くわ》に當《あ》つ。味、酸《すつぱく》、濇《しぶし》。核《たね》も亦、「山茱茰」のごとし。伹《ただし》、八稜(やかど)、有り、軟《やはらか》にして、堅からず。核の內《うち》、白綿《しろわた》ありて、𮈔(いと)のごとし。中《なか》に小≪さき≫仁《にん》、有り。』≪と≫。

『子《み》【酸、濇《しよく》。】水痢を止む。』≪と≫。『根は、水に煎じて、吐血≪して≫止まざる者を治す。』≪と≫。

『葉【同前。】は、能く喘-咳《せき》の劇(はげ)しき者を治す。效あること、神のごとし。甚だしき者は、藥を服して後《のち》、胸の上に、癮(かざ)[やぶちゃん注:腫物(はれもの)。]・疹(ぼろし)[やぶちゃん注:小さな吹き出物。]を生ず。痒(かゆがり)を作(な)せば、則ち、瘥(い)ゆなり。虛、甚だしくば、人參を加へ、等分にして、「清肺散」と名づく。

  「夫木」

    小山田の

     苗代(なはしろ)ぐみの

        春過ぎて

       我が身の色に

      出(いで)にけるかな 爲家


木半夏《もくはんげ》『【一名、「四月子《しがつし》」。又、云ふ、「野櫻桃《やわうたう/のゆすら》」。】』「本綱」に云はく、『其の樹、葉・花・實、及び、斑《まだら》・氣味、並びに、「盧都(ぐみ)」に同じ。伹《ただし》、枝、強≪く≫硬≪くして≫、葉、微《やや》團《まろく》して、尖《とがり》、有り。其の實、圓《まどかに》して、「櫻桃(ゆすら)」のごとくにして、長からざるを、異と爲《な》すのみ。立夏の後、始めて、熟す。故に、俗、呼んで、「四月子」と爲す。其の核《たね》、亦、八稜≪あり≫。大抵、「胡頽子」と、一類≪にして≫、二種なり。』≪と≫。

△按ずるに、胡頽子、大抵、三種、有り。其の葉と實と、皆、少異《しやうい》有るのみ。【一種は、】春月、苗を種《うう》る時に當≪りて≫、實、熟し、大いさ、小≪さき≫棗《なつめ》のごとくなる者、「苗代胡頽子(なはしろぐみ)」と名づく。【一種は、】五月に實、熟して、大いさ棗のごとくにして、莖、長く、五、六寸、下《さが》り垂《たる》る。【一種は、】九月、實、熟して、小《ちいさ》し。其の大いさ、櫻《さくら》の子(み)のごとくにして、簇《むらがり》を成す。

 

[やぶちゃん注:「胡頽子」は、グミ属 Elaeagnus ではあるが、この漢語=中文名は、その中の、本邦にも植生する、

双子葉植物綱バラ亜綱バラ目グミ科グミ属ナワシログミ Elaeagnus pungens

を指す。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。和名漢字は『苗代茱萸』で、『別名タワラグミ、トキワグミ。 盆栽としてはカングミの名で呼ばれることが多い』。『和名「ナワシログミ」は、稲の苗代』『を作る』四~五月頃に『果実が熟すグミで』ある『ことから名付けられている。中国名は「胡頹子」』(「維基百科」の「胡颓子」を見よ。但し、記載は極めて乏しい)。『日本の本州中南部(関東地方、伊豆半島以西)、四国、九州、および中国中南部に分布する。暖地に多く、海岸近くの山野や林縁に生える』。『常緑広葉樹の低木で、高さは』二・五『メートル』『ほどになる。茎は立ち上がるが、先端の枝は垂れ下がり、他の木にひっかかって』蔓『植物めいた姿になる。樹皮は灰褐色で皮目や縦筋があり、太いものは縦に裂ける。枝は褐色である。枝や葉の腋にはトゲがあり、若い枝は褐色の鱗状毛で覆われている。このトゲは枝の変異である』。葉は互生し、葉身は長さ』五~八『センチメートル』『の楕円形で、質は厚くて硬い。葉縁は全縁で』『多少』、『波打つ。新しい葉の表面には一面に星状毛(鱗状毛)が生えているため、白っぽい艶消しに見えるが、成熟するとこれが無くなり、ツヤツヤした深緑になる。裏面には褐色から銀色の鱗片が多い』。『開花期は秋』の十~十一月。『葉腋に数個の花をつけ、萼筒は淡褐色で長さ』六~七『ミリメートル』。『果期は翌年の』五~六月頃。『果実は長さ』一・五センチメートル『ほどの長楕円形をしている』。『冬芽は裸芽で、幼い葉が複数集まり、褐色の鱗状毛に覆われている。側芽は互生する。葉痕は半円形で、維管束痕が』一『個つく』。『公園木、海岸の砂防用、庭木として植栽されている。果実(正確には偽果)は春に赤っぽく熟し食べられる』。『葉にはウルソ酸(ursolic acid)オレアノリン酸(oleanolic acid)、クマタケニン(kumatakenin)、ルペオール(lupeol)、β-シトステロール(β-Sitosterol)、3,7-ジメチルカエンフェロール(3,7-Dimethyl kaempferol)などの成分が含まれる。中国では生薬として「胡頽子」(こたいし)の名で』、「本草綱目」・「本草經集註」『などに記載がある』。「本草綱目」は『葉の性質を「酸、平、無毒」とし、咳、喘息、喀血、出血、癰疽に効用があるとする』とある。因みに、これは「本草綱目」では、まず、『子氣味酸平無毒』とし、次いで、『根氣味【同子】』続き、『葉氣味【同子】』とあるのである。本ウィキの記事は、当該種の樹木の広義の「利用」の項にあるのだから、ここは子(み)・根・葉の総てが、そうした基本性質を持ち、それぞれに薬効が書かれてあるのだから、書き方としては、甚だ不公平にして不全であると言わざるを得ない。

 なお、本邦には、他に夏に熟する変種ナツグミ Elaeagnus multiflora var. multiflora (後述する)、秋に熟するアキグミ Elaeagnus umbellata  、蔓性常緑で初夏に熟するツルグミ Elaeagnus glabra 、ナツグミに似て大型の食用に栽培される変種トウグミ Elaeagnus var. hortensis 及び、同様の変種ダイオウグミElaeagnus var. gigantea など、約十五種がある。商業的にはあまり利用されないが、庭などで栽培されているのを、よく見かける。

 「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「木之三」「灌木類」の「胡頽子」([088-32a]以下)のパッチワークである。

「棠梨(からなし)」中国では、バラ亜綱バラ目バラ科ナシ亜科ナシ属Pyrus betulifolia(中文名「杜梨」。異名に「棠梨」「甘棠」)を指す。本邦では、現行、カラナシで「奈」「唐梨」と漢字表記するものは、ナシ類ではなく、「リンゴ」(良安の生きた時代は、現在のバラ科サクラ亜科リンゴ属セイヨウリンゴ Malus domestica は伝来しておらず、日本に古くに中国経由で齎されたリンゴ属ワリンゴ Malus asiatica しかなかった)、或いは、「カリン」(バラ科シモツケ亜科ナシ連ナシ亜連カリン属カリン Pseudocydonia sinensis 当該ウィキによれば、『日本への伝来時期は不明であるが』、『江戸時代に中国から渡来したといわれる説もある』とあるので悩ましい)を指すが、これ以上、突っ込むと底なし沼になるので、悪しからず。

「丁香《ちやうかう》」これは、所謂、「クローブ」(Clove)のことで、バラ亜綱フトモモ目フトモモ科フトモモ属チョウジノキ Syzygium aromaticum である。

「山茱萸《さんしゆゆ》」ミズキ目ミズキ科ミズキ属サンシュユ亜属サンシュユ Cornus officinalis 。先行する「山茱萸」を参照されたい。

「水痢」固形物のない水様の下痢。

「癮(かざ)・疹(ぼろし)」既に割注したが、東洋文庫訳では、この二字を熟語として『癮疹(ぶつぶつ)』とする。

「清肺散」不詳。漢方薬に「清肺湯」はあるが、複数調べたが、本種を含まない。

「夫木」「小山田の苗代(なはしろ)ぐみの春過ぎて我が身の色に出(いで)にけるかな」「爲家」既注の「夫木和歌抄」に載る藤原為家の一首で、「卷二十九 雜十一」に所収する。「日文研」の「和歌データベース」で確認した(同サイトの通し番号で「14068」)。

「木半夏《もくはんげ》」先に出した変種ナツグミ Elaeagnus multiflora var. multifloraの中文名。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『日本の本州関東・中部地方(福島県から静岡県の太平洋側)、四国に分布し、山野に自生する。庭などにも植えられる』。「維基百科」の同種の「木半夏」には、『東アジア原産で、ヨーロッパや北アメリカでは園芸植物として利用されており、アメリカ東部では帰化種となっている』とある)。『落葉広葉樹の小高木。枝はよく分枝する。樹皮は暗灰褐色で皮目があり、若木のうちは』、『なめらかで皮目が多いが、太くなると縦に裂ける。若い枝には褐色を帯びた鱗状毛が密生し、赤褐色に見える。果実や葉の表面には、うろこ状の毛がある。葉は互生し、長さ』三~十『センチメートル』『の長楕円形から倒卵状長楕円形で、表面にある灰白色の鱗片は』、『やがて』、『脱落するが、裏面には灰白色と褐色の鱗片が残る』。『花期は』四~五月頃で、『葉のつけ根に』一、二『個の淡黄色の花が垂れ下がって咲く。花弁に見えるのは萼(萼筒)で、長さは』七~八『ミリメートル』『あって先端が』四『裂する』。『果期は』五~七月で、『果実は偽果で、長さ』十二~十二ミリメートル『の広楕円形をしており、長さ』二~五センチメートル『ほどの果柄がついて』、『アキグミよりも長い。果実は赤く熟すと、少し渋いが食べられる』。『冬芽は裸芽で』、『幼い葉が』、『複数』、『集まり、褐色の鱗状毛が密生する。枝先の頂芽は側芽よりもやや大きく、側芽は枝に互生する。葉痕は半円形か三角形で、維管束痕が』一『個』、『つく』。以下、「品種」の項に、

変品種ホソバナツグミ Elaeagnus multiflora var. multiflora f. multiflora(狭義のホソバナツグミ)

変種トウグミElaeagnus multiflora var. hortensis(本種はよく植栽されており。ナツグミ・トウグミは、よく似ているが、『葉の表をルーペで拡大し』、『鱗状毛があればナツグミ、星状毛があればトウグミである』)

ダイオウグミ Elaeagnus multiflora var. gigantea(『特に果実が大きい。ビックリグミともいう。鑑賞用兼食用(果実)として栽培されることが多い』)

とあった。

「盧都(ぐみ)」「維基百科」の「胡頹子」の異名に『盧都子』を確認出来る。

「櫻桃(ゆすら)」この良安の読みは――完全なるハズレ――であるので、注意。本邦で「ゆすら」と言った場合は、

×バラ目バラ科サクラ属ユスラウメ Prunus tomentosa当該ウィキによれば、『中国北西部』・『朝鮮半島』・『モンゴル高原原産』であるが、『日本へは江戸時代初期にはすでに渡来して、主に庭木として栽培されていた』とある)

を指すが、中国語で「櫻桃」は、

○サクラ属カラミザクラ Cerasus pseudo-cerasus(唐実桜。当該ウィキによれば、『中国原産であり、実は食用になる。別名としてシナミザクラ』『(支那実桜)』・『シナノミザクラ』・『中国桜桃などの名前を持つ。おしべが長い。中国では』「櫻桃」『と呼ばれ』、『日本へは明治時代に中国から渡来した』とあるので、良安は知らない

である。「維基百科」の「中國櫻桃」をリンクさせておく。

『【一種は、】春月、苗を種《うう》る時に當≪りて≫、實、熟し、大いさ、小≪さき≫棗《なつめ》のごとくなる者、「苗代胡頽子(なはしろぐみ)」と名づく』既に注した、ナワシログミ Elaeagnus pungens

「【一種は、】五月に實、熟して、大いさ棗のごとくにして、莖、長く、五、六寸、下《さが》り垂《たる》る」同前で、変種ナツグミ Elaeagnus multiflora var. multiflora

「【一種は、】九月、實、熟して、小《ちいさ》し。其の大いさ、櫻《さくら》の子(み)のごとくにして、簇《むらがり》を成す」同前で、ツルグミ Elaeagnus glabra 。]

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