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2024/08/11

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 柘

 

Hariguwa

 

やまくは  和名豆美

       俗云山桑

【音射】

      俗以柘字爲黃

シヱヽ   楊木訓甚非也

 

本綱柘山中有之喜叢生幹疎而直葉豊而厚團而有尖

其葉飼蠶取𮈔謂之柘𧑯然葉硬不及桑葉其木裏有紋

[やぶちゃん字注:「𧑯」は「蠶」(=蚕)の異体字。]

可旋爲噐或作琴瑟清響勝常弓人取材以柘爲上其實

[やぶちゃん字注:「弓」は「グリフウィキ」のこの異体字だが、表示出来ないので、「弓」とした。以下も同じ。]

狀如桑子而圓粒如椒名隹子【音錐】其木染黃赤色謂之柘

[やぶちゃん字注:「隹」は、原文では、どう見ても「佳」にしか見えないが、それでは、訓読不能であり、東洋文庫が『隹』としており、それでないと直下の音が「錐」と一致を見ないので、「隹」とした。因みに、「漢籍リポジトリ」は「木之三」の「柘」では([088-10a]以下の五行目の後半)「佳」としているのだが、「維基文庫」の「本草綱目」では、「隹」としている。

黃天子所服也柘木以酒醋調礦灰塗之一宿則作間道

烏木文物性相伏也

柘白皮【甘温】能通腎氣治耳鳴耳聾補勞損虛羸洗目令

 明又能治夢遺【釀酒用之】

△按柘阿州土州山中有之以爲弓木黃色

 農政全書云柘木堅勁皮紋細宻上多白㸃枝條多有

 刺葉比桑葉甚小而薄色頗黃淡葉稍皆三叉其椹亦

 飼蠺 又有綿柘刺少葉似柿葉微小枝葉閒結實狀

[やぶちゃん字注:「蠺」は「蠶」の異体字。実は原本では最上部は「夫夫」になっているが、そのような異体字はないので、最も近い「蠺」に代えた。]

 似楮桃而小熟則亦有紅蘃味甘酸

[やぶちゃん字注:「蘃」は「蕋・蕊・蘂」の異体字。]

 

   *

 

やまぐは    和名、「豆美《つみ》」。

        【俗、云ふ、「山桑《やまぐは》」。】

【音「射」。】

        俗、「柘」の字を以つて、「黃楊木

シヱヽ     (つげ《のき》)」の訓を爲≪すは≫、

        甚だ、非なり。

 

「本綱」に曰はく、『柘《シヤ》は、山中、之れ、有り。喜《このん》で、叢生す。幹《みき》、疎(うと)くして、直《なほ》し。葉、豊《ゆたか》にして、厚し。團《まろ》くして、尖《とがり》、有り。其の葉、𧑯《かひこ》を飼《かひ》て、𮈔《いと》を取る。之れを「柘𧑯《タクサン》」と謂ふ。然《しかれ》ども、葉、硬くして、桑の葉に及ばず。其の木の裏《うち》、紋、有り、旋(さ)して、噐《うつは》に爲《す》るべし。或いは、琴《きん》・瑟《しつ》に作れば、清響《すずしきひびき》、常に勝《まさり》たり。弓人《きうじん》、材を取るに、柘を以つて、上と爲《なす》、其の實、狀《かたち》、桑の子《み》のごとくにして、圓《まろく》、粒、椒《さんせう》のごとし。「隹子《スイシ》」と名づく【音「錐」。】。其の木、黃赤色を染む、之れを「柘黃《シヤワウ》」と謂ふ。天子の服する所なり。柘の木、酒・醋《す》を以つて、礦灰《カウカイ》[やぶちゃん注:石灰のこと。]を調《ちやうじ》て、之れを塗る。一宿する時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則ち、間-道-烏《しまくろ》の木の文《もん》を作《な》す。物性、相《あひ》伏《ぶく》すなり。』≪と≫。

『柘白皮【甘、温。】能く、腎氣を通し、耳鳴《みみなり》・耳聾《みみしひ》を治す。勞損虛羸《らうそんきよるい》を補す。目を洗≪へば≫、明《めい》ならしめ、又、能く、夢遺《むい》[やぶちゃん注:夢精のこと。]を治す【酒を釀《かも》して、之れを用ふ。】。

△按ずるに、柘、阿州・土州≪の≫山中に、之れ、有り。以つて、弓木と爲《なす》。黃色なり。

「農政全書」に云はく、『柘木《シヤボク》、堅勁《けんけい》にして、皮の紋、細宻にして。上に、白㸃、多し。枝-條《えだ》、多く、刺《とげ》、有り。葉、桑の葉に比《ひし》たれば、甚だ、小にして、而《しかも》、薄し。色、頗《すこぶ》る黃淡《わうたん》。葉の稍(すへ[やぶちゃん注:ママ。])、皆、三叉(《みつ》また)あり。其の椹《み》も亦、蠺《かひこ》を飼ふ』≪と≫。又、『「綿柘《メンシヤ》」有り。刺、少く、葉、柿の葉に似て、微《やや》小さく、枝葉の閒《あひだ》に、實を結ぶ。狀《かたち》、楮-桃(かうぞ)[やぶちゃん注:後で注するが、この良安の「カウゾ」という読みは致命的な誤りである(「農政全書」は、明末の一六三九年に刊行された、天才的科学者であった徐光啓の編纂になる中国の農業技術書である)。「維基百科」の「構樹」に、別名として『楮桃』があると記されてあるのである。而して、この樹種は本邦のカジノキと一致する。則ち、ここは「カジノキ」と記すべきものということになる]に似て、小さく、熟≪せば≫、則ち、亦、紅《べに》なる蘃《しべ》、有り。味、甘酸《かんさん》≪なり≫。』≪と≫。

 

[やぶちゃん注:まず、半否定法で示す。

「やまぐは」「山桑《やまぐは》」と言っても、双子葉植物綱類バラ目クワ科クワ属ヤマグワ Morus austrails ではない(同種は前項「桑」で既注)

△+✕「豆美《つみ》」は桑類の古名総称である(△)が、実は「柘」の正体は、クワ科Moraceaeではあるが、クワ属ではない(✕)

良安が『俗、「柘」の字を以つて、「黃楊木(つげ《のき》)」の訓を爲≪すは≫、甚だ、非なり』と全否定している通りで、日本のツゲ目ツゲ科ツゲ属ツゲ変種ツゲ Buxus microphylla var. japonica ではない。

驚くべきことだが、大修館書店の「廣漢和辭典」を引くと、「柘」の項には、『①木の名。㋐山ぐわ。野ぐわ。桑の一種。』、『㋑柘楡(シャユ)は、やまにれ。』とあり、国字として、木の名。①つげ。黄植(つげ)。②柘榴(ざくろ)は石榴の誤用。』とあるばかりである。『桑の一種』は許せるが(クワ科Moraceaeではある)、『山ぐわ』は上記の通り、和名にヤマグワがあるから、アウトである。『野ぐわ』は「野生種のクワ属」の意味なら(普通の人はそう採る)、クワ属ではないので、アウトである。「廣漢和辭典」の本「柘」を執筆した人物は、中国で「柘」が如何なる種であるかを認識して書いていないと断言出来る(因みに、「やまにれ」はイラクサ目ニレ科ニレ属アキニレ Ulmus parvifolia の異名である。「柘楡」の文字列はないし、ここでは、「柘」とは無関係である。同種は既に「櫸」の私の注の中で「石櫸」として注もしてあるので、見られたい)

 さて。核心に入ろう。

 日本語のネット記事で、明確に種同定されてあるのは、私が絶大な信頼を寄せている「跡見群芳譜」の「外来植物譜」(これによって、本邦には、この「柘」なる樹木は自生しないこと、良安は、これが何であるかを知り得る余地はゼロだったということが判明する)の、ここのページ記された、「はりぐわ(針桑)」のみであった。則ち、

◎双子葉植物綱類バラ目クワ科ハリグワ連(ハリグワ属一属のみの短型連)ハリグワ属ハリグワ Maclura tricuspidata が「柘」の正体

なのであった。そこには(学名は斜体になっていない)、『ハリグワ属 Maclura(橙桑 chéngsāng 屬)には、世界の熱帯・亜熱帯に約』十~十二『種がある』とあり、『漢名を柘(シャ,zhè)というものは』、『これだが、和名を柘(つみ)というものは、ヤマグワ』とあり、『朝鮮・河北・陝西・華東・兩湖・兩廣・四川・貴州・雲南・ベトナムに分布』するとし、『日本には、養蚕用に明治初期に入り、今日も』、『ときどき』、『人家に植える』とあった(これで良安が見ることが出来なかったことが確定される)。さらに、『葉はカイコを飼い、実は食用・醸造用にし、樹皮の繊維から紙を作り、根皮は薬用にし、木材は上等な弓を作り、また黄色の染料にする』。『福建・廣東では根を穿破石(センハセキ,chuànpòshí)と呼び、カカツガユ M.cochinchinensis(構棘)と同様に薬用にする』とあった。

「維基百科」の「柘」を見よう(邦文ウィキは存在しない)。別名を『柘樹・拓樹』とし、『東アジア原産』の』『低木或いは小木で、多の棘(とげ)があり、樹高は最大六メートル、卵形、又は、倒卵形の革質の葉、全縁、又は、前面に浅く三裂し、雌雄異株の花を腋に生じて咲かせる。直径は約二・五センチメートル』とある。『用途は桑の木と同様で、茎の皮は紙を作り、根の皮は咳を和らげ、痰を消し、痛みを和らげる薬として使用される。木材としては貴重とされ、「南檀北柘」と称される』。『また、黄色染料としても使用され、葉は、蚕を飼育するのにも』桑の代用として『用いられ、果実は食用又は醸造用として利用される。雞桑と混同されやすい場合もある』とあった(この「雞(=鷄)桑」はヤマグワのことである。前項「桑」で既注。「廣漢和辭典」は、まさにその混同をヤラカしてまったというわけだ!)。最後に『河南省柘城縣福建省柘榮縣西北京の潭柘寺(たんしゃじ:孰れもグーグル・マップ・データ)は、この植物に因んで名付けられた』とあった。学名でグーグル画像検索したものをリンクしておく。実の画像が多く、樹木全体の様子が、今一、ないのが残念である。

「幹《みき》、疎(うと)くして」先の「跡見群芳譜」のページの『2007/05/22』のクレジットのある『小石川植物園』の右側の写真を見ると、ナットク!

「旋(さ)して」不詳。円盤状に回し削っての意か。

「琴《きん》・瑟《しつ》」先行する「楸」で既出既注。

「隹子《スイシ》」この実の名前の意味は不詳。「隹」には、しっくりくる意味がないのである。「普及版 字通」によれば、象形文字で、『鳥の形』で、「說文」の四の上に『「鳥の短尾なるものの名なり」という。卜文』(ぼくぶん)『では、神話的な鳥の表示には鳥をかき、一般には隹を用いる。語法としては「隹(こ)れ」という発語に用い、文献では唯・惟・維を用いる。また動詞として「あり」、所有格の介詞の「の」、他に並列の「与(と)」、また「雖も」と通用することがある。隹はおそらく鳥占(とりうら)に用い、軍の進退なども鳥占によって決することがあったのであろう。祝詞の器』(さい)『の前で鳥占をするのは唯、神の承認することをいう。その祝に蠱虫の呪詛があるものは雖、保留がついて逆接の意となる』とあって、意味は「とり」・「ふふどり」・「これ/あり/と」・「雖と通じて『いえども』」とあるだけである。

「天子の服する所なり」皇帝が着用する服の色がそれである。

「間-道-烏《しまくろ》」「縞黑の紋」の謂いだろう。

「物性、相《あひ》伏《ぶく》すなり」意味不明。東洋文庫訳も『物性相伏の結果である』と訳しているだけで、何と何とが、「相伏」なのか、よく判らんわ!

「勞損虛羸《らうそんきよるい》」東洋文庫の後注に、『ながわずらいで栄養が失われ、体が弱って回復しないこと。』とある。

「阿州」阿波國。

「土州」土佐國。但し、ここで良安が言っているのは、本邦の「柘弓(つみゆみ)」であり、その材は、ヤマグワであった。ただ、恰も四国の山中にのみ分布するように書いているのは、誤認である。ヤマグワは、サハリン・千島列島・北海道・本州・四国・九州・朝鮮半島・中国南部などの東アジアに広く分布する。

「農政全書」明代の暦数学者でダ・ヴィンチばりの碩学徐光啓が編纂した農業書。当該ウィキによれば、『農業のみでなく、製糸・棉業・水利などについても扱っている。当時の明は、イエズス会の宣教師が来訪するなど、西洋世界との交流が盛んになっていたほか、スペイン商人の仲介でアメリカ大陸の物産も流入していた。こうしたことを反映して、農政全書ではアメリカ大陸から伝来したサツマイモについて詳細な記述があるほか、西洋(インド洋の西、オスマン帝国)の技術を踏まえた水利についての言及もなされている。徐光啓の死後の崇禎』十二『年』(一六三九年)『に刊行された』とある。光啓は一六〇三年にポルトガルの宣教師によって洗礼を受け、キリスト教徒(洗礼名パウルス(Paulus))となっている。以下は、同書の「第五十六 荒政」(「荒政」は「救荒時の利用植物群」を指す)にある。「漢籍リポジトリ」のここの、ガイド・ナンバー[056-8b]に、

   *

柘樹 本草有柘木舊不載所出州土今北土處處有之其木堅勁皮紋細上多白枝條多有刺葉比桑葉甚小而薄色頗黄淡葉稍皆三乂亦堪飼蠶綿柘刺少葉似柿葉小枝葉間結實狀如楮桃而小熟則亦有紅蕋味甘酸葉味甘㣲苦柘木味甘性溫無毒

  救飢 採嫩葉煠熟以水浸作成黄色換水浸去邪味以水淘浄油鹽調食其實紅熟甘酸可食

   *

とあった。下線部が前者の引用で、太字部が後者の引用である。

「楮-桃(かうぞ)」割注した通りで、この良安の「カウゾ」という読みは致命的な誤りである。良安は、この「楮桃《チヨタウ》」を、無批判に、

✕バラ目クワ科コウゾ属コウゾ Broussonetia × kazinoki

に比定同定してしまったのである。但し、ウィキの「コウゾ」によれば、『コウゾは、ヒメコウゾ』(バラ目クワ科コウゾ属ヒメコウゾ Broussonetia monoica )『とカジノキ』『の雑種』(交雑種)『という説が有力視されている』。『本来、コウゾは繊維を取る目的で栽培されているもので、カジノキは山野に野生するものであるが、野生化したコウゾも多くある』。『古代においては、コウゾとカジノキは区別していない』(太字は私が附した)とあるから、良安一人が責められるわけではなく、種として区別していなかったのだから、しょうがないと言えば、しょうがないのだが、現代の我々が読む際には、そこを修正しなければ、話しが通らないのだから、仕方がない。再度、「維基百科」の「構樹」を見られたい。そこにはっきりと別名として『楮桃』があると記されてあるのである。これは、現在の、

◎バラ目クワ科コウゾ属カジノキ Broussonetia papyrifera

なのである。而して、邦文の当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『単にカジ(梶)またはコウ(構)』(「維基百科」の「構樹」 と一致する)『ともよばれる。枝の繊維は和紙の原料として用いられる』。『和名「カジノキ」は、コウゾが古くは「カゾ」といい、本種はそれが転訛した名だといわれている。中国名は「構樹」』。『古い時代においてはヒメコウゾとの区別が余り認識されておらず、現在のコウゾはヒメコウゾとカジノキの雑種といわれている。また、江戸時代に日本を訪れたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトもこの両者を混同してヨーロッパに報告したために今日のヒメコウゾの学名が「Broussonetia kazinoki」となってしまっている』。『原産地は不明であるが、日本、中国、台湾に分布し、日本国内では中部地方南部以西の本州、四国、九州、沖縄に分布する。山野に自生するが、日本には古くから栽培されていたものが野生化したものとみられており、野鳥の糞から芽生えた若木がよく目立つ。自然分布以外でも、人の手によって植栽されて庭や公園に植えられているものも見られる』。『落葉広葉樹の高木で、樹高はあまり高くならず』、十~十二『メートル』『ほどになる。樹皮は灰褐色で黄褐色の皮目があり、若木には褐色のまだら模様が入り、縦に短く裂けて浅い筋が入る。一年枝はうぶ毛が多く生えるか、まばらに生えている。葉は大きく、楕円形から広卵形で若木では浅く』三~五『裂し、表面に毛が一面に生えてざらつく。左右どちらかしか裂けない葉も存在し、同じ株でも葉の変異は多い。葉柄は長く』、二~十『センチメートル』『ほどある』。『開花時期は』五~六月で、『雌雄異株[3]。雄花序は長さ』四~八センチメートルの『穂状に下垂し、淡緑色。雌花序は直径』二センチメートル『ほどの球状につき、紅紫色の花柱がのびている。果期は』九『月。果実は直径』二~三センチメートル『ほどの集合果で、秋に赤く熟して食用になる』。『冬芽は互生し、三角形で毛が多く生え、暗褐色をしている』二『枚の芽鱗に包まれている。冬芽の下にある葉痕はやや大き目の心形や半円形で、維管束痕は多数輪状に並ぶ。葉痕の肩の部分に托葉痕があり、しばしば托葉が残っていることもある』。『古墳時代には栲樹(たくのき)と呼ばれて』、『木皮から木綿を作っており、栲樹が豊富だった豊国(大分県)の「柚富」(ゆふ)の地名はこれに由来する』。『古代から神に捧げる神木として尊ばれていた』ため、『神社の境内などに多く植えられ、主として神事に用い供え物の敷物に使われた』。『樹皮は繊維が強く、コウゾと同様に和紙の繊維原料とされた。中国の伝統紙である画仙紙(宣紙)は主にカジノキを用いる』。『煙などにも強い植物であるため、中国では工場や鉱山の緑化に用いられる』。『葉はブタ、ウシ、ヒツジ、シカなどの飼料(飼い葉)とする』。『カジノキは』本邦では、古くから『神道で』『神聖な樹木のひとつであり、諏訪神社などの神紋や日本の家紋である梶紋の紋様としても描かれている。また、昔は七夕飾りの短冊の代わりとしても使われた』とある。この樹種は、本邦のカジノキと一致するのである。

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