「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 石𤓰
せきくは
石𤓰
シツ クハアヽ
[やぶちゃん注:「𤓰」は「瓜」の異体字。]
本綱石𤓰出四川峨眉山中其樹修幹樹端梃葉肥滑如
冬青狀佀桑其花淺黃色結實如綴長而不圓壳裂則子
[やぶちゃん注:「壳」は原本では「売」にしか見えないが、これは「グリフウィキ」のこれに近いもので、「殼」の異体字である。最も近く、「殼」と判る異体字で示しておいた。]
見其形佀𤓰其堅如石煮液黃色
*
せきくは
石𤓰
シツ クハアヽ
「本綱」に曰はく、『石𤓰、四川≪の≫峨眉山の中より出づ。其の樹、修《ながく》、幹《みき》≪は≫、樹≪の≫端《はし》≪より≫、梃《つゑ》≪のごとく拔きん出づる≫葉≪にて≫、肥-滑(なめら)かにして、冬青(まさき)のごとし。狀《かたち》、桑に佀《にた》り。其の花、淺黃色。實を結ぶこと、綴(つゞ)るがごとく、長くして、圓《まろ》からず。壳、裂(さ)ける時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則ち、子《み》が見ゆ。其の形、𤓰に佀《に》、其の堅きこと、石のごとし。煮液(《に》じる)≪は≫、黃色≪なり≫。』≪と≫。
[やぶちゃん注:この「石瓜」、東洋文庫は、前と同じくダンマリであるが、これは「維基百科」で検索すると、「石瓜」は「番木瓜」に転送されており、それは、今やお馴染みとなった、
双子葉植物綱アブラナ目パパイア科パパイア属パパイア Carica papaya
であった。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『別名「チチウリ(乳瓜)」「モッカ/モクカ(木瓜)」などとよばれることもある。園芸学会での正式呼称は「パパイア」だが、農業界では「パパイヤ」を正式呼称とするため、農薬登録名は「パパイヤ」となる』。『熱帯果樹で、食用になる果実は』五百『グラムから』一『キログラムほどあり、熟すと』、『やわらかく多汁で甘い。果肉は黄肉腫が多いが』、『赤肉腫もある』。『メキシコ南部から西インド諸島を原産』。十六『世紀初めにヨーロッパ人に発見された。多くの熱帯の国々で栽培されている。日本でも農業の対象になっている(九州では露地栽培も可能)ほか、沖縄などで人家の庭に自生している。 耐寒性に乏しく、生育適温は』摂氏二十五~三十度『生育最低温度は』十五度で、十度』『以下になると』、『生育を停止する』。『草本性の常緑小高木で、大きくなると』十『メートル』『ほどに達するが、矮性種は』二~三メートル『ほどになる。パパイアは多年生植物であり、背が高くなり、しかも次第に茎が太くなるので、樹木と見ることができるが、茎は非常に柔らかく、台風などで容易に倒れる。また幹部は木質化しておらず、倒れたものが枯れると、すぐに腐って軟化するため、木ではなく草として捉えられる場合もある。従って、ごく一部の解説書などでは、「草本類」と記載されている場合がある』。『真っ直ぐに伸びた茎の先に長い葉柄を持つ大きな葉が集中しており、葉質は薄くて柔らかい。葉は大型の掌状で、イチジクの葉の形にも似た大きな切れ込みが入り、幹の上部から八方にまばらに長い葉柄をつけて突き出してつく。葉が落ちると、幹には大きな葉痕が残る』。『花は茎の先端近く、葉の下側に出る。通常は雌雄異株で、雄花は長い花序になって垂れ下がる。花は黄緑色で目立たない。果実は長さ』十『センチメートル』『ぐらいのものから大きなものになると』三十センチメートル『にもなる。果実は食用にされ、一般に流通しているものは』十五~二十センチメートル『くらいのものが多く見かけられる』。「維基百科」の「番木瓜」を見ると、『パパイアは熱帯アメリカ原産で、メキシコで何世紀にも亙って栽培されてきた。現在は』『インド・フィリピン・台湾・ブラジル・中国南部などの熱帯地域で一般的に栽培されている』としつつ、はっきりと、『アジアでは広東省と台湾が最も栽培されている地域である』と明記する。邦文ウィキに戻る。『タイやフィリピンなどから日本に輸入される場合も多い。日本国内でも』十八『世紀から沖縄で栽培されており』、二〇一六『年の生産量は』四百八十七『トン。鹿児島県(』三百六十四『トン)で』七『割を占める。自生する沖縄ではパパイア生産が産業として成り立ちにくいといわれる。理由としては、繁殖力が強く、軒先に自生しており、雑草的に捉えられていることや、台風に弱く』、『生産量が不安定なことがあげられる。また、沖縄など国内で栽培されているパパイアは』、『生産効率を確保するためソロ(両性花)種が多く用いられている。日本国内に輸入されている約』九十『%がソロ種である』。『パパイアの種を蒔くと』、『簡単に発芽するので、観葉植物として楽しむことが出来る。ただし、発芽にある程度の温度が必要なので、日本本土では』五『月頃に蒔くのがよい。また苗木でも実生苗でも結実まで』一~二『年かかる。雌雄異株なので、結実を目指すのなら』、『数株育てる必要がある。雌花開花後に雄花の花粉を受粉させれば』、『果実が育つ。また、温度によっては両性花がつくこともある。この場合は』一『株でも果実が得られる。 近年は樹高が』一メートル『程度の矮生種も開発されているので、条件さえ揃えば』、『植木鉢等で結実させることも可能である。 またハダニや線虫の害を受けるが、薬剤に弱いので薬剤の散布は避けなければならない』。『現在主流のFI両性品種の場合、同一品種内に両性と雌性が混在する。単体で栽培した場合両性は自家受粉により着果する。雌性は単為結果により着果し』、『その場合』、『種無しの果実となる。相対的に雌性は丸い果実に、両性は長い果実が実る』。二〇一二『年頃より』、『日本本土での野菜栽培が活発に行われ始める。きっかけは「獣害による被害が無い」「目立った病害虫が無い」栽培の容易性と、野菜としての果実に含まれる酵素成分に注目が集まったからである。また家庭園芸向けや営利栽培向けにパパイヤ苗を取り扱う店舗が増え、本州でも』四『月中旬に苗が販売されることで春定植-秋収穫の作型が提唱され広まった。青パパイヤ栽培はその珍しさもあってローカルニュースで取り上げられることも多く、地域活性化への特産品目としても注目を浴びている。ここ数年はより本州向きとされる早生性、より節間長の短い品種が多数紹介され、家庭菜園用にも「青パパイヤ苗」としホームセンターなどでも購入できるほど一般化しつつある』とある。以下、「利用」が、蜿蜒、載るが、「薬用」の部分のみをチョイスしておく。『パパイヤは、強心剤、降圧剤、鎮痛剤として医療に役立つといわれる』。『パパイン酵素は消毒作用があり、肌の傷、やけど、アザ、カサ付き、ひび割れ、アトピー、日焼け後のケア、肌荒れ、虫さされ、ニキビ等などに効き、リップバームや軟膏剤として使用されている』。『パパイヤの葉は様々な民間療法に使われて』おり、『近年の研究では』、『そのメカニズムが』科学的に『解明されつつある』らしい。『デング熱』に対し、『血球と血小板を増やしたり、肝臓を修復したりする』効果が、また『各種がん』に対しても、『抗腫瘍免疫系などの調節を担うTh1サイトカインの産生を促進する』。『マラリア』にも効果があるらしいが、『メカニズムは科学的に証明されていない』とある。実に含まれている『カルパイン』(calpain:カルシウム依存的非リソソームシステインプロテアーゼファミリーに属するタンパク質)『が、消化機能を妨げることが多い微生物を』、『殺菌する』効果があり、『消化促進』効果があるとする。「その他の用途」の見出しで、『下記に有効とする研究報告がある』として、『にきび薬、食欲増進、月経痛緩和、食肉軟化剤、吐き気の緩和。便秘薬、強心剤、解熱剤、疝痛薬、脚気、リウマチ薬、胃薬、高血圧治療、黄疸・糖尿病・皮膚炎・傷の治療、血液浄化剤、利尿薬、抗・駆虫薬、体重減少、肥満、動脈硬化』を挙げている。
本篇の「本草綱目」の引用は、「卷三十五下」の「木之二」「喬木類」(「漢籍リポジトリ」)の「石瓜」(リンク先の最終項)の「集解」をほぼまるまる引用している。以下に総てを示す(やや加工した。「觧」は「解」の異体字)。
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石瓜【綱目】
集觧【時珍曰石𤓰出四川峨眉山中及芒部地方其樹脩幹樹端挺葉肥滑如冬青状佀桑其花淺黄色結實如綴長而不圓壳裂則子見其形似瓜其堅如石者液黄色】
氣味苦平無毒主治心痛煎汁洗風痺【時珍】
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さても。何故か、時珍は、パパイアの実が食用になることを、一言も語っていない。無毒とし、処方も載せているのに、不思議である。実は、李時珍は、三十四歳の時、明朝の医学の最高機関であった「太醫院」に、推薦を受けて北京に赴いているのだが、中央国家器官の役人としての勤務は、彼には性に合わなかったものらしく、僅か一年後には、故郷である現在の内陸の湖北省黄岡市蕲春(きしゅん)県(グーグル・マップ・データ)に戻り、独自の本草学を、生涯、精進したのであった。則ち、彼は、「本草綱目」出版依頼等の以外で南京に出たりした以外には、実は、殆んど、湖北省以外の遠地には、めったに赴いていないのである。それは、私が「水族部プロジェクト」を終えた際にも、淡水動物はいいとして、海産生物の記載が、トンデモハップンの誤記が有意にあることからも実感されてあるのである。則ち、この南方の産物である「石瓜」=パパイアも、時珍は自生している実際を見ておらず、他者からの聴き書きで記しており、実を食べたこともなかった可能性が高いように私には思われるのである。]
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