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« 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 酸棗仁 | トップページ | 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 㽔核 »

2024/08/15

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 酸棗仁

 

Sanebutonatume

 

[やぶちゃん注:右上方に「仁」(=種)の絵が描かれて、キャプションがある。]

 

さんそうにん樲  山棗

 

酸棗仁

 

ワワン ツア

[やぶちゃん字注:「さんそうにん樲」の文字列はママ。訓読では一字空けた。]

 

本綱酸棗仁天下皆有之似棗木而皮細其木心赤色莖

葉俱青花似棗花八月結實紫紅色似棗而圓小味酸其

核中仁形微扁味甘此物纔及三尺便開花結子伹科小

者氣味薄木大者氣味厚今陝西山野所出者亦好

 凡平地則昜長大居崖塹則難生而其不長大者名白

 棘故白棘多生崖塹上及至長成其刺亦少

實【味酸性收】 主肝病寒熱結氣酸痺久洩臍下滿痛證

仁【味酸性收】 熟用療膽虛不得眠煩渴虛汗之證生用療膽

 熱好眠皆足厥陰少陽藥也【正如麻黃發汗其根節止汗也】

 本經不言用仁而今天下皆用仁【悪防已】


白棘 棘刺 棘鍼 赤龍瓜

     花名刺原 馬朐 菥蓂【大薺同名非一物也】

[やぶちゃん注:「瓜」は、原本では第五画がない「瓜」の異体字、「グリフウィキ」のこれだが、表示出来ないので、「瓜」とした。]

「本綱」に曰はく、『酸棗之未長大時枝上刺也有赤白二種而入藥當

用白者爲佳【辛寒】治心腹痛癰腫潰膿止痛

凡獨生而高者爲棗列生而低者爲棘故【重束爲棗平束爲棘】

 

   *

 

さんそうにん 樲《じ》  山棗《さんさう》

 

酸棗仁

 

ワワン ツア

 

「本綱」に曰はく、『酸棗仁《さんさうにん》、天下、皆、之れ、有り。棗《なつめ》の木に似て、皮、細《さい》なり。其の木、心《しん》、赤色。莖・葉、俱に、青し。花、棗の花に似にて、八月、實を結ぶ。紫紅色。棗に似て、圓《まろ》く、小さし。味、酸《すつぱし》。其の核《さね》の中の仁《にん》の形、微《やや》扁(ひら)たく、味、甘し。此の物、纔《わづか》に、三尺に及べば、便《すなは》ち、花を開きて、子《み》を結ぶ。伹《ただし》、科《ねもと》[やぶちゃん注:「根元」。]、小さき者は、氣味、薄く、木、大なる者は、氣味、厚し。今、陝西《せんせい》の山野より出《いづ》る所≪の≫者、亦、好し。』≪と≫。

『凡そ、平地にては、則ち、長大し昜《やす》く、崖《がけ》・塹《あな》に居《を》れば、則ち、生じ難くして、其の長大ならざる者を、「白棘《はくきよく》」と名づく。故《ゆゑ》、白棘は、多く、崖・塹の上に生ず。長成に至るに及びて、其の刺、亦、少《すくな》し。』≪と≫。

『實【味、酸、性、收。】 肝病、寒熱≪の≫結氣、酸痺《さんひ》の久しく洩れ≪て≫臍の下≪に≫滿痛《まんつう》≪せる≫證《しやう》を主《つかさど》る。』≪と≫。

『仁【味、酸、性、收。】 熟して、用ふれば、膽虛《たんきよ》して眠ること≪の≫得られざる煩渴《はんかつ》[やぶちゃん注:口の渇きが甚だしく、幾ら飲んでも飲み足りない病態を指す語。]、虛汗《ひやあせ》の證を療《いやし》、生にて用ふれば、膽《たん》≪の≫熱≪して≫好《このみ》て眠《ねむる》を療《いやす》。皆、足の厥陰・少陽の藥なり【正《まさ》に、「麻黃《まわう》」の、汗を發し、其の根の節《ふし》、汗を止《とむ》るごときなり。】。』≪と≫。

『「本經」に、仁を用ふること、言はず。而≪れども≫、今、天下、皆、仁を用ふ【「防已《ばうい》」を悪《い》む。】。』≪と≫。


白棘 棘刺《きよくし》 棘鍼《きよくしん》 赤龍瓜《せきりゆうさう》

     花を「刺原《しげん》」と名づく。 馬朐《ばく》 菥蓂《せきめい》【大薺《おほなづな》と名を同じくして、一物に非ざるなり。】

[やぶちゃん注:最後の割注は良安が附したものである。]

「本綱」に曰はく、『酸棗の未だ長大ならざる時の、枝の上の刺(はり)なり。赤・白の二種、有りて、藥に入《いる》るには、當《まさに》、白≪き≫者を用《もち》≪ふるを≫、佳《よし》と爲《なす》【辛、寒。】。心腹痛を治《ぢし》、癰腫《ようしゆ》≪の≫膿《うみ》≪を≫潰《つぶ》し、痛《いたみ》を止《とむ》。』≪と≫。

『凡そ、獨生《どくせい》して、高き者を、「棗《さう》」と爲し、列生して、低き者を、「棘」と爲《なす》。故《ゆゑ》に、【重≪ねたる≫「束」を「棗」と爲し、平《ならべ》≪たる≫「束」を「棘」と爲す。】。』≪と≫。

 

[やぶちゃん注:取り敢えず、メインの「酸棗仁」は「酸棗」の「仁」(種子)を意味する漢方生薬名であって、植物種としての中文名は「酸棗」であって、日中ともに、

双子葉植物綱バラ目クロウメモドキ科ナツメ属サネブトナツメ Ziziphus jujuba var. spinosa

である。まず、「維基百科」の「酸棗」(解説はない)で、学名が一致することが判る。何より、最初に、所持する「廣漢和辭典」の「樲」で、同種であることを確認出来た。その後、「武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園」公式サイト内の「サネブトナツメ」のページによれば、『生薬名:サンソウニン(酸棗仁) 薬用部位:種子』として、『ヨーロッパから中国にかけて分布する落葉小高木で托葉が変化したとげが見られ』(冒頭にキョワい棘の写真あり!)、『学名の spinosa は多くの刺があるという意味を示しています。生薬「酸棗仁」は種子を乾燥したものでジジベオシド(ベンジルアルコール配糖体)などの成分を含み、鎮静作用を有します。心因性、神経性の過眠症あるいは不眠症などを目的に酸棗仁湯(さんそうにんとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)など一般用漢方製剤』二百九十四『処方中の』五『処方に配合されています』とあり、写真のキャプションに、六『月頃に黄色い小さな花を咲かせ』、『核果の中にある種子を生薬「酸棗仁」として使用します。酸棗仁はナツメ( Z. jujuba Mill. )と比べて果実が酸っぱいために呼ばれています』。『和名のサネブトナツメ(核太棗)は』、『ナツメより核の部分が大きいために名付けられました』とあった。また、「奈良県薬剤師会」公式サイト内の「サネブトナツメ」のページには、『中国各地』(本文で自信を以って「天下、皆、有り」が証明される)、『内蒙古に分布し、日当たりのよい乾燥地帯に自生し、日本では民家に植えられ、時には野生化している』。『落葉低木で、枝には托葉が変化した棘(とげ)があり、棘の長さは長いもので』三センチメートル『に達する。当年枝は、緑色で下垂し、葉は、長さ』三~七センチメートル、『幅』一・五~四センチメートル『の』三『脈が目立つ卵形~卵状楕円形で、葉の基部は、多くの植物と異なり』、『左右非対称』であるとし、『花期は』六~七『月で、短い集散花序を腋生及び頂生し、黄緑色の花を付ける。果期は』八~九『月で、近球形、直径』〇・七~一・二センチメートル『で、ナツメの果実より、小さい』。『薬用部分は種子で生薬名を酸棗仁(サンソウニン)といい、酸棗仁湯等の精神安定作用等を目的とした漢方処方に配合されている』。『芽吹くのが遅いことから夏芽→ナツメ(棗)、果実に酸味のあることから酸棗(サンソウ)、ナツメの果実と比べて種子(「サネ」……実、核のこと)の大きさの割合が大きいことから、サネブトナツメと名付けられたとのこと』とあった。

 「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「木之三」の「酸棗」([088-26a]以下)のパッチワークである。

「酸痺《さんひ》」東洋文庫訳では、ルビで『けだるい』、『しびれ』とある。

「膽虛《たんきよ》」は、漢方医学で「消化器系など全般の機能低下により惹起される症状」を指す。

「虛汗《ひやあせ》」東洋文庫のルビを採用した。

「好《このみ》て眠《ねむる》」病的に頻りに眠る、眠ろうとする症状を指す。

「足の厥陰・少陽」東洋文庫後注に、『身体をめぐる十二経脈の一つ。足の厥陰経は巻八十二盧会注一参照』(私の「盧會」を見られたい)。『足の少陽は少陽膽經のこと。巻八十三秦皮注』(同じく私の「秦皮」を参照)『参照。』とある。

「麻黃《まわう》」中国では、裸子植物門グネツム綱グネツム目マオウ科マオウ属シナマオウEphedra sinica(「草麻黄」)などの地上茎が、古くから生薬の麻黄として用いられた。日本薬局方では、そのシナマオウ・チュウマオウEphedra intermedia(中麻黄)・モクゾクマオウEphedra equisetina(木賊麻黄:「トクサマオウ」とも読む)を麻黄の基原植物とし、それらの地上茎を用いると定義している(ウィキの「マオウ属」によった)。

「本經」漢代に書かれた最古の本草書「神農本草經」。

「防已(ばうい)」これは、キンポウゲ目ツヅラフジ科ツヅラフジ属オオツヅラフジ Sinomenium acutum (漢字名「大葛藤」。「維基百科」の同種「漢防己」も参照されたい)の蔓性の茎と根茎を基原とする生薬名だが、当該ウィキによれば、この基原記載は『日本薬局方での定義』とし、『鎮痛作用や利尿作用などを持つ。木防已湯(もくぼういとう)や防已茯苓湯(ぼういぶくりょうとう)などの漢方方剤に配合され、有効成分としてアルカロイドのシノメニン』『などを含む。しかし、作用が強力なので、用法を間違えると中枢神経麻痺などの中毒を起こす』としつつ、『中国では、防已をオオツヅラフジではなくウマノスズクサ科』(コショウ目ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae)『の植物としていることがある。このウマノスズクサ科の植物の防已はアリストロキア酸』(Aristolochic acid)『という物質を含み、これが重大な腎障害を引き起こすことがある。このため、中国の健康食品や漢方薬には十分注意する必要がある』と添えてある。しかし、上記の「維基百科」でも同種を「漢防己」としているので、ここで、取り立てて、注意喚起する必然性はないと言える。「菥蓂《せきめい》【大薺《おほなづな》と名を同じくして、一物に非ざるなり。】」と同名異物と注意割注してある「大薺」である「菥蓂」というのは、日中ともに、フウチョウソウ目アブラナ科グンバイナズナ属グンバイナズナ Thlaspi arvense である(「維基百科」の「菥蓂」を参照のこと)。「ブリタニカ国際大百科事典」では、越年草で、別名を「グンバイウチワ」とし、『世界的に分布する雑草で原野』・『畑地によくみられる。高さ』三十センチメートルで、『全草』が、殆んど『無毛で平滑の淡緑色である。春から夏に』かけて、『長い穂を出して』、『細かい白色の十字形花を総状につける。果実は扁平で』、『周囲に翼をもち』、『軍配うちわの形をしている。この種に似て』、『花が』、『さらに細かく,扁平で円形の果実を多数つける雑草に』、『マメグンバイナズナ Lepidium virginicum があり』、こちらは『北アメリカの原産であるが』、『日本では都会地周辺に帰化している』とある。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『ヨーロッパ原産であるが』、世界的『に帰化植物として定着している』当該ウィキでは、実は『日本や北アメリカなどに帰化植物として定着している』とするのだが、私はこの『など』が不審であるので、前記の「ブリタニカ国際大百科事典」で修正した)。『草高は約』十~六十センチメートル。『葉は長卵形で、やや厚く光沢がある。葉柄は長く、葉全体は軍配型となる。冬期には葉はロゼットとなる。花期は』四~六『月で、花弁は』二~五ミリメートル。『果実は広卵形または円形で、長さ』一~一・八センチメートル、『和名は果実が軍配の形に似ていることに由来する』。『サラダの材料やサンドイッチの具などとして食用にされることがある』。但し、『生では苦いため、油通ししてから食されることもある。またバイオディーゼル燃料の原料にされることもある』。『亜鉛を含む土壌を好む傾向があり、燃やした後に残った灰のうち』、十六『パーセントは亜鉛である。このような土壌に耐えられる植物は他にはあまり存在しないため、古来より中国では』、『グンバイナズナの群生地は亜鉛採取の指標とされた』。『一方』、『雑草として扱われることも多く、収穫された麦などの穀物の中にグンバイナズナの種子が混入する例も知られている』とある。

「重≪ねたる≫「束」を「棗」と爲し、平《ならべ》≪たる≫「束」を「棘」と爲す」面白い見解ではあるが、「束」と「朿」は全くの別字であるから、このようなことは、信じられない。

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