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2024/09/23

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 紫荊

 

Hanazuou

 

すはうの木 紫珠

      皮名肉紅

紫荊    又云內消

      【俗云蘇方木】

 

本綱紫荊𠙚𠙚有之人多種于庭院閒木似黃荊而柔條

其葉光緊微圓無椏春開紫花甚繁細碎共作朶生出無

常𠙚或生于木身之上或附根上枝下直出花花罷葉出

木幷皮【苦寒】入血分走骨故能活血消腫利小便解毒

△按紫荊木皮濃白色葉微團光澤似菝葜葉而莖長三

 月有花淡紫畧攅大可麥粒甚繁其實結莢似紫藤莢

 而小中有細子春種子生植于庭弄之俗呼曰蘇方木

 非眞蘇方葉實大異【蘇方見于喬木類】

 

   *

 

すはうの木 紫珠《ししゆ》

      皮を「肉紅《にくこう》」と名づく。

紫荊    又、云ふ、「內消《ないしやう》」。

      【俗、云ふ、「蘇方木(すはうの《き》)」。】

 

「本綱」に曰はく、『紫荊、𠙚𠙚、之れ、有り。人、多く、庭院の閒に種《う》ふ[やぶちゃん注:ママ。]。木、「黃荊《わうけい》」に似て、柔《やはらかき》條《えだ》≪なり≫。其の葉、光り、緊《しまり》、微《やや》圓《まろく》、椏《また》、無し。春、紫の花を開く。甚だ繁《しげりて》、細かに碎《くだ》け、共に、朶《ふさ》を作《つくり》、生《しやうず》。出≪ずるに≫、常《つねの》𠙚、無く、或いは、木≪の≫身《しん》[やぶちゃん注:幹。]の上に生じ、或いは、根の上、枝の下に附きて、直《ぢき》に花を出《いだ》す。花、罷(や)んで、葉、出ず[やぶちゃん注:ママ。「づ」]。』≪と≫。

『木、幷《ならび》に、皮【苦、寒。】』『血分《けつぶん》に入りて、骨を走る。故、能く、血を活し、腫《はれもの》を消し、小便を利し、毒を解く。』≪と≫。

△按ずるに、紫荊木(すはうの《き》)は、皮、濃(こまや)かに、白色。葉、微《やや》團《まろ》く、光澤≪あり≫、「菝葜(じやけついばら)」の葉に似て、莖、長し。三月、花、有り、淡紫≪にして≫、畧《ちと》攅《むらが》り、大いさ、麥≪の≫粒ばかり。甚だ、繁《しげ》く、其の實、莢を結≪び≫、「紫藤(ふぢ)」の莢《さや》に似て、小さく、中に細≪かなる≫子《たね》、有り。春、子を種《まき》て、生ず。庭に植《うゑ》て、之れを弄《もてあそ》ぶ。俗、呼んで、「蘇方の木」と曰ふ。《✕→ふも、》眞《まこと》の「蘇方(すはう)」に非ず。葉・實、大いに異《い》なり【《眞の》「蘇方」は「喬木類」を見よ。】。

 

[やぶちゃん注:これは、日中ともに、

○双子葉植物綱マメ目マメ科ハナズオウ(花蘇芳)亜科ハナズオウ属ハナズオウ Cercis chinensis

である。同種の「維基百科」は「紫荆」である。「ブリタニカ国際大百科事典」によれば、『中国原産で』、『日本には江戸時代初期に渡来した。観賞用として広く庭園などに栽植される』とある。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。『別名、ハナズホウ、スオウバナ(蘇芳花)とも呼ぶ。和名の由来は、花の色がマメ科の染料植物スオウ』(これが、良安が「違う」と注意喚起している、真の「蘇方(すはう)の木」=マメ目マメ科ジャケツイバラ(蛇結茨)亜科ジャケツイバラ連ジャケツイバラ属スオウ Biancaea sappan である)『で染めた蘇芳染(すおうぞめ)の汁の色に似ていることによる。中国名は紫荊』。『日本には北海道、本州、四国、九州に分布する。 高さは』二~三『メートル』『になる。樹皮は灰褐色で皮目は多いが、生長に関わらずほぼ滑らかである』。『若い枝は淡褐色で皮目が目立ち、ややジグザグ状になる。葉は』五~十『センチメートル』『のハート形で』、『つやがあり、葉縁が裏側に向かって反り返る独特の形をしている。葉柄の両端は少し膨らむ。秋の紅葉は黄色系に染まり、黄色と褐色のモザイク模様なったり』、『様々な変化を見せながら、葉が散るころには褐色になる』。『早春に枝に花芽を多数つけ』、四~五月頃、『葉に先立って開花する。花には花柄がなく、枝から直接に花がついている。花は紅色から赤紫色(白花品種もある)で長さ』一センチメートル『ほどの蝶形花。開花後、長さ数』センチメートル『の豆果をつけ、秋から冬に赤紫色から褐色に熟す』。『冬芽は鱗芽で、葉芽は卵形、花芽はブドウの房状に小さな蕾が多数集まる特徴的な形をしている。枝先につく仮頂芽は葉芽で、花芽はそれよりも下につく。側芽は枝に互生する。冬芽の芽鱗の数は、葉芽が』五、六『枚、花芽の蕾は』二『枚』、『つく。葉痕は半円形で維管束痕が』三『個』、『つく』。『早春に咲く赤紫色の花とハート形の葉が好まれ、公園樹や庭木によく利用される』。『ハナズオウ属は北半球温帯に数種が分布する。地中海付近原産のセイヨウハナズオウ( C. siliquastrum )は落葉高木で高さ』十メートル『ほどになり、イスカリオテのユダがこの木で首を吊ったという伝説からユダの木とも呼ばれる。このほか』、『アメリカハナズオウ( C. canadensis )などが栽培される』とある。

 「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「木之三」「灌木類」の「紫荆」([088-66a]以下)の独立項のパッチワーク。「木幷皮」の解説は、かなり、原文の各所を飛ばして圧縮してある。

「紫珠」「維基百科」の「紫荆」で別名に挙がっており、出典は盛唐の医師で本草学者であった陳藏器の「本草拾遺」とある。

「肉紅」中文の「百度百科」の「肉红」に『中医药名。紫荆皮的别称。』とある。出典は「本草綱目」である。

「黃荊」双子葉植物綱シソ目シソ科ハマゴウ(浜栲・浜香)亜科ハマゴウ属ニンジンボク (人参木Vitex negundo var. cannabifolia 。先行する「牡荊」の別名である。

「其の葉、光り、緊《しまり》、微《やや》圓《まろく》、椏《また》、無し」当該ウィキの葉の写真で確認出来る。

「春、紫の花を開く。甚だ繁《しげりて》、細かに碎《くだ》け、共に、朶《ふさ》を作《つくり》、生《しやうず》」同前の『花と若い果実(4月)』の写真で確認出来るが、花がブレているので、本文の分類の上にある画像の方がよい。なかなかスゴいわ。

「血分《けつぶん》」既出既注。東洋文庫の先行する訳中に『(血の変調に係わる病症)』とある。

「菝葜(じやけついばら)」マメ目マメ科ジャケツイバラ亜科ジャケツイバラ属ジャケツイバラ Biancaea decapetala

「其の實、莢を結≪び≫」同前の「果実(9月)」の画像を見よ。

「紫藤(ふぢ)」マメ目マメ科マメ亜科フジ連フジ属フジ Wisteria floribunda 

『《眞の》「蘇方」は「喬木類」を見よ』先行する『「和漢三才圖會」植物部 卷第八十三 喬木類 蘓方木』を見よ、ということ。]

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