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2024/09/07

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 狗骨南天

 

Hiraginanten

 

ひらぎなつてん 俗稱

 

狗骨南天

 

 

△按近頃自賀州山中出異樹其木身皮枝狀似南天燭

 葉亦不甚厚有南天葉樣而有五尖刺兩兩相對一朶

 十二三葉三月開小黃花夏結實似狗骨子而黒色乃

 狗骨與南天相半者

[やぶちゃん注:「ひらぎなつてん」はママ。訓読では、「ひいらぎなんてん」に補正する。]

 

   *

 

ひいらぎなんてん 俗稱。

 

狗骨南天

 

 

△按ずるに、近頃、賀州《がしう》[やぶちゃん注:「伊賀國」。]の山中《さんちゆう》より、異樹を出《いだ》す。其の木、身皮・枝の狀《かた》ち、「南--燭(なんてん)」に似て、葉も亦、甚《はなは》だ≪は≫厚からず。南天の葉の樣(さま)、有(あり)て、五《いつつ》≪の≫尖(とがり)の刺(はり)、有り。兩-兩《ふたつながら》、相對《あひたい》して、一朶《ひとえだ》、十二、三葉≪あり≫。三月、小≪さき≫黃花を開き、夏、實を結ぶ。狗骨(ひ《い》らぎ)の子《み》に似て、黒色なり。乃《すなはち》、狗骨(ひ《い》らぎ)と、南天と、相半《あひなかば》する者なり。

 

[やぶちゃん注:これは、当時、中国から移入されて広がっていた、

双子葉植物綱キンポウゲ目メギ科メギ亜科メギ連メギ亜連メギ属ヒイラギナンテン Berberis japonica

である。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。漢字表記『柊南天』、『別名でトウナンテン、チクシヒイラギナンテン』(「チクシ」は「筑紫」か「千櫛」か?)『ともよばれている』。常緑広葉樹の低木。古い木の幹にはコルク質がある。葉は奇数羽状複葉で、互生し、小葉は硬く、ヒイラギの葉に似た粗い鋸歯はとげ状となる。常緑で落葉はしないが、冬に赤銅色になる部分があり、紅葉のようになる』。『開花時期は』三~四『月』で、『春先に総状花序に黄色い花をつける。花弁は』六『枚あり』、九『枚の萼片も黄色であるので、全体が花弁のように見える。その中にある雄しべは、昆虫などが触れることによる刺激で内側に動いて、花粉をなすりつける』。『果実は液果で、秋に青く熟す』。『中国南部、台湾、ヒマラヤ原産』(☜)。『中国から日本に渡来したのは』十七『世紀末の江戸時代といわれる。人手によって植栽もされ、庭でもよく見られる』。『庭や公園などでよく栽培される。果実を実生として、果肉をとり、植える。果実は食用ではない』。『ヒイラギナンテン属』『には約』六十『種あり、中国から北米・中米にかけて分布する。小葉の細長いホソバヒイラギナンテン』(メギ属ホソバヒイラギナンテン Berberis fortunei )『もよく栽培されている』とある。但し、原産地を以上のように述べているが、「維基百科」の同種のページ「台湾十大功劳」(「」は「労」の簡体字)を見ると、標題に名にし負うように、明確に『原台湾』とはっきり書いてある。しかし、『中国大陸中南部、台湾原産で、日本へは天和(てんな)~貞享(じょうきょう)』(一六八一年~一六八八年)『ころに渡来した。耐寒性はやや弱く、関東地方以西の本州で庭に植え、いけ花に使う。名は、ナンテンの仲間で、葉がヒイラギに似ることによる。近縁のシナヒイラギナンテン』 Berberis bealei 『は中国中部原産で、全体にヒイラギナンテンより大形で耐寒性があり、生育がよい。またホソバヒイラギナンテン』 Berberis fortunei  『は中国原産で、小葉は長披針(ちょうひしん)形で』、五~九『枚が対生し』、九『月』頃、『総状花序に黄色の小花を開く。ともに繁殖は実生』、『挿木、株分けによる。』とある。また、そちらでは異名多く、『老鼠子刺、榕樣南燭、狗骨南天、山黃柏、刺黃柏、黃心樹、鐵八卦、天鼠刺、黃柏、角刺茶、華南十大功勞、日本十大功勞』を挙げている。なお、「十大功劳」はメギ属 Berberis の中文名で、「維基百科」の「十大功劳属」によれば、『同属の植物は民間薬用植物として非常に有名であり、根・茎・葉などの器官が薬として利用され、優れた薬効があるため』とあった。因みに、そちらで『十大功勞屬 Mahonia 』となっているのは、旧分類で「ヒイラギナンテン属 Mahonia 」に区分されていたもので、現行ではメギ属のシノニムである。なお、本書の成立は正徳二(一七一二)年であるから、渡来から三十年で、良安の謂いを素直に受け取るなら、何故か知らぬが、畿内では、伊賀地方に、多く、植栽されたようである。伊賀忍者と関係はありそうには見えぬ。

「南--燭(なんてん)」キンポウゲ目メギ科ナンテン亜科ナンテン属ナンテン Nandina domestica 。次項が「南天燭」である。

「狗骨(ひ《い》らぎ)」先行する「狗骨」を参照されたいが、ここで良安の言っているのは、本邦の「柊」、則ち、シソ目モクセイ科モクセイ連モクセイ属ヒイラギ変種ヒイラギ Osmanthus heterophyllus なのであるが、そちらの「本草綱目」からの引用での「狗骨」は、「矢羽柊黐」で、双子葉植物綱バラ亜綱モチノキ目モチノキ科モチノキ属ヤバネヒイラギモチ Ilex cornuta であって、異なるので注意されたい。

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