葡萄畑の葡萄作り ジユウル・ルナアル 岸田國士譯( LE VIGNERON DANS SA VIGNE 1894 Jule Renard) 戦前初版 鶺鴒(せきれい)
[やぶちゃん注:底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]
鶺 鴒(せきれい)
よく飛びもするが、よく走ることも走る。いつもわれわれの脚《あし》の間で、馴れ馴れしくするかと思ふと、なかなかつかまらいない。小さな叫び聲を立てゝ尻尾《しつぽ》で步くなどは、人を嬲《なぶ》つてゐる。
[やぶちゃん注:後の『「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「鶺鴒(せきれい)」』では(原文同じ)、私は「鶺鴒」(セキレイ)について、『フランスに棲息する確かな一般的な種はキセキレイ Motacilla cinerea と、タイリクハクセキレイ亜種 Motacilla alba alba と考えられる』と注したが、今回、先に使ったフランス語のウィキ“ Motacilla ”の各個種のページを再度、総て精査し、さらに、日本語とフランス語の鳥類のネット記載の同属についての記事等を、一から調べてみた結果、フランスに棲息(渡り鳥を含む)する種は、
○鳥綱スズメ目セキレイ科セキレイ属キセキレイ Motacilla cinerea
○セキレイ属タイリクハクセキレイ亜種(タイプ種)タイリクハクセキレイ Motacilla alba alba
○セキレイ属ツメナガセキレイ Motacilla flava (フランス語の同種のウィキでは、この種をさらに十種に分けてリストしてある。その中には独立種とされることもあるニシツメナガセキレイ Motacilla flava flavissima や、フランス南西部にも分布するとするイベリアセキレイ Motacilla flava iberiae がいる)
○セキレイ属タイリクハクセキレイ亜種 Motacilla alba yarrellii (イギリスからの渡り鳥)
の六種は確実にいることが判った。
原文を私なりに訳してみる。
*
彼女は飛ぶのと同じように走り廻り、そして、何時(いつ)だって、私たちの足の間に纏わりついて、馴れ馴れしくするくせに、これまた、如何ともし難い難攻不落のツワモノであって、その小っぽけな鳴き声でもって、私たちに「尻尾を踏んでみてごらんな!」とチョッかいを出すのである。
*]
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