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2024/09/19

「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十六」 野根浦之內並川村【茂次兵衞】大災

[やぶちゃん注:凡例・その他は初回を見られたい。底本の本篇はここから。]

 

     野根浦之(の)内(うち)並川村【茂次兵衞】大災(たいさい)

 㙒根浦並川と云(いふ)所に茂次兵衞といふもの、有(あり)。

 性質(たち)、貪欲、深くて、銀(ぎん)[やぶちゃん注:金(かね)。]・米(こめ)、余計(よけい)、出來(しゆつらい)しぬ。

 在所の者、銀、借(かり)に行(ゆく)時は、

「此方(こなた)へ來(きた)れよ。」

と、いふて、田を、すきに出(いで)、東へ犁(スケ)ば、東へ、したひ、西へ來(きた)れば、付(つき)したひて、己(おのれ)は仕事しながら、相談して、田地を質(しち)に取(とり)、或(あるい)は、山林を宛義に入(いれ)させ、銀を貸(かし)けるが、五、六年も、催促せず、其儘、置(おき)て、年(とし)を重(かさ)ね、利倍(りばい)して、夫(それ)より、稠敷(きびしく)催促する故、無詮方(せんかたなく)、質物(しちもの)、渡して、濟(すま)せけるものも、多かりし。[やぶちゃん注:「稠」(音「チウ(チュウ)」には「多い・繁る・びっしりと集まる」の意がある。それを苛烈な催促の形容としたもの。]

 安永の頃[やぶちゃん注:一七七二年から一七八一年まで。徳川家治の治世。]、茂次兵衞が家を[やぶちゃん注:ママ。国立公文書館本51)も「を」であるが、「の」の原古写本の誤りであろう。]近き所に、神社、有(あり)、其(その)宮(みや)の方(かた)より、

『大成(おほきなる)鼬(イタチ)、走り行(ゆく)ぞ。』

と見る內に、茂次兵衞が家の軒(のき)より、火、燃出(もえいで)ぬ。

 家內(かない)、あはて、騷ぎ、隣家(りんか)よりも、掛付(かけつけ)て、消留(けしとめ)ぬ。

 又、翌日、屋根より、燃(もえ)ぬ。

 村中、集りて、扣(たた)き消す內、床(ゆか)の下より、火、出(いで)て、燃(もえ)あがる。

 それを消して見るうちに、或(ある)押込(おしこみ)[やぶちゃん注:「押し入れ」に同じ。]の內より、もへ[やぶちゃん注:ママ。]出(いで)、手に合(あひ)がたく[やぶちゃん注:対処の仕様が叶わず。]、

「いか樣(さま)、是は、直事(ただごと)に、あらず。祈祷(きとう)、すべし。」

と、いづれも、進めて、山伏を呼(よび)、太夫(たいふ)を請(しやう)して、種々の祈祷に銀(ぎん)を費(つひや)せども、更に止(やま)ずして、弥増(いやまし)に、もえ出(いで)ける。

 後(のち)には、衣類の內より出(いで)、茂次兵衞が一躰(いつたい)より、燃出(もえいで)けるほどに、無詮方(せんかたなく)、東寺(とうじ)へ行(ゆき)て、祈祷(きとう)を賴みぬ。寺主、彼家(かのいへ)へ行(ゆき)て、重き祈祷、せられけるが、此(この)加護にや、無程(ほどなく)、火も鎭(しづま)りける、とぞ。

 

[やぶちゃん注:「野根浦之(の)内(うち)」の「並川村」野根浦は既出既注で、現在の東洋町野根の甲・乙・丙・(グーグル・マップ・データ。他はその北及び北東に確認出来るように配した)であるが、ここに言う「並川」という地名は「ひなたGPS」の戦前の地図を見ても、確認出来ない。ただ、気になるのは、この現在の野根乙の中にある「名留川(なるかわ)」という地区名である。調べると、江戸時代には「成川」という表記もあったとある。上記「ひなたGPS」で見ても、神社が二社ある。取り敢えず、ここを一つの候補地としておく。

「鼬」民俗社会では、近世まで、イタチは、キツネやタヌキと同様に「化ける妖獣」と認識され、ここにあるように、イタチが群れると、火災を引き起こすともされ、イタチの鳴き声は不吉の前触れともされた。そうした話、及び、イタチ類の種や、博物的記載は「和漢三才図会巻第三十九 鼠類 鼬(いたち) (イタチ)」の本文及び私の注を参照されたい。

「太夫」小学館「日本国語大辞典」にある、『神社の御師(おし)の称号。初め』、『伊勢神宮の権禰宜家より起こり、権禰宜は五位に叙されていたところから出た称。のちには禰宜以下、自治体の長にまで広がった。全国に檀那を持っていて、布教・祈祷』(☜)『・代参を行ない、また、檀那の参詣のときの宿舎を提供する。伊勢神宮』(ここに限っては差別化して「おんし」と読む)・『熊野神社のものが有名』であるが、『明治期以後』、『消滅』したとある。「山伏」に続くと、怪奇談集では、高い確率で「巫女」と続くが、「太夫」には「巫女」の意味はない。]

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