「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十六」 幡多郡戶內村鰐口
[やぶちゃん注:凡例・その他は初回を見られたい。底本の本篇はここ。「鰐口(わにぐち)」は私の『「和漢三才圖會」卷第十九「神祭」の内の「鰐口」』を参照されたい。]
幡多郡(はたのこほり)戶內村鰐口
幡多郡山田の內、戶内(へない)村の年寄、久米右衞門といふ者、鰐口を所持せり。其銘にいふ。
奉施入有井庄八幡宮鰐口一口 應永第十三丙戌八月十五日敬白 願主満盛
此鰐口は、入㙒村、加茂八幡宮の鰐口と見ゆ。
昔(むか)し、盜賊、奪來(うばひと)りて、戶內村へ捨置(すておき)しを、久米右衞門先祖、拾ひ取りて、今に所持せり。
「此鰐口を、他家(たけ)へ納置(をさめお)けば、必(かならず)、鳴動す。」
と、いへり。
久米右衞門は舊家にて、古文書、數通(すつう)、所持せり。
[やぶちゃん注:「現在の高知県宿毛市平田町(ひらたちょう)戸内(へない:グーグル・マップ・データ。以下同じ)。
「奉施入有井庄八幡宮鰐口一口 應永第十三丙戌八月十五日敬白 願主満盛」訓読しておく。
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施入奉(ほどこしいれたてまつる) 有井庄(ありゐのしやう) 八幡宮鰐口一口(ひとくち) 應永第十三丙戌(ひのえいぬ)八月十五日敬白 願主満盛(まんせい)
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「有井庄」は、恐らく、以下の入野の加茂八幡宮から東北方向に当たる、現在の幡多郡黒潮町有井川(ありいがわ)地区を指す旧称と思われる。「應永第十三丙戌(ひのえいぬ)八月十五日」はグレゴリ暦で一四〇七年十月六日相当で、室町幕府第四代征夷大将軍足利義持の現役時代の治世。「満盛」は「勢いがさかんなこと」で、「繁盛」を言祝ぐ意であろう。
「入㙒村、加茂八幡宮」現在の高知県幡多郡黒潮町(くろしおちょう)入野(いりの)。戸内の東北東二十キロメートル圏内。]
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