「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注 「巻三十七」「目録」・龍燈
[やぶちゃん注:原書の解説や凡例・その他は初回を見られたい。以下、底本は、国立国会図書館デジタルコレクションの写本の同巻(ここ)の画像を用いる。但し、所持する二〇〇三年国書刊行会刊『江戸怪異綺想文芸大系 第五巻』(高田衛監修・堤邦彦/杉本好伸編)の「近世民間異聞怪談集成」(二〇〇三年刊初版)に所収する同パート(土屋順子氏校訂)を、OCRで読み込み、加工テクストとさせて戴く。ここに御礼申し上げる。「近世民間異聞怪談集成」の底本は、『国立国会図書館蔵(一部独立行政法人国立公文書館内閣文庫蔵)』とあるので、前者は私の底本と同じであるから、不審な箇所は「国立公文書館」の同巻の画像を調べる(底本は奇麗な草書体だが、国立公文書館本写本の方が、字が濃く、遙かに読み易い)。
各話の標題は以下の「目録」にのみあって、本文にはないが、本文の前に「目録」のそれを、再掲しておいた。「近世民間異聞怪談集成」も同じ処理をしている。
以下、「目録」。字空けは、ブラウザの不具合を考えて、それらしくはしたが、同じではない。中標題「神 威 怪 異 竒 談」とある後は、直ぐに標題が続いているが、紛らわしいので、一行空けた。]
南 路 志 巻 三 十 七
闔 國十 二 之 二 目 録
〇 神 威 怪 異 奇 談
龍 燈
土 左 山 郷 廣 瀨 村 洞 穴
小 高 坂 森 屋 舖 枕 反
浦 戶 稻 荷 社 神 威
幡 多 郡 下 山 郷 【黒 尊 大 明 神】神 威
犬 神
神 田 村 与 七 怪 異
幡 多 郡 井 田 村 地 藏
長 岡 郡 池 村 キ ノ コ 銀 兵 衞
足 摺 御 𫮍 舟 幽 霊
井 田 村 八 岐 鹿 ⻆
槇 山 郷 中 谷 川 村 人 面 樫
奈 半 利 村 二 重 柿
宿 毛 七 度 栗
仁 井 田 郷 足 跡 石
伊 尾 木 村 大 師 岩
山 田 郷 平 草 峯 蛇
安 喜 土 居 之 西 妙 見 山
嶋 彌 九 郎
領 家 郷 梅 木 村 夜 啼 石
田 邉 嶋 隼 人 明 神
佐 賀 浦 大 明 舩 漂 着
年 季 夫 勇 吾 癩 疾
川 太 郎 之 皿
幡 多 郡 籠 原 川
比 江 山 掃 部
名 野 川 村 明 神 山
山 內 刑 部
本 川 郷 三 岳 山
甲 殿 村 住 吉 大 明 神
安 井 村 氷 室 明 神
安 喜 郡 【中 山 郷】 中 之 川 村 藥 師
峯 寺 觀 音
柏 尾 山 觀 音
冨 𫮍 高 姥 椎 ノ木 オ サ ン 婆 々
吉 良 左 京 進 亡 霊
[やぶちゃん注:「近世民間異聞怪談集成」では、『吉良左京追亡霊』となっているが、これは、底本を見ても、「進」であるし、本文からも「進」である。いやはや、またしても、幼稚レベルの誤判読だ。やりきれなくなるわい。最終校正も、ゼンゼン、やってないのが、バレバレだぜ!]
巴 新 三 郎 落 馬
南 路 志 巻 三 十 七
武 藤 致 和 集
闇 國 第 十 二 之 二
〇 神威 怪 異 竒 談
龍燈
國中に龍燈の上(のぼ)るといふは、足摺山、則(すなはち)、「龍燈松」といふ、あり【本堂の前にあり、今は、枯(かれ)たる也(なり)。】。
又、安㐂郡野根村の「龍王(りゆうわう)が峯(みね)」、「崎の濱」の「仙崎」、「唐(たう)の濱」の「神峯(こうのみね)」也。
長岡郡(ながをかのこほり)大谷の山中に、「燈龍の畂(うね)」[やぶちゃん注:「畂」は「畝」の異体字。]といふ所の山の腹に、大岩、有(あり)、此所(ここ)へも、上る也。昔は、白嚴寺(ハクガンじ)とて、大伽藍、有(あり)し、よし。靈地也。
[やぶちゃん注:「龍燈」ここで改めて注するのは面倒! 私のブログの『「南方隨筆」版 南方熊楠「龍燈に就て」 オリジナル注附 始動 「一」』・同「二」・同「三」及び『「附言」・「後記」・「龍燈補遺」』、また、それらの参考のために電子化した、『尾芝古樟(柳田國男)「龍燈松傳說」』を、各個、順に読まれるか、前者をPDFで一括版にした、私のサイト版『南方熊楠「龍燈に就て」(「南方隨筆」底本正規表現版・全オリジナル注附・一括縦書ルビ化PDF版・2.9MB・51頁)』をどうぞ!
「足摺山」という山は存在しない。先行する「同郡足摺山午時雨」で注したが、再掲しておくと、以下に示すリンク先の記載から、足摺岬の陸側の根にある四国八十八ヶ所霊場第三十八番札所蹉跎山(さだざん)補陀洛院(ほだらくいん)金剛福寺の後背のピーク(百五十七メートル)と足摺岬周辺の自然物・自然現象を多く包括したものであり、名数「七」は他のケースと同じで、それ以上の数がある。本件を名前だけだが、載せているサイト「日本伝承大鑑」の「足摺七不思議」では、全部で二十一あると言われており、『それらの多くは弘法大師ゆかりの伝説が残されている』とある。怪奇談物のフリークの私は、この手の定番人寄せ型怪奇名数は嫌いである。最後の「その他の“七不思議”」に「午時雨」が入っているが、その前に「龍の遊び場」というのがあるので、そこが、ここで言っている「龍馬の芝」であろうと私は踏んだ。なお、「龍馬」は別に「りゆうま」「りようふま」でも、お好きな読みをしていただいて、私は構わない。
「安㐂郡野根村」既に何度も出た野根山街道を東に下った旧安藝郡野根村。「ひなたGPS」の戦前の地図で「野根村」の表示北西と南東で確認出来る。かなり広域な(但し、内陸部は殆んどが山間である)村域であったことが判る。現在の東洋町(グーグル・マップ・データ。以下、無指示は同じ)全域と、ほぼ一致するようである。同町内に今も「野根」を冠した「野根甲」・「野根乙」・「野根丙」地区がある。
「龍王(りゆうわう)が峯(みね)」不詳。「ひなたGPS」の戦前の地図の野根地区を見ても、見当たらない。「龍燈」の出現地は一般に海に近いので、沿岸近くのピークではあろうと思われる。
『「崎の濱」の「仙崎」』現在の高知県室戸市佐喜浜町(さきはまちょう)の佐喜浜港附近かとは思われる。「ひなたGPS」で示す。
『「唐(たう)の濱」の「神峯(こうのみね)」』現在の安芸郡安田町唐浜(とうのはま:グーグル・マップ・データ)。ここには内陸の山岳部分に「神峯神社」があり、直近に四国霊場第二十七番札所の「竹林山地蔵院神峯寺(こうのみねじ)」もある。この神社の後背にある、この「ひなたGPS」のピーク(五百六十九・九メートル)であろう。
「長岡郡(ながをかのこほり)大谷」現行の長岡郡はここ(グーグル・マップ・データ)だが、当該ウィキの旧郡の地図を見ると、土佐湾にまで延びている。但し、その旧郡域を「ひなたGPS」で調べたが、「大谷」の地名は発見出来なかった。
「燈龍の畂(うね)」不詳。
「白嚴寺(ハクガンじ)とて、大伽藍、有(あり)し、よし」不詳。三つの要素が全く検索で見当たらない。万事休す。]
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