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2024/09/16

「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十六」 山狸(国立公文書館本「山狸(ネコマタ)」)

[やぶちゃん注:凡例・その他は初回を見られたい。底本の本篇はここ。標題は「やまたぬき」「やまだぬき」と読みたくなるが、実は、本文には、以下の通り、底本では、本文中で「山猫」とし、それに「(ネコマタ)」とルビする。国立公文書館本の「目録」(6)、及び、本文では、「山狸(ネコマタ)」とする。]

 

      山 狸

 田㙒浦、村木佐藏(むらきすけざう)・木屋茂七(きやもひち)、其外(そのほか)一兩人[やぶちゃん注:一人か二人。]、言合(いひあは)せ、要用(えうよう)有(あり)て、奈半利鄕(なばりがう)北川の庄屋へ行(ゆき)しが、夜に入(いり)、宿本(やどもと)を立(たち)て、「鳫(かり)が森」といふ難所を登り、峠へ至りける時、何かはしらず、

「フウ。」

と言(いふ)聲と、ひとしく、大風(おほかぜ)、來(きたり)て、四、五丁(ちやう)[やぶちゃん注:これは「松明(たいまつ)」の数詞。]の松明を、吹消(ふきけ)しぬ。

 初(はじめ)、吹消す時、松明の光に面(ツラ)を見しに、そのすさまじきこと、譬(たとふ)るに、もの、なし。

 二つ目(め)[やぶちゃん注:両目。]とも不見(みえず)、地に伏しけるが、別事(べつじ)なければ、夜中に、北川へ行着(ゆきつき)ぬ。

 里俗、言(いふ)、

「『鳥が森[やぶちゃん注:ママ。]』ゟ(より)、野根山へ、『猫股(ねこまた)』の通ふ道、有り。」

と、いへり。

「たまたま、山猫(ネコマタ)を見るもの、あり。牛(うし)程(ほど)有(あり)て、形は、画(か)ける虎に似て、尾の、長き物也。」

とぞ。

 

[やぶちゃん注:「田㙒浦」複数回既出既注。幡多(はた)郡黒潮町田野浦(グーグル・マップ・データ。以下、無指示は同じ)。「田㙒村」と切ってしまうと、「木佐藏」が如何にも、通称としては異例な通称となるし、並列の人物が「木屋茂七」とちゃんと姓(らしき物)を添えている以上、「村木」で姓と採った。

「奈半利鄕北川」土佐湾を隔てた対称位置にある現在の安芸郡北川村

「鳫が森」後で「鳥が森」と出るのと同じ山名と判断される。高知県では、山名を「~森」とするものが多く認められるので、これは一般名詞の「森」ではなく、山岳のピーク名であることは間違いない。但し、現行の北川村村内には、孰れも見当たらない。しかし、例えば、北川村の深い山林部には、現在も「高善森」や「鐘ヶ龍森」の名を持つ山が現認出来る(「ひなたGPS」のこちらを見よ)から、私の勘でしかないが、この「鳫が森」か「鳥が森」かに相当する山は、この同一の山地の中の古いピーク名であるように感じられると述べておく。

「夜中に、北川へ行着ぬ」これは、その「鳫が森」(個人的には「鳥が森」はダサいと感じる)から、かなり時間をかけて下っていることがわかるから、現在の北川村役場が置かれてある北川村野友甲(のともこう)附近ではないかと推理する。

「猫股(ねこまた)」=「山猫(ネコマタ)」=「山狸(ネコマタ)」は私の怪奇談その他には、あまた出るメジャーな妖怪(妖獣)であるが、「山狸」というのは初見である。幾つかめぼしいもながあるが、取り敢えず、「想山著聞奇集 卷の五」の「猫俣、老婆に化居たる事」の本文と私の注をお読みあれ。

 なお、以前に紹介した、国立国会図書館デジタルコレクションの「土佐鄕土民俗譚」(寺石正路著・昭和三(一九二八)年日新館書店刊)の「第廿一 山猫並怪獸」の章の、「其七十六 怪獸」の最後の一段に載るのだが、底本とも、国立公文書館本とも異なる有意な表記・表現であることから(恐らくは二本とは異なる「南路志」の写本によるものと思われる。但し、この「土佐鄕土民俗譚」は、写本筆者ではなく、編集者によって、恣意的に操作されている――もっと悪く言うと――かなりすんなり読めるように勝手に辻褄合わせをして弄(いじく)られている疑惑が大いにあるように私には思われる)、特別に以下に視認して電子化しておくこととする。読みは総て底本に拠るものである。

   *

 昔安藝郡田野(たの)村村木佐藏(むらきさざう)、木屋茂七(きやもひち)、外一兩人所町[やぶちゃん注:ママ。意味不明。]ありて、北川鄕(きたがはがう)の庄屋(しやうや)へ行き夜に烏(かいす[やぶちゃん注:ママ。])ガ森(もり)といふ難所を通りにづうづうといふ聲とひとしく大風來り四五本の炬火(たいまつ)を消す初吹消時、炬火(きよか)の光に面を見しに二た目と見られぬ恐しき怪物(かいぶつ[やぶちゃん注:ママ。])にて暫し地に伏しけるが別事なければ夜中に北川へ行着きぬこれは烏ガ森より野根山へ猫又(ねこまん[やぶちゃん注:ママ。])の通ふなりと言傳へらる。

   *

確かに、田野は北川村の南西直近で、土佐湾に面しているからね、ロケーションとしては、如何にも直近なんだけど……どうも……それ以外の表現が、ねぇ、ちょっと、ネェ…………

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