葡萄畑の葡萄作り ジユウル・ルナアル 岸田國士譯( LE VIGNERON DANS SA VIGNE 1894 Jule Renard) 戦前初版 蜚蟲(あぶらむし)
[やぶちゃん注:底本・凡例等は初回を見られたい。本篇はここ。]
蜚 蟲(あぶらむし)
鍵の穴のやうに、黑く、ひつついてゐる。
[やぶちゃん注:『「博物誌」ルナアル作・岸田國士譯(正規表現版・ボナール挿絵+オリジナル新補注+原文) 「あぶら蟲」』では、最後を『ぺしやんこだ。』と改訳している。逐語的には、こちらの方が正しいし、改訳では、ブッ叩いたアブラムシを想像して、私には不快感がある。「ひっついてゐる」ようで、「鍵の穴のやうに」平べったい(まさに「ぺしやんこ」)種で、フランス中部に棲息するもの、そして、如何にもな脚や突起物が目立たないことを考える(「鍵の穴」の見かけ)と、我々にもお馴染みな、ゴキブリ目オオゴキブリ亜目チャバネゴキブリ科チャバネゴキブリ属チャバネゴキブリ Blattella germanica が相応しいように思われる。当該ウィキによれば、『ゴキブリ成虫の雌雄は尾部に突起物(尾刺突起)があるかないかで区別されるところ、本種にはこのような突起はない』とあるからである。なお、同種『はクロゴキブリなどが属する狭義のゴキブリ科』Blattellidae『の仲間ではなく、ゴキブリ科と近縁にあたるシロアリとも縁遠い種類である』とあった。しかし、色は茶褐色であるから(子どもの時は黒い)、同定としては、その点でアウトだ。黒いとなると、本邦のクロゴキブリに、やや見かけが似ているゴキブリ科 Blatta 属トウヨウゴキブリ Blatta orientalis が有力候補となるか。当該ウィキによれば、『クリミア半島および黒海、カスピ海地域が原産であるが』、『現在では世界中に分布している』とあり、フランス語のウィキのゴキブリ目=「Blattaria」の「有害種」の項に上がっているから、フランスにもいることは確実である。]
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