「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十六」 鸛知凶事
[やぶちゃん注:凡例・その他は初回を見られたい。底本の本篇はここ。]
鸛(こふ)知凶事(きようじをする)
佐川の土居の前に有る杉の二股の所へ、先年、鸛、巢をかけて、子を育(そだて)ける。
或日(あるひ)、俄(にはか)に、巢を、かへける。
見る人ごとに、怪(あやし)みけるが、翌日、右の木へ、雷(かみなり)、落(おち)かゝりける、と也(なり)。
又、先年、松下孫四郞、福井村に在宅して居(を)られし時、或(ある)夕暮に、鸛、巢を、かへけるに、數日(すじつ)の內に、大雨にて、右の木を吹折(ふきをり)けると也。
「鸛の、巢を、髙く、かくる年は、風、吹かぬ。」
といふ事、よし有(ある)事にこそ。
[やぶちゃん注:「鸛」博物誌は私の「和漢三才圖會第四十一 水禽類 鸛(こう)〔コウノトリ〕」を見られたいが、「本草綱目」の引用にも、『天を仰ぎて號鳴〔せば〕、必ず、雨、有ることを主〔(つかさど)〕る。』とある。
「佐川の土居」読みは判らないが、取り敢えず「さがはのどゐ」と読んでおく。「Geoshapeリポジトリ」の「国勢調査町丁・字等別境界データセット」の「高知県佐川町乙島の土居」(佐川町は「さかわちょう」と読む。字(あざ)地名は、やはり判らないが、「おとしまのどい」と読んでおく)とあるのが、そこであろう。グーグル・マップ航空写真の、この中央部分が、そこである。
「松下孫四郞」不詳。
「福井村」現在の高知市福井町。高知城の北西で、かなり近い。現在は丘陵頭頂部を除いて住宅地になっているが、「ひなたGPS」の戦前の地図を見ると、丘陵の麓にポツポツと家が点在する程度で、北の一部は湿田である。]
« 「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十六」 小髙坂村地中之鰻 | トップページ | 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 狗骨南天 »