「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十六」 佐川西山洞穴之和銅之字
[やぶちゃん注:凡例・その他は初回を見られたい。底本の本篇はここ。標題は「さがはにしやまどうけつわどうのじ」と訓じておく。]
佐川西山洞穴之和銅之字
佐川(さかは)の西山(にしやま)といふ所の奧に、洞穴、有(あり)。
丹波丈左衞門・山田圓兵衞・淸源寺俊嶺和尙、同道して、右の洞穴へ行(ゆき)ける。
奧へ行(ゆく)事、凡(およそ)、半道[やぶちゃん注:約二キロメートル。]も行(ゆき)たる樣に覺へ[やぶちゃん注:ママ。]ける所は、河原(かはら)の樣(やう)にあり、砂の有(ある)所へ行(ゆき)ぬ。
其邊(そのへん)より、又、一段、髙き所、有(あり)て、其處(そこ)に、位牌、一つ、有(あり)。
明松(たいまつ)を用意して行ける故、明松にて、見れば、位牌の文字、
「和銅」
と云(いふ)二字、慥(たしか)に見へ[やぶちゃん注:ママ。]ける。
「其外(そのほか)は、見へ[やぶちゃん注:ママ。]ず。」
と也(なり)。
俊嶺和尙のいふ、
「是は、昔、出家の入定(にふぢやう)したる所成(なる)べし。」
と也。
[やぶちゃん注:「佐川の西山」現在の高岡郡佐川町(さかわちょう)西山(グーグル・マップ・データ。以下同じ)。なお、この地区には、現在、「不動ヶ岩屋洞窟遺跡」があるが、ここは、旧石器時代から縄文時代へ移る頃の住居跡で、幅四メートル、高さ六メートルの洞口に続く、奥行八メートルの本洞と、奥行八メートルの支洞から程度ものであるから、本話のロケ地ではない。相当に深い洞穴であるが、不詳。
「和銅」が年号であるとするなら、七〇八年から七一五年まで。]
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