「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 大空
だいくう 獨空
大空
タアヽ コン
本綱大空生山谷中小樹其葉似桐葉而不尖㴱綠而皺
[やぶちゃん字注:「㴱」は「深」の異体字。]
文其根皮赤色虛軟山人采作末【苦有小毒】和油塗髮殺蟣虱
極妙又搗葉篩䟽圃中殺虫
[やぶちゃん注:「䟽」は「疏」の異体字。]
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だいくう 獨空《どくくう》
大空
タアヽ コン
「本綱」に曰はく、『大空、山谷の中に生《しやうず》。小樹≪にて≫、其の葉、「桐」の葉に似れども、尖《とがら》ず。㴱綠《ふかみどり》にして、皺文《しはもん》あり。其の根・皮、赤色。虛《うつろ》≪にして≫軟≪かなり≫、山人、采りて、末《まつ》【苦、小毒、有り。】と作《なし》、油を和《わ》して、髮に塗≪れば≫、蟣-虱《しらみ》を殺すこと、極めて妙なり。又、葉を搗き、䟽圃《そほ》[やぶちゃん注:畑・菜園。]の中に篩《ふる》≪へば≫、虫を殺す。』≪と≫。
[やぶちゃん注:「大空」は、「維基百科」・「百度百科」で検索しても、植物としての現代中国語での紹介記事は、ない。邦文記事も見当たらない。「維基文庫」では、「植物名實圖考(道光刻本)」(清代の呉其濬(きしゅん)編纂になる、千七百十四種の植物の図と説明から成る中国最初の本格的植物図鑑で、全三十八巻。特に、図は著者が実見して描いたもので、それまでの本草書にある図と比べると、遙かに写実的であり、中国の植物研究資料として内外で、その評価が高い)の「第三十五卷」に「大空」があり、図もある(本書の図とは葉の形状がかなり異なる。決定的部分は、以下の解説と相違して、葉が尖っている点である)。解説文は、
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大空唐本草始著錄生襄州所在山谷亦有之小樹大葉似桐而不尖主殺蟲蝨
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で、「本草綱目」の記載と大差はない。私の力では、実在する植物種に辿り着けない。識者の御教授を乞うものである。
「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「木之三」「灌木類」の最後の「大空」([088-79a]以下)のパッチワークである。以下に引用しておく(表記に手を加えた)。
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大空【唐本草】
集解【恭曰大空生襄州所在山谷中亦有之秦隴人名獨空作小樹抽條高六七尺葉似楮小圓厚根皮赤色時珍曰小樹大葉似桐葉而不尖深綠而皺文根皮虚軟山人采殺虱極妙搗葉篩疏圃中殺虫】
根皮氣味苦平有小毒主治殺三蟲作末和油塗髮蟣虱皆死【藏器】
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「桐」これは日中ともに、シソ目キリ科キリ属 Paulownia 、或いは、揚子江流域にも分布する本邦のキリ Paulownia tomentosa でもよいか。]
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