「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十七」 (宝曆十一巳年東將軍家御上使有ける時武江の數輩子安櫻の產婦に奇なるを聞て……) / 「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注~了
[やぶちゃん注:原書の解説や凡例・その他は初回を見られたい。当該部はここ。既に述べた通り、以下の「巻三十七」の最後の十一篇は「目録」に標題が掲げられていないので、冒頭の一部を丸括弧で示すこととする。なお、本篇は、前話を受けているので、直にこの記事に来られた方は、前話を読まれんことを強くお薦めする。
本篇を以って、「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注を完遂した。]
宝曆十一巳年[やぶちゃん注:一七六一年。前年に徳川家治の治世となった。]、東將軍家、御上使(おんじやうし)有(あり)ける時、武江(ぶかう)の數輩(すはい)、
「『子安櫻(こやすざくら)』の、產婦に奇なる。」
を聞(きき)て、妄(みだ)りに、樺皮(かばかは)を剥取(はぎとり)ければ、今年より、枯木と[やぶちゃん注:底本は「の」。国立公文書館本(100)で訂した。]成りて、翌年の春より、枝葉を不出(いださず)。
惜(をし)むべし。
彼(かの)枯木の梢上(こづえのうへ)に、自然(おのづ)と生(しやう)ずる櫻葉(さくらば)有(あり)て、社司(しやし)等、地に、おろし、植付置(うゑつけおき)ける。
[やぶちゃん注:「樺皮」桜の木の皮の赤みを帯びた黄色を指している。特にその色を持つのは、バラ目バラ科サクラ属ヤマザクラ Cerasus jamasakura であるから、ここで初めて(まあ、前話の生じた経緯から推して、普通はそうだろう)、「子安櫻」の樹種が判明した。しかしながら、現在の「兒安花神社」(ストリートビュー)は殺風景で、桜の木は、ないようだ。
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なお、最後に言っておくと、私は高校時代、三年間、地理を受講し、地理Bまで修了した大の地理好きであり、ネットの地図・古地図を駆使して考証することは、楽しみでさえあるのである。しかも、高知県は私が直に足を踏み入れたことがない、数少ない県なのである(他には米原駅で乗り換えしたことは何度もあるが、滋賀県が未踏で、新幹線で通過することは何度もあるが、やはり未踏であるのが、茨城県。合せて、この三県だけである)。高知県は大学一年の夏、鹿児島の祖父の見舞いの帰りに、祖谷渓を目指したが、大歩危で台風に接近され、何にも見ずに(室戸岬まで行くはずだった)、卒論のために尾崎放哉終焉の地、小豆島へ向かって三泊した、少し苦い思い出のある場所なのであった。それだけに、イメージで高知を楽しんだ。死ぬ前には、行くぞ!!!]
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