「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十七」 (神田村大的大明神の傍に蟹が池と云ふ池有……)
[やぶちゃん注:原書の解説や凡例・その他は初回を見られたい。当該部はここから。既に述べた通り、以下の「巻三十七」の最後の十一篇は「目録」に標題が掲げられていないので、冒頭の一部を丸括弧で示すこととする。]
神田村(こうだむら)、「大的大明神(おほまとだいみやうじん)」の傍(かたはら)に、「蟹が池」と云ふ池、有(あり)。
此(この)池、昔(むか)し、甚(はなはだ)深き渕(ふち)也。
此池の端(はし)に、蹈石(ふみいし)の如き、蟹、住めり。
或時、所の婦人、此池へ、洗濯に來(きた)りて、
『蹈石。』
と、おもひ、蟹の甲(かふら)に登りぬ。
蟹、暫(しばらく)有(あり)て、池中(いけなか)に入(い)らんとするに、此女(このをんな)も、ともに、沈(しづま)んとす。
農夫、是を見付(みつけ)て、引上(ひきあげ)たり。
「蟹は、此池の主(ぬし)。」
と、いひ傳ふ。
今は、此池、淺く成りて、何處(いづこ)へか、蟹も行(ゆき)けん、見えず。
[やぶちゃん注:『神田村、「大的大明神」』現在の高知市神田(こうだ)にある大的神社(おおまとじんじゃ)である。「ひなたGPS」の戦前の地図には『神田(コーダ)』と読みがある。御夫婦でお作りになっておられるサイト「神社探訪 狛犬見聞録・注連縄の豆知識」の「大的神社」によれば、『神社はかなり交通量の多いT字路の角にあり、ご神木のムクノキは目立ちますが、前面には狛犬や鳥居の他に玉垣など境界を示す遮蔽物は何もなく、開放的な造りをしています。拝殿は本殿の鞘堂を兼用している造りで、鳥居にも拝殿にも「大的宮」と書かれた額が掛かっています』と述べられ、『御祭神』は『経津主大神』(ふつぬしのかみ)・『武甕槌大神』(たけみかづちのおおかみ)・『大山咋大神』(おおやまくいのかみ)で、『古来より、松ノ木地区の産土神であ』り、『勧請年月』・『縁起』・『縁革』は『未詳』であるが、延享二(一七四五)年八月『再興、大的大明神本社拝殿の棟札があるので、此れ以前の鎮座である』。『元、大的大明神、又、松ノ木大明神とも称したが、明治元年大的神社と改称』し、『元、無格神社であったが』、『昭和』二一(一九四六)年に、『宗教法人大的神社とな』ったとある。
「池」サイド・パネルの画像や、ストリートビューも見たが、現在、池は見当たらない。]
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