「神威怪異竒談」(「南路志」の「巻三十六」及び「巻三十七」)正規表現電子化注「巻三十七」 (潮江山のうちに昼魔といふ所有……)
[やぶちゃん注:原書の解説や凡例・その他は初回を見られたい。当該部はここから。既に述べた通り、以下の「巻三十七」の最後の十一篇は「目録」に標題が掲げられていないので、冒頭の一部を丸括弧で示すこととする。]
潮江山(うしほえやま)のうちに、「昼魔(ひるま/ひりま)」といふ所、有(あり)。
「魔所也(ましよなり)。」
とて、人、常に、行かず。
「此所(ここ)に『鳶石(とびいし)』とて、鳶の踞(うずくま)りたる如き石あり。」
と云(いふ)。
[やぶちゃん注:「潮江山のうちに、「晝魔」といふ所、有(あり)」旧「潮江村」(現代仮名遣「うしおえむら」)は、この場合、「ひなたGPS」で示すと、狭義の近代の浦戸(うらど)湾奥部の近世以来の干拓地である「潮江」よりも、遙かに、広域を指す。具体的には、ざっくり示すと、浦戸湾の東側広域の、この中央全体が江戸時代の「潮江村」であった。さて、『この奇体な地名では、ネットでは、位置を調べられないだろうなぁ……』と思いつつ、幾つかの漢字をフレーズで組んで検索したところ、驚くべきことに、二種の、本篇の地名と酷似する資料データを見出すことが出来た(太字は私が附した)。一つは、『四万十町地名辞典付属資料』と称する『394010高知市の字一覧』(PDF)で、その『地域コード』の『3881』の『15潮江114』に『大字』『深谷町』『ふかだにちょう』内に『昼魔ヶ谷』『ひるまがたに』とあった。今一つは、同じくPDFで、『四万十町地名辞典資料』の『高知県の地名(書籍・記事索引)』で、ページでは『40/142』にある『№』『2987』に、『ひりまがたに』・『昼魔ヶ谷』・『コード』『39403』とし、『高知市』とし、『地検帳に「ヒルマ」とある。潮入地(不干沼・ひぬぬま)が干拓された昔面影を残す地名』という解説があり、出典を「土佐地名往来(高新)」とする。この二つを、総合して見ると、潮江村の『潮入地(不干沼・ひぬぬま)が干拓された』というのは、戦前の地図の、この水田部分を指している。而して「深谷町」は、国土地理院図で見てもらうと、この干拓地の南方のこの山間部に相当する。この岬の根本部分は、「宇津野山」(標高二百五十八メートル)・「鷲尾山」(同三百六メートル)・「烏帽子山」といった山岳が連なっている。この内、「宇津野山」と「鷲尾山」の間にある谷、或いは、現在の深谷町の谷川の奥の方、北中山地区の丘陵上にある「土佐塾中学・高等学校」のあるあたりのピーク下の谷間が、この魔所「昼魔」の候補地になるのではなかろうか?
「鳶石」不詳。]
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