「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 梅嫌木
むめもどき 正字未詳
梅嫌木 俗云
牟女毛止岐
△按梅嫌木葉團尖有微小鋸齒似野梅葉而小冬凋春
芽生五月開小白花畧似南天花結子初青色十月葉
落子紅熟𣷹枝幹多美鵯鳥喜食之
[やぶちゃん字注:「𣷹」は「添」の異体字。]
一種子白者亦有之以異爲珍然不如赤者
*
むめもどき 正字、未だ、詳かならず。
梅嫌木 俗、云ふ、
「牟女毛止岐《むめもどき》」。
△按ずるに、梅嫌木、葉、團《まろ》く、尖《とがり》、微《やや》小≪さき≫鋸齒、有り。「野梅《のうめ》」の葉に似て、小《ちいさ》く、冬、凋《しぼむ》。春、芽(め)を生ず。五月、小≪さき≫白≪き≫花を開く。畧《ほぼ》、「南天」の花に似たり。子《み》を結≪べども≫、初《はじめ》は、青色、十月、葉、落《おち》て、子、紅熟≪し≫、枝・幹に𣷹《そひ》て、多《おほく》、美なり。鵯鳥(ひよどり)、喜んで、之れを食ふ。
一種、子《み》の白き者、亦、之れ、有り。異《い》を以つて、「珍《ちん》」と爲《なす》。然れども、赤≪き≫者に、しかず。
[やぶちゃん注:これは、
双子葉類植物綱モチノキ(餅の木・黐の木)目モチノキ科モチノキ属ウメモドキ Ilex serrata
である。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。漢字表記は『梅擬き、梅擬』で、『落葉低木。和名の由来は』、『葉がウメ』(バラ目バラ科サクラ属ウメ Prunus mume )『の葉に似ていることや』、『花も梅に似ているころに由来する。別名』『「オオバウメモドキ」。花や実が白色に品種を「シロウメモドキ」という』。『中国と日本の本州、四国、九州の落葉広葉樹林内に分布する。広島県では、吉備高原から中国山地の湿原や湿った林下に分布する。表六甲の中腹から裏六甲にかけて、広い範囲に点々と分布している』。『熊本県阿蘇郡の旧阿蘇町(現在の阿蘇市)の町の木であった。山形県でレッドリストの絶滅寸前、千葉県で危急種の指定を受けている種である』。『山中の湿地に自生している。また』、『人の手によって植栽され、庭などにもよく見られる』。『落葉広葉樹の低木で、木の高さは』二~三『メートル』『になる。雌雄異株である。樹皮は灰褐色をしており、滑らかで皮目が多くよく目立つ。一年枝は暗褐色で細く、短毛を密に生やす。側枝は短枝化しやすい』。『葉は互生し、長さ』三~八『センチメートル 』、『幅』一・五~三メートル『の楕円形で』、『先端が尖り、葉縁は細かい鋸歯』『状である。葉の裏に毛がある』。『開花時期は』五~七『月で、淡紫色の花を葉の付け根に咲かせる。果実は』九『月頃から赤く熟し』、十二『月頃』、『落葉しても』、『枝に残っている。このため』、『落葉後の赤い実が目立つ。小鳥が好んでこの果実を食べる』。『冬芽は枝に側芽が互生し、頂芽・側芽ともに長さ約』一『ミリメートル 』『と』、『かなり小さく、芽鱗』四~八『枚に包まれている。側芽の根元には果軸がよく残る。冬芽のそばにある葉痕は半円形で、維管束痕が』一『個ある』。庭木や公園樹によく植えられ、鉢植、盆栽、活け花に使われるが、鑑賞の対象は』、『花より』、『赤い果実であり、冬場の庭の彩りに使われる』。『モチノキ属には多数の種があり、日本には以下の近縁種などが分布している』として、
品種イヌウメモドキ Ilex serrata f. argutidens (『葉に毛がないもの』)
フウリンウメモドキ Ilex geniculata
変種オクノフウリンウメモドキ Ilex geniculata var. glabra
ミヤマウメモドキ Ilex nipponica
の四種を挙げる。
「南天」キンポウゲ目メギ科ナンテン亜科ナンテン属ナンテン Nandina domestica。
「鵯鳥(ひよどり)」スズメ目ヒヨドリ科ヒヨドリ属ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis。博物誌は、私の「和漢三才圖會第四十三 林禽類 鵯(ひえどり・ひよどり) (ヒヨドリ)」を参照されたい。
★なお、次項の「瓢樹(ひよんのき/いす)」(現行のイスノキ相当)は、既に、二〇二二年にブログ・カテゴリ「和漢三才圖會抄」で、単発で『「和漢三才圖會」卷第八十四 灌木類 瓢樹(ひよんのき/いす) / イスノキ』として電子化注してある。今回、全面的に改訂して、リニューアルしておいたので、そちらを見られたい。★]
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