フォト

カテゴリー

The Picture of Dorian Gray

  • Sans Souci
    畢竟惨めなる自身の肖像

Alice's Adventures in Wonderland

  • ふぅむ♡
    僕の三女アリスのアルバム

忘れ得ぬ人々:写真版

  • 縄文の母子像 後影
    ブログ・カテゴリの「忘れ得ぬ人々」の写真版

Exlibris Puer Eternus

  • 僕の愛する「にゃん」
    僕が立ち止まって振り向いた君のArt

SCULPTING IN TIME

  • 熊野波速玉大社牛王符
    写真帖とコレクションから

Pierre Bonnard Histoires Naturelles

  • 樹々の一家   Une famille d'arbres
    Jules Renard “Histoires Naturelles”の Pierre Bonnard に拠る全挿絵 岸田国士訳本文は以下 http://yab.o.oo7.jp/haku.html

僕の視線の中のCaspar David Friedrich

  • 海辺の月の出(部分)
    1996年ドイツにて撮影

シリエトク日記写真版

  • 地の涯の岬
    2010年8月1日~5日の知床旅情(2010年8月8日~16日のブログ「シリエトク日記」他全18篇を参照されたい)

氷國絶佳瀧篇

  • Gullfoss
    2008年8月9日~18日のアイスランド瀧紀行(2008年8月19日~21日のブログ「氷國絶佳」全11篇を参照されたい)

Air de Tasmania

  • タスマニアの幸せなコバヤシチヨジ
    2007年12月23~30日 タスマニアにて (2008年1月1日及び2日のブログ「タスマニア紀行」全8篇を参照されたい)

僕の見た三丁目の夕日

  • blog-2007-7-29
    遠き日の僕の絵日記から

サイト増設コンテンツ及びブログ掲載の特異点テクスト等一覧(2008年1月以降)

無料ブログはココログ

« 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 伊比桐 | トップページ | 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 三杈木 »

2024/10/29

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 讓葉木

 

Iigiri

 

ゆずりは  弓絃葉【万葉】

      楪【俗字】

讓葉木

       枕草紙云

      由豆利葉

[やぶちゃん注:「万葉集」の中の異名漢字表記の「弓」は、原本では、「グリフウィキ」のこれであるが、表示出来ないので通常字で示した。「計羅」の本文の「弓」は「弓」である。]

 

△按木高五七尺樹葉茂盛畧似珊瑚樹葉而大色稍淺

 葉莖赤開小白花似柚柑花結子淺黒色大如小豆中

 有仁新葉既生舊葉落如父子相讓故俗呼曰讓葉都

 鄙正月鏡餈及門戶之飾用亦取相續之義

  六帖あともへかあしくま山のゆつる葉のふゝまる時に風吹かすかも


けら

計羅  【正字未詳】灌木而枝葉頗似弓絃葉其子赤攅生

      如南天子而顆大植庭園賞之俗云犬枇杷

      卽夷果部天仙果也

 

   *

 

ゆづりは  弓絃葉(ゆづるは)【「万葉」。】

      楪《ゆづりは》【俗字。】

讓葉木

      「枕草紙」に云はく、

     『由豆利葉《ゆづりは》』。

 

△按ずるに、木の高さ、五、七尺。樹≪の≫葉、茂《しげり》、盛《さかん》≪なり≫。畧《ちと》、「珊瑚樹」の葉に似て、大《おほき》く、色、稍《やや》、淺《あさし》。葉の莖、赤し。小≪さき≫白≪き≫花を開く。「柚柑《ゆかう》」の花に似≪たり≫。子《み》を結≪び≫、淺黒色≪なり≫。大いさ、「小豆《あづき》」のごとく、中≪に≫、仁《にん》、有り。新≪しき≫葉、既に生《しやう》じて、舊《ふる》≪き≫葉、落つ。父子《ふし》、相讓《あいひゆづ》るがごとし。故、俗、呼んで、「讓り葉」と曰ふ。都鄙《とひ》≪ともに≫、正月の鏡《かがみ》の餈(もち)、及び、門戶《もんこ》の飾りに用ふ。亦、「相續の義」を取る。

  「六帖」

    あどもへか

     あしくま山の

         ゆつる葉《は》の

      ふゝまる時に

             風吹かずかも


けら

計羅  【正字、未だ、詳かならず。】灌木にして、枝葉、頗≪る≫、「弓絃葉《ゆづりは》」に似≪たり≫。其の子《み》、赤≪く≫、攅-生《こごなり》して、「南天」の子のごとくして、顆(くわ)、大きく、庭園に植《うゑ》て、之≪れを≫賞す。俗、云ふ、「犬枇杷《いぬびは》」、卽ち、「夷果部《いくわぶ》」の「天仙果」なり。

 

[やぶちゃん注:この「讓葉木」の本邦での基亜種は、

双子葉植物綱ユキノシタ目ユズリハ科 Daphniphyllaceae ユズリハ属ユズリハ亜種ユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. macropodum

である。個人的に、私は、理由が上手く言えないが、同種の樹様が生理的に嫌いである。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。漢字表記は『楪・交譲木・譲葉・杠』。『春に新しい葉が出ると古い葉が場所を譲るように落ちて生え替わるようすが特に目立つことが特徴で、和名の由来になっている。別名、ウスバユズリハ』。『花の形態がトウダイグサ科』Euphorbiaceae(同科に含まれる種群は当該ウィキを見られたい)『に似るので、古くはトウダイグサ科に含められたが、雌蕊が』二『個(トウダイグサ科は)三『個)などの違いから、独立のユズリハ科』『とされた。APG分類体系ではユキノシタ目』Saxifragales『に入れられている』。『和名ユズリハは、春に枝先に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することに由来する』。『古名はユズルハ(弓弦葉)といわれ、葉の中にある主脈がはっきりと目立ち、弓の弦のように見えることに由来する。そこから発展した地方名(方言)としてツルノハというものもある』。『中国名は、薄葉虎皮楠(別名:交讓木)』。『日本の福島県以南・関東・東海地方以西の本州、四国、九州、沖縄と、日本国外では朝鮮半島南部、中国(中部から南西部)まで自然分布する』。『南限は鹿児島県徳之島』である。『日本の植栽可能地域では、東北地方南部より沖縄の地域となる。主に暖地の山地や広葉樹林内に自生する』。『常緑広葉樹』で、『高木の中でも中高木に分類され、高さは』四~十『メートル』『ほどになり、幹は直立して上部は多く枝分かれをし、前年葉をつけたこんもりした樹形となる。樹皮は灰褐色から茶褐色で、縦に筋が入る。若枝は赤みを帯びる』。『常緑樹でありながら、若葉に座を譲るように、春に古い葉が落ちて新しい葉と入れ替わる。この生え替わりのとき、古い葉のほうは、まだ濃い緑色をしていながらも、浅緑色の新葉の下に控えて残っている。葉は互生して、枝先にらせん状に集まってついて、葉身は垂れ下がる。葉身には光沢があり、長さは』八~二十『センチメートル』『ほどの長楕円形から倒披針形で、先端は短く尖り、基部はくさび形。葉の裏側は白みを帯びる。長さ』八~二十センチメートル『ほどある葉柄は赤紫色を帯び、本種の特徴にもなっている』。『花期は春から初夏(』四~六『月)、新葉が出るころに、前年枝の葉腋から長さ』四~八センチメートル『の総状花序を出して、花被(花弁と萼)がない小さな花を多数つける。雌雄異株で、雄花・雌花とも花色は黄緑色をしている』。『果期は』六~十二『月で、果実は長さ』十五~二十センチメートル『で、枝先に集まってつき』、十『月から』十一『月に熟して黒褐色になる』。『冬芽は葉柄の基部につき、紅色を帯びて、葉柄が変化した芽鱗に包まれる。葉痕は半円形で、維管束痕は』三『個ある』。『ダフニフィリン、ダフニマクリン、ユズリミン、ダフェニリンなどの複雑な骨格構造のアルカロイド(ユズリハアルカロイド)を多数含み、家畜が誤食すると』、『中毒の原因となる。さらに、ユズリハアルカロイドはその構造から全合成の対象としてよく取り上げられる』。『ユズリハは、新しい葉が古い葉と入れ替わるように出てくる性質から「親が子を育てて家が代々続いていく」ことを連想させる縁起木とされ、正月の鏡餅飾りや庭木に使われる』。『防火の機能を有する樹種(防火樹)としても知られる』。以下、「栽培」の項だが、厭な種なので、前半分の植生性質を除いて、カットする。『日陰か斑に影を好む性質で、根は深く張り、土壌は砂土はよく乾燥にも強い。生育の速度は遅い方で、若木のうちは剪定の必要もほとんどない』。『大きく目立つ葉は観賞用にもされ、白い斑入りが入る‘白覆輪ユズリハ’のほか、黄覆輪や黄中斑などの園芸品種があり、斑色の濃淡でいくつかの系統がある』。『「譲り葉」の縁起を担いで正月飾りに用いられるが、これには歳を譲るという意味もある』。『ユズリハに乗った年神(正月様)の降臨を歌った童謡は日本各地で見られる。ユズリハが年神の乗り物になった理由は、祖霊は次々と代を譲って新しい命へ生を繋げていくように、春になるとユズリハの新葉が芽吹くと、あたかも古葉が代を受け継ぐように落葉する様子を見て、後世の人々がそのユズリハの落ち葉に乗って祖霊は天上界へ昇ったと考えた。祖霊が帰るときも』、『同じ乗り物の帰ってくるだろうと想像したので、門松にユズリハを結んで帰るべき家の目印とした。また、常緑樹(常磐木)であることや、葉柄の赤い色が呪力があると信じられたことも、ユズリハが正月と結びついている理由である』。『地方名の「ツルノハ」は「弦の葉」から「鶴の葉」へと変化し、鶴は千年の長寿をもつおめでたい鳥とされていることから、ユズリハもめでたい葉となった』。「ユズリハ属」の項。『ユズリハ属』『は、ユズリハ科で唯一の属であ』り、『東アジアの温帯から東南アジア・インドに分布し』、全三十五『種からなる』として、十三種(亜種を含む)が掲げられている。本邦に植生するであろうタイプ基亜種以外のもののみを以下に示す。

○亜種エゾユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. humile (『ユズリハの矮性の亜種。日本の寒冷地(北海道から中部地方の日本海側)に分布する。高さ』一メートル『ほどの灌木で、ユズリハと同様に葉柄が赤い』)

○亜種品種アオジクユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. macropodum f. viridipes (別名「イヌユズリハ」で、『ユズリハの一品種』)

○品種フイリユズリハ Daphniphyllum macropodum f. variegatum (『ユズリハの品種』。別名「フクリンユズリハ」)

○ヒメユズリハ Daphniphyllum teijsmannii (『別名オヤコグサ、オオバユズリハ、アマミユズリハ、オキナワヒメユズリハ。ユズリハより小さく、花には』萼『がある。日本の暖地(福島県以南、沖縄)・台湾までの海岸近くに分布する』)

○変種スルガヒメユズリハ Daphniphyllum teijsmannii var. hisautii (『ヒメユズリハの一変種』)

○変種シマユズリハ Daphniphyllum teijsmannii var. oldhamii (別名「ナガバノヒメユズリハ」。同前の一変種)

「弓絃葉(ゆづるは)【「万葉」。】」「萬葉集」には、二首、載る。一つは、「卷第二」の、天武天皇の第九皇子(第六皇子とも)で二十七の若さで逝去した弓削皇子(ゆげのみこ)の一首(一一一番)。

   *

   吉野の宮に幸(いでま)しし時、
   弓削皇子の、額田王(ぬかたのお
   ほきみ)に贈り與(あた)へたる
   歌一首

 古(いにしへ)に

    戀ふる鳥かも

  弓絃葉の

     御井(みゐ)の上より

    鳴き渡り行く

   *

中西進氏の「万葉集 全訳注原文付」(一)(昭和五三(一九七八)年講談社文庫刊)の注によれば、この「古」は天武天皇在世時を指し、「鳥」はホトトギスを指す。『中国の伝説に蜀王が霍公鳥』(ホトトギス)『になって不如帰、不如帰と鳴きつつとんだという。この謎をかけた』とある。

 今一つは、「卷十四」の「譬喩謌(ひゆか)」の冒頭にある一首(三五七二番)。

   *

 何(あ)ど思(も)へか

  阿自久麻山(あじくなやま)の

   弓絃葉の

     含(ふふ)まる時に

    風吹かずかも

   *

同書の(三)で中西氏は、『どう思うからとて、阿自久麻山のゆずる葉が開き切らない時に、風が吹かないと言えようか。』と訳しておられる。「含(ふふ)まる」は『フフメルの訛り未成熟の少女の比喩。風吹く、は男が誘う比喩』とされ、一首は『ためらっていられない気持ちを歌』ったものと解説されておられる。

『「枕草紙」に云はく、『由豆利葉《ゆづりは》』』「枕草子」の所謂、「木尽し」の段の終りの方に出る。なお、良安が「六帖」(平安中期に成立した類題和歌集「古今和歌六帖」のこと。全六巻。編者・成立年ともに未詳。「万葉集」・「古今集」・「後撰集」などの歌約四千五百首を、歳時・天象・地儀・人事・動植物などの二十五項・五百十六題に分類したもの)から引いた「あどもへかあしくま山のゆづる葉《は》のふゝまる時に風吹かずかも」は、この一首である。

   *

 ゆづり葉の、いみじう、ふさやかにつやめき、莖(くき)は、いと赤き、きらきらしく見えたるこそ、あやしけれど、をかし。『なべての月には、見えぬものの、師走のつごもりのみ、時めきて、亡き人の食ひ物に敷くものにや。』と、あはれなるに、また、齡(よはひ)を延ぶる齒固(はがた)めの具にも、もてつかひためるは、いかなる世にか、「紅葉せむ世や」と言ひたるも、たのもし。

   *

ズバり、サイト「学習塾 ゆずり葉塾」の「ゆずり葉 豆知識」のここに、現代語訳と語注があるので参照されたい。

「珊瑚樹」双子葉植物綱マツムシソウ目ガマズミ科ガマズミ属サンゴジュ変種サンゴジュ Viburnum odoratissimum var. awabuki 。先行する「珊瑚樹」を見よ。

「柚柑《ゆかう》」現代仮名遣では「ゆこう」。ムクロジ目ミカン科ミカン属ユコウ Citrus yuko 。ミカン科の常緑小高木で、古くに自然交雑によって生じたミカン属ユズ Citrus junos の変種で日本原産。中国地方・四国で栽植する。果実はユズに似て、大きく、香りが高い。クエン酸製造に用いる。「ゆかん」とも呼ぶ。何故か、花の画像が見当たらない。見つけたら、追記する。

「けら」「計羅」「犬枇杷」『「夷果部《いくわぶ》」の「天仙果」なり』これは調べるに、なかなか難しいことになった。まず、この最後のそれは、「本草綱目」の「卷三十一」の「果之三夷果類」を指す。「漢籍リポジトリ」の、[077-27b]以下(ここは項目「無花果」(これは日中ともにバラ目クワ科イチジク属イチジク Ficus carica を指す)の「附録」の中にある「天仙果」(ここ。今回は当該部まで移動して呉れる)で、

   *

天仙果【出泗州樹高八九尺葉似荔枝而小無花而實子如櫻桃纍纍綴枝間六七月熟其味至甘宋祁方物賛云有子孫枝不花而實薄言采之味埒蜂蜜】

   *

を指していることが判った。一方、「犬枇杷」であるが、これは、

バラ目クワ科イチジク連イチジク属イヌビワ変種イヌビワ Ficus erecta var. erecta

を指していることが判った。而して、当該ウィキを見ると(注記号はカットした。太字・下線は私が附した)、『イヌビワ(犬枇杷、学名: Ficus erecta または Ficus erecta var. erecta)は、クワ科イチジク属の落葉低木から小高木。山野や海沿いに生える。別名ヤマビワ、イタビ、姫枇杷』。『果実(正確にはイチジク状果(☜)『という偽果の)一『種)がビワの実に似ていて食べられるが、ビワに比べ不味であることから「イヌビワ」の名がある。「イヌ」は劣るという意味である。「ビワ」とついていても』、ビワ(バラ科ナシ亜科シャリンバイ属ビワ Rhaphiolepis bibas の仲間ではなくイチジクの仲間で、ビワとは近縁関係にはない。イチジク渡来前の時代の日本では、本種は「イチジク」とよばれていたという驚くべき事実が記されてあるのである。『日本の本州(関東以西)・四国・九州・沖縄と、韓国の済州島に分布する。海岸や沿海の山地に自生する。特に関東地方から沖縄までの海岸沿いの照葉樹林の林縁に多く見られる』。『なお、イチジク属のものには熱帯性のものが多く、本種は落葉性を獲得したため、暖温帯まで進出できたものと考えられる。本種はイチジク属の木本としては本土で最も普通に見られるため、南西諸島などに分布する同属のものには「○○イヌビワ」という本種に比した名を持つものが多い』。『落葉広葉樹の低木から小高木で、高さは』五『メートル』『くらいまでになる。樹皮は灰白色でなめらか、一年枝はやや太く、緑色を帯びて無毛である。枝を』一『周するように、はっきりした托葉痕がある。樹皮に傷つけると』、『イチジクと同様に乳白色の樹液が出る』。『葉は狭い倒卵形から長楕円形、基部は』、『少し』、『心形か』、『丸まる。葉質は薄くて草質、表面は滑らかか』或いは、『短い毛が立っていて』、『ざらつく。変異が多く、海岸沿いでは厚い葉のものも見ることがある。ごく幅の狭い葉をつけるものをホソバイヌビワ』Ficus erecta var. sieboldii 、葉面に毛の多いものをケイヌビワ』Ficus erecta var. beecheyana 『というが、中間的なものもある。葉縁に鋸歯はない。秋には紅葉し、鮮やかな黄色や橙色に染まり、常緑樹林の中でよく目立つ。紅葉後は遅くまで落葉せずによく残っている』。『花期は晩春』四~五月頃『で、雌雄異株。葉の付け根についた花嚢(かのう)は、秋に赤色から黒紫色へと変化して果嚢(かのう)となる。イチジクを小さくしたような形の実をつける』。『果嚢は』九『月末から十月頃『に完熟し、見た目は小さなイチジク様で、直径』一~一・三センチメートル『の球形で長い柄があり、白い粉を吹いたような濃紫青色となる。果嚢は甘く、食用になる』。『冬芽はイチジクに似ていて、枝先の頂芽は円錐形で先が尖り、互生する側芽は球形や楕円形をしている。頂芽は無毛で芽鱗』二『枚に包まれている。側芽の芽鱗は』二~四『枚である。葉痕は円形や心形で、維管束痕は多数が輪状に並ぶ』とある。因みに、「維基百科」の当該種の中文標題は「矮小天仙果」(☜)なのである。

 ……しかし、ここで、私は、『うん?』と小首を捻った。……『この中文名、頭に「矮小」とあるぞ? ということは矮小じゃない正真正銘の「天仙果」がないとおかしいぞ?』と考えたのである。そこで「維基百科」の検索で「天仙果」を入れてみると、来た! 「台灣榕」! そこに(太字・下線は私が附した)、

   *

台灣天仙果(學名: Ficus formosana ),又名天仙果、羊奶頭、牛奶浦、台灣榕是桑科榕屬的植物,為多年生常綠灌木。分布在台灣、越南以及中國大陸的貴州、廣西、廣東、海南、湖南、江西、福建、浙江等地,生長於海拔200米至1,000米的地區,常生於溪溝旁濕潤處,目前已由人工引種栽培,全株皆可食用,適合種植期為每年春季,種植後約3-4年可以收穫。

   *

とあった! 早速、何時もの頼みの綱の「跡見群芳譜」で検索すると、しっかり、「樹木譜」の「イチジク」のページに、この学名が見いだせたのだった!(学名が斜体でないのはママ)

   《引用開始》

タイワンイヌビワ F. formosana(臺灣榕・長葉牛奶子)『中国本草図録』Ⅹ/4557

    f. shimadai(狹葉臺灣榕)

   《引用終了》

而して、この「本草綱目」の「天仙果」は、

バラ目クワ科イチジク連イチジク属タイワンイヌビワ Ficus formosana

であるのであった!

 しかし、ここで、まだ。問題が残っているのだった。標題名の「けら」「計羅」だ。これが、イササカ難物で、検索を重ねても、なかなか、ヒットしない。しかし、昼食を挟んで、性懲りもなく探り続けた結果、遂に、見出した!

――「東海国立大学機構学術デジタルアーカイブ」の「伊藤圭介文庫 錦窠図譜の世界」の「無花果科」の「巻次」「110-086」だ!(典拠は「熊野物產初志」で所蔵機関は「名古屋大学附属図書館」)――

である。そこにある翻刻文を元に、画像と比較し、正字で以下に示す。

   *

○ 『方物略』、「天仙果」、樹高八九尺、無花果葉似茘枝而小、子如櫻桃、纍纍綴枝間、六、七月熟、味至甘、賛曰有子孫枝不蘤而實薄言采之、味埒【蜂蜜。】。[『蜀中方物記』]

イ木六]「カハグルミ」、「天仙果」、八丈方言「イヌビハ」、葉、食用。

「天仙果」、「イヌヒハ」、方言「山カブチ」【「クマノ物產志」。】。

 ○鋸齒葉ノ「イヌビハ」アリ、葉ニ粗キ鋸歯アリ。

一、「イヌビハ」【「コイチジク」・「ナンキンイチジク」。】。「天仙果」、廿三綱【二目。】桑科。

蕁麻[やぶちゃん注:抹消線は黒。

  Ficus Sieboldi miq

    再考 F. pyrifolia boomヨシ

   トナル蠻國ニテハ大樹アリテ、根ノ間ヲ、人、往來スト云。

[やぶちゃん注:以下の「○」二項の上に右手に

別カ

とあり、次の二行の頭書の上下に向かって

赤線

が指示されてある。

(頭書右)『計羅【正字未詳。】。』

(同左)『俗云、「大枇杷」。』

とある。]

  ○一種 「天仙果」、アリ。

  ○一種 「天仙果」ノ細葉ノモノアリ、尾府ニテ「木香(モツコウ)ボク」ト云。伊勢州ニテ、

「チヽノキ」ト云。蠻名「ヒクユス」【「荷蘭」、シイボルト。】。

[やぶちゃん注:以下、同種の実の図四点(下方)の左に、

天仙果歟忘却。」

とある。「計羅」が、あった! これで、

「計羅」は「天仙果」=タイワンイヌビワ Ficus formosana を示す漢語であったことが判明したのであった!!!…………ン?……考えてみると……良安がタイワンイヌビワの生態個体を見ることは出来んじゃなかか! だのに、ユズリハの枝葉(グーグル画像検索。以下同じ)と似ているなどと、言うことはアリエナイのだ! 百歩譲って――タイワンイヌビワではなく、イヌビワだったとしても、イヌビワの枝葉は、ジェンジェン! ちゃうねんで!?! トホホ……又しても、良安のエエかげんな「似ている」のオオカミ少年かいなッツ!!!

« 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 伊比桐 | トップページ | 「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 三杈木 »