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2024/10/30

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 猿滑

 

Sarusuberi2

 

さるすへり 猴刺脫

猿滑

      俗云左留須倍利

 

 

△按樹葉同百日紅而葉畧厚四時不凋未見花實其樹

 無皮甚滑而猴猿亦不得登故呼名猴滑與百日紅一

 類二種也【百日紅冬葉凋有花猴滑四時不凋無花】二本同稠堅酒家用爲

 搾木 夫木足引の山のかけちのさるなめりすへらかにても世を渡らはや爲家

 

   *

 

さるすべり 猴刺脫《こうしだつ》

猿滑

      俗、云ふ、「左留須倍利《さるすべり》」。

 

 

△按ずるに、樹≪の≫葉、「百日紅《ひやくじつこう》」に同≪じく≫して、葉、畧《ちと》、厚《あつし》。四時、凋まず。未だ、花・實を見ず。其の樹、皮、無し。甚≪だ≫、滑かなり。猴猿≪も≫亦、登ることを得ず。故、呼んで「猴滑」と名づく。「百日紅」と一類二種なり【百日紅は、冬、葉、凋み、花、有り。猴滑は、四時、≪葉は≫凋まず、花、無し。】。二本、同≪じく≫稠(ねば)く、堅(かた)し。酒家≪さかや≫、用ひて、搾木(しめ《ぎ》)と爲《なす》。

 「夫木」

   足引《あしびき》の

       山のかげちの

      さるなめり

    すべらかにても

         世を渡らばや 爲家

 

[やぶちゃん注:この「猿滑」は、どう調べてみても、前項の「百日紅」と同一で、

双子葉植物綱フトモモ目ミソハギ科サルスベリ属サルスベリ Lagerstroemia indica

である。不稔性の異常個体ととるか、或いは、全く異なる樹木の誤認とでもするしかない。次の次で電子化する「山茶科」=ツツジ目リョウブ科リョウブ属リョウブ Clethra barbinervis を、地方によっては、「サルスベリ」と呼ぶが、樹体がまるで異なり、不稔種ではないので、違う。なお、「国際基督教大学図書館」公式サイト内の「みんなククノッチ」の「百日紅(サルスベリ)(2016年7月23日)」の記事で、本件の疑義が示されてあった。前の「百日紅」の記事への不審も記されているので、これを掲げて、本注は早々に御いとま致そうと存ずる。

   《引用開始》

◆ 寺島良安『和漢三才図会』の「百日紅(ひやくじつかう)」の項によれば、案樹似柘榴木而無皮、葉似夏黄櫨而冬凋落。七月初至九月有花、浅紫紅色映山谷故名百日紅。随結子?簇不熟而凋、挿其枝良能活、とのことです。マイ素人読み下しをさせて頂くと「考えるところ、この樹はザクロに似て皮は無い。葉はナツハゼに似て冬は落ちる。7月から9月にかけて紫がかったピンクの花が咲き、野に映えるので百日紅と呼ばれる。実は集まってつき、熟す前に萎んでしまう。挿し木してもよく育つ」ですかね。うん、たしかにこれは現在のサルスベリの特徴が捉えられている。気になるのは山谷に映えるというところと、実が熟す前に萎むという点。山には生えてないと思うんだよねえ。あと熟さず萎んじゃう実についてはククノッチも意識して見た事がないのでこの秋に確認が必要だな。と、ここまでは良かったんだけど、百日紅の次の項目を見てビックリ。「猿滑(さるすべり)」。ええー!? 百日紅と猿滑が別の木扱いになってるよ。こちらの解説は以下の通り「案樹葉同百日紅而葉略厚。四時不凋、未見花實。其樹無皮甚滑而猿猴亦不得登故呼名猿滑與」。えーと、「考えるところ、百日紅と同じ葉で多少厚め。常緑で花や実は無い(目立たない?)。樹皮は無くとても滑らかで猿も登れないとも言われるのでこの名がある」。そしてこのあとが肝心の部分。「百日紅一類二種也(百日紅冬葉凋有花)(猿滑四時不凋無花)二本同稠堅酒家用為搾木」。つまり、「百日紅には2種類あって、1つは「百日紅」で花が咲く落葉樹、もう一種類は「猿滑」で花が咲かない(目立たない?)常緑樹。どちらも粘りのある堅い材木となるので酒造において酒を搾るための搾木(しめぎ)として使われる」とある。えー、ほんとうかなー? 花の咲かない常緑のサルスベリは果たして本当にあるのでしょうか? それに伝統的酒造の作業工程である酒槽(さかぶね)で使われる搾木(しめぎ)って相当大きい。23メートルはある巨大な部品で、モノノホンではケヤキ材と書いてあった。そんな大木、サルスベリにはそうそうないんじゃないかなあ。これまたナゾです。

   《引用終了》]

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