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2024/10/15

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 藤天蓼

 

Matatabi2

 

[やぶちゃん注:右下方にマタタビの実の図が添えられてある。]

 

またゝび   今云末太太比

 

藤天蓼

       【有三種中其

        木天蓼小天

        蓼之二品不

        多有】

 

本綱藤天蓼生江南淮南山中作藤蔓葉似柘花白子如

棗許無定形中瓤似茄子味辛噉之以當薑蓼

枝葉【辛温有小毒】 治癥結積聚風勞虛冷

子【苦辛微熱】 治𮚆風口靣喎斜氣塊女子虛勞

[やぶちゃん字注:「𮚆」は「賊」の異体字。]

△按藤天蓼備中伊豫遠州和州丹波山中多有之今人

 家亦植之其蔓蒼黒葉似柘及櫻桃葉而皺三四月開

 小白花狀似梅花而小結實伹有雌雄雌者實狀如五

 倍子而青色雄者實狀如棗人採其嫩葉合酸未醬食

 之猫常喜食之如視此樹則抓穿根食皮爲之枯凡病

 猫食天蓼子起也人又盬漬食之

 

   *

 

またゝび   今、云ふ、「末太太比」。

 

藤天蓼

       【三種、有≪る≫其の中《うち》、

        「木天蓼《もくてんれう》」・「小天

        蓼《しやうてんれう》」の二品は、

        多≪くは≫有らず。】

 

「本綱」に曰はく、『藤天蓼、江南[やぶちゃん注:現在の江蘇省・浙江省。]・淮南《わいなん》[やぶちゃん注:現在の安徽省中部の淮南市を中心とした広域。]の山中に生ず。藤蔓(《ふじ》づる)≪の樣なる蔓≫を作《な》す。葉、「柘(やまぐは)」に似、花、白し。子《み》、「棗《なつめ》」許《ほど》のごとく≪にして≫、定《さだま》れる形、無し。中の瓤(み)[やぶちゃん注:「綿(わた)」。]、茄子に似て、味、辛し。之れ≪を≫噉《く》らふ。以つて、薑(はじかみ)・蓼(たで)に當《あ》つ[やぶちゃん注:~のようなものとして食物(香辛料)に当てる。]。』≪と≫。

『枝・葉【辛、温。小毒、有り、】』『癥結積聚《ちようけつしやくじゆ》・風勞虛冷《ふうらうきよれい》を治す。』≪と≫。

『子【苦辛、微熱。】』『𮚆風口靣喎斜《ぞくふうこうくわしや》・氣塊《きくわい》・女子≪の≫虛勞を治す。』≪と≫。

[やぶちゃん字注:「𮚆」は「賊」の異体字。]

△按ずるに、藤天蓼《またたび》は、備中[やぶちゃん注:現在の岡山県西部。]・伊豫[やぶちゃん注:愛媛県。]・遠州・和州・丹波≪の≫山中、多く、之れ、有り。今、人家にも亦、之れを植う。其の蔓、蒼黒。葉、「柘《やまぐは》」、及び、「櫻桃(ゆすらむめ)」の葉に似て、皺(しは)み《✕→む》。三、四月、小≪さき≫白≪き≫花を開く。狀《かたち》、梅の花に似にて、小《ちいさ》し。實を結ぶ。伹《ただし》、雌雄、有り、雌なる者の實は、狀、「五倍子《ふし》」のごとくして、青色。雄≪なる≫者の實は、狀、棗のごとし。人、其の嫩葉(わか《ば》)を採り、酸未醬《すみそ》[やぶちゃん注:酢味噌。]に合《あはせ》て、之れを食す。猫、常に、喜んで、之れを食ふ。此の樹を視る時は[やぶちゃん注:「時」は送り仮名にある。]、則ち、根を抓穿(かき《うが》)ち、皮を食ふ。之れが爲《ため》に、枯《かる》る。凡そ、病≪める≫猫、天蓼子《またたびのみ》を食へば、起《たつ》なり。人、又、盬《しほ》漬に《つけ》て、之れを食ふ。

 

[やぶちゃん注:これは、前項の「木天蓼」全くの同種で、

双子葉植物綱ツバキ目マタタビ科マタタビ属マタタビ Actinidia polygama

であるので、そちらの私の注を見られたい。全くの同一種であることは、中文サイト「腾讯网」の「木天蓼是什么神奇植物?」の「木天蓼是什么?」の条に、『木天蓼为猕猴桃科植物木天蓼(Actinidia polygama (Sieb. et Zucc.) Mip.)的枝叶。分布于我国北、西北及西、山、湖南、湖北、四川、浙江、云南等地。』(学名が斜体でないはママ)とし、『味辛,性温。肝、肾经。具有祛除湿,温止痛,症瘕的功效。治半身不遂,寒湿痹,腰疼,疝痛,症瘕聚,气痢,白癞风等病症。』とした後に、『别名:天蓼、藤天蓼、』(☜)『天蓼木、金枝、葛枣猕猴桃。』『猫猫的虫果也是木天蓼的物。在每年三到五月的候,在木天蓼花开之前,有固定品种昆虫在花蕾中卵,并形成了凹凸不平的旋状果,而非正常的椭圆形果种虫干燥后可用作人类草,同来欣快感。』とあることで、確認出来た。

 「本草綱目」の引用も、「漢籍リポジトリ」の「木之三」「灌木類」の「木天蓼」([088-77b]以下)のパッチワークであるが、ここで、良安は、引用書で「木天蓼」で一括されている項から、わざわざ、分離して別項を立ててしまい、しかも、「本草綱目」の解説も、以下に示すように、殆んどの部分は、時珍ではない先達の本草学者たち(陳蔵器ほか)が記載した内容引用部の多くを、わざわざ、ここに当てて、あたかも、「本草綱目」が二種を同属別種ででもあるかのように書いたように、良安は改竄して部分引用した上、挿絵さえも、明らかに異なる同じ仲間の別種であるかのように描いてしまっているのである。しかも、良安の解説は、その違いを自分の表現では語っていない、というか、二つの項目名の下の和名でどちらも同じ「マタタビ」であることを指示しているという、甚だ不審な、今までなかった摩訶不思議な分離項記載となってしまっているのである。ともかく、「本草綱目」の「木天蓼」の項を総て掲げなくてはなるまい。良安が引用した部分を下線で、カットした記載者提示部分に太字で示した(「漢籍リポジトリ」のものの一部の表記に手を加えた)。

   *

木天蓼【唐本草】  校正【併入拾遺小天蓼】

釈名【時珍曰其樹高而味辛如蓼故名又馬蓼亦名大蓼而物異】

集解恭曰木天蓼所在皆有生山谷中今安州申州作藤蔓葉似柘花白子如棗許無定形中瓤似茄子味辛噉之以當薑蓼藏器曰木蓼今時所用出山南鳯州樹高如冬青不凋不當以藤天蓼爲注既云木蓼豈是藤生自有藤蓼耳藤蓼生江南淮南山中藤着樹生葉如梨光而薄子如棗卽蘇恭以爲木天蓼者又有小天蓼生天目山四明山樹如巵子冬月不凋野獸食之是有三天蓼俱能逐風而小者爲勝頌曰木天蓼今出信陽木高二三丈三月四月開花似柘花五月采子子作毬形似檾麻子可藏作果食蘇恭所說自是藤天蓼也時珍曰天蓼雖有三種而功用彷彿蓋一類也其子可爲燭其芽可食故陸機云木蓼爲燭明如胡麻薛田詠蜀詩有地丁葉嫩和嵐采天蓼芽新入粉煎之句

枝葉氣味辛溫有小毒治癥結積聚風勞虛冷細切釀酒飮【唐本】

附方【舊一新二】天蓼酒【治風立有奇效木天蓼一斤去皮細剉以生絹盛入好酒三斗浸之春夏一七秋冬二七日毎空心日午下晚各溫一盞飮若常服只飮一次老幼臨時加減 聖惠方】氣痢不止【寒食一百五日采木蓼暴乾用時爲末粥飮服一錢 聖惠方】大風白癩【天蓼刮去粗皮剉四兩水一斗煎汁一升煮糯米作粥空心食之病在上吐出在中汗出在下泄出避風 又方天蓼三斤天麻一斤半生剉以水三斗五升煎一斗去滓石器慢煎如餳每服半匙荆芥薄荷酒下日二夜一一月見效 聖惠方】

小天蓼氣味甘溫無毒主治一切風虛羸冷手足疼痺無論老幼輕重浸酒及煮汁服之十許日覺皮膚間風出如蟲行【藏器】

發明【藏器曰木天蓼出深山中人云久服損壽以其逐風損氣故也藤天蓼小天蓼三者俱能逐風其中優劣小者爲勝】

氣味苦辛微熱無毒主治賊風口面喎斜冷痃癖氣塊女子虛勞【甄權】

根主治風蟲牙痛搗丸塞之連易四五次除根勿嚥汁【時珍濟出普】

   *

これでは、多くの一般読者は全体を読むのを諦めるであろうからして、例の国立国会図書館デジタルコレクションの『新註校定国訳本草綱目』第九冊(鈴木真海訳(旧版をスライドさせたもの)・白井光太郎(旧版監修・校注)/新註版:木村康一監修・北村四郎(植物部校定)・一九七五年春陽堂書店刊)の当該部「木天蓼」をリンクさせておくので、そちらの現代語訳を見られたい。少しだけ、大事な部分を引用すると、「藏器」の引用部で、「藤天蓼」に就いて、『木蓼』を解説している中で、『藤天蓼を以て註說するは當らない。木蓼というふからには藤生であらう筈はない。これ以外に自ら』(おのづから)『藤蓼といふものがあるので、藤蓼は江南、淮南の山中に生じ、藤が樹に著いて生え、葉は梨やう』『で光つて薄く、子は棗のやうなものだ。卽ち、蘇恭が木天蓼としたそのものである。又、小天蓼といふのがあつて、天目山、四明山に生じ、樹は巵子のやうで冬期にも凋まない。野獸がこれを食ふ。かく三種の天蓼があつて、いづれも能く風』(疾患としての風邪)『を逐ふものだが、小さきものが勝れてゐる。』とある。これは、前項の「木天蓼」で述べなかったが、そこの項目標題下に ドン! と物々しく置かれた『木天蓼』・『小天蓼』・『藤天蓼」という『三種』というのは、別種や亜種ではなく、地方名か、異なる成長期の個体の呼び名か、単なる個体変異(群)であると断定してよいのである。

「柘(やまぐは)」良安先生のルビは、アウトである。先行する「柘」で散々ぱら、比定同定に苦しんだ結果、私がほうほうの体(てい)で辿り着いた、「柘」の正体は、

双子葉植物綱バラ目クワ科クワ属ヤマグワ Morus austrails ではなく、

〇双子葉植物綱バラ目クワ科ハリグワ連(ハリグワ属一属のみの短型連)ハリグワ属ハリグワ Maclura tricuspidata が「柘」の正体だった

からである。

「棗《なつめ》」バラ目クロウメモドキ科ナツメ属ナツメ Ziziphus jujuba var. inermis (南ヨーロッパ原産、或いは、中国北部の原産とも言われる。伝来は、奈良時代以前とされている。

「茄子」ナス目ナス科ナス属ナス Solanum melongena 。脱線だが、私の「老媼茶話 群居解頤曰(嶺南の茄子の大樹)」は、ちょいと、面白いぞ。

「薑(はじかみ)」漢方生薬としては「良姜」で、ショウガ目ショウガ科ハナミョウガ属 Alpinia の根茎を乾したものを指すが、ここは、生の、或いは、酢漬けのそれである。

「蓼(たで)」「檉柳」で既出既注だが、再掲すると、ナデシコ目タデ科 Polygonaceae、或いは、旧タデ属 Polygonum でやめておいた方が無難かと思う。本邦では、単に「蓼」と言った場合、狭義には(私は、最初のイヌタデを想起するが)、

タデ科 Polygonoideae タデ亜科 Persicarieae 連 Persicariinae 亜連イヌタデ属イヌタデ  Persicaria longiseta

或いは、より一般的には、

同属ヤナギタデ Persicaria hydropiper

を指すのであるが、「維基百科」を見ると、タデ科は「蓼科 Polygonaceae」で問題ないのだが、タデ属(但し、現在はタデ属はなくなり、現在は別名の八属に分れている。しかし、それを問題にし出すと、中国のずっと過去の種同定には、ますます辿りつき難くなってしまうのでタデ属で採った)を見ると、「萹蓄属」とあり(但し、別に「蓼属」ともする)、また、本邦のヤナギタデは「水蓼」とあったからである(日中辞典も同じ。因みに、イヌタデ属は「長鬃蓼」「馬蓼」である)。

「癥結積聚《ちようけつしやくじゆ》」東洋文庫の割注に『(腸にできる塊。腸腫瘍)』とある。

「風勞虛冷《ふうらうきよれい》」東洋文庫の割注に『(風邪で咳嗽(せき)・ねあせなどがあり、身体が衰弱するもの)』とある。

「𮚆風口靣喎斜《ぞくふうこうくわしや》」東洋文庫の割注に『(痛風で口や顔がけいれんして歪(ゆが)むこと)』とある。

「氣塊《きくわい》」よく判らんが、漢方「氣滯」があり、体内の「気」のめぐりが滞(とどこお)ることを指すから、それが、放置されて、重度の状態である塊りとなって、経脈を塞いでしまう病態を指すか。

「虛勞」東洋文庫の割注に『(疲労・栄養不良による衰弱)』とある。

「柘《やまぐは》」ここは、バラ目クワ科クワ属ヤマグワ Morus bombycis でよい。既に述べているが、本邦の「柘」は、古名で二種を指し、今一つは、ツゲ(柘植)目ツゲ科ツゲ属ツゲ変種ツゲ Buxus microphylla var. japonica であるので、和文で本邦に植生する植物を漢字のみで蘂した場合は、注意が必要である。

「櫻桃(ゆすらむめ)」複数回既出既注。バラ目バラ科サクラ属ユスラウメ Prunus tomentosa 。うす甘い、サクランボに似た味のする赤い実で知られる。詳しくは、当該ウィキを見られたい。

「五倍子《ふし》」これも複数回既出既注。白膠木(ぬるで:ムクロジ目ウルシ科ヌルデ属ヌルデ変種ヌルデ Rhus javanica var. chinensis の虫癭(ちゅうえい)。本プロジェクトの冒頭の「柏」の注を見られたい。]

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