和漢三才圖會卷第八十五 寓木類 附 苞木類 樹竹之用 節 / 卷第八十五~了
[やぶちゃん注:本項を以って、「卷第八十五 寓木類」は終わっている。因みに、カテゴリ『「和漢三才圖會」植物部』を開始した本年四月二十七日から今日まで、二百九日、記事投稿は全二百二十三件で、四巻目の終了となった。]
[やぶちゃん注:支持線附きのキャプションがある。右上に「節」、中央下方に「筍」、左中央に「筠」(あをかは)、左下方に「籜」(たけのかは)である。]
ふし
節【音切】
△按竹中隔而不通者曰節【和訓布之】 两節閒俗云與 竹
青皮曰筠【音云】禮記云猶竹箭之有筠 筍皮曰籜
凡竹物之有筋節者也筋節字从竹
*
ふし
節【音「切《セツ》」。】
△按ずるに、竹の中《うち》、隔《へだて》て、通≪ぜざる≫者を、「節《せつ》」と曰《いふ》【和訓、「布之《ふし》」。】。
[やぶちゃん注:以下、前「樹」と同様、字空けのある箇所で、項と採り、改行して訓読する。]
「两節《りやうふし》の閒《あひだ》」、俗、「與(よ)」と云《いふ》。
「竹の青皮《あをかは》」を、「筠(あをかは)」【音「云《イン》」。[やぶちゃん注:ママ。不審。「筠」の音は「ヰン」である。]】と曰ふ。「禮記《らいき》」に云はく、『猶≪ほ≫、竹箭《ちくせん》の「筠《ヰン》」の有るがごとし。』≪と≫。
「筍の皮」を、「籜(たけのかは)」と曰《いふ》。
凡そ、竹は、物《もの》の筋節《きんせつ》、有《あ》る者なり。「筋」「節」の字、竹に从《したが》ふ。
[やぶちゃん注:『「禮記」に云はく、『猶≪ほ≫、竹箭《ちくせん》の「筠《ウン》」の有るがごとし。』』これは、「禮記」の「禮器」の冒頭に、
*
禮器、是故大備。大備、盛德也。禮釋回、增美質、措則正、施則行。其在人也、如竹箭之有筠也、如松柏之有心也。二者居天下之大端矣。故貫四時而不改柯易葉。故君子有禮、則外諧而內無怨、故物無不懷仁、鬼神饗德。
*
とあるのを指す。国立国会図書館デジタルコレクションの宇野精一・平岡武夫編集になる『全釈漢文大系』第十三巻「礼記 中」(一九七七年集英社刊)の当該部の訓読を示す(幸いにして正字である)。
*
禮(れい)は器(き)とす。是(こ)の故(ゆゑ)に、大いに備(そな)はる。大いに備はるは、盛德(せいとく)なり。禮は、回(まが)れるを釋(す)て、美質を增す。措(お)けば、則ち、正しく、施(ほどこ)せば、則ち、行(おこな)はる。其の人の在(あ)るや、竹箭(ちくせん)の、筠(ゐん)、有るがごとく、松柏(しようはく)の、心(しん)、有るがごときなり。二つの者、天下の大端(だいたん)に居(を)る。故に、四時を貫きて、柯(えだ)を改め、葉を易(か)へず。故に、君子、禮、有れば、則ち、外(そと)、諧(かな)ひて、內(うち)、怨(うら)み、無し。故に、物、仁(じん)に懷(なつ)かざる無く、鬼神、德を饗(う)く。
*
概ね、意味は取れる。苦手な方は、リンク先に「通釈」があるので、見られたいが、にしても、良安の引用は、不全に過ぎる。前の被比喩対象である、『其の人の在るや、』を入れないと、一般の者には半可通だ。東洋文庫訳も、それを、『「(人間にとって礼が必要なことは)ちょうど竹箭』(ちくせん:通常の竹と、短い竹)『に筠』(いん:竹の青い皮。稈(幹相当)の、円形で堅い部分。)『のあるようなものである。」(礼器)』と、そこを補って訳されてあるのは、まことに正当である。]
« 和漢三才圖會卷第八十五 寓木類 附 苞木類 樹竹之用 樹 | トップページ | ブログ・カテゴリ「西尾正」創始・「海蛇」やぶちゃん版校訂本文+オリジナル注附 »