和漢三才圖會卷第八十五 寓木類 琥珀
[やぶちゃん注:下方に、蜂らしきものの他に、昆虫らしきものと、何かの三種が封じ込まれてあるのが、描かれてある。]
こはく 江珠
【梵書名阿
濕摩揭婆】
琥珀
【虎死則精魄入地
化爲石琥珀狀似
之故謂虎珀俗作
フウベツ 琥珀】
本綱琥珀是松樹枝節榮盛時爲炎日所灼流脂出樹身
外日漸厚大因堕土中津潤歳久爲土所渗泄而光瑩之
體獨存今尚有粘性故以手心摩熱能拾芥【芥者卽禾草也】
䖝蟻有于中者乃未入土時所粘也楓脂入地千年變爲
[やぶちゃん注:「䖝」は「虫(蟲)」の訛字(誤用慣用漢字)である。]
琥珀不獨松脂變也或茯苓千年化琥珀之說誤傳也伏
[やぶちゃん注:「伏」は「本草綱目」のママ。前項の「茯苓」に、異名として「伏靈」があり、「維基百科」の「茯苓」にもそれがあるから、「伏苓」も、音通で、ありだろう。]
苓生于陰而成于陽琥珀生于陽成于陰二物皆自松出
而所禀各異其類有數種西戎之產色差淡而明徹南方
之產色㴱而重濁彼土人多輾爲物形出高麗倭國者色
㴱紅有蜂蟻松枝者佳
紅松脂如琥珀而只濁大脆文橫者 水珀多無紅色
如淺黃多皺文 石珀如石重色黃不堪用 花珀文
似新馬尾松心文一路赤一路黃 物象珀其內自有
物命 瑿珀卽是衆珀之長也 蠟珀色黃而明瑩者
也 香珀有香氣者也
琥珀【甘平】 定魂魄消瘀血通五淋明目合金瘡能通小
便若血少不利者不可用反致其燥急之苦
五雜組云琥珀謂松楓之精液多年所化恐皆未必然中
國松楓二木不乏何𠙚得有琥珀而夷國產琥珀者此自
天地所生一種珍寶又如水晶云千年老水所化果爾則
宜出於北方沍寒之地而南方無氷却有水精可知其說
之無稽矣琥珀血珀爲上金珀次之蠟珀最下人以拾芥
爲眞者亦非也僞者傅之以藥其拾芥捷
△按琥珀出於雲南之永昌又自阿蘭陀用琥珀作物形
或琥珀油等將來也今有金珀銀珀蠟珀三種以色名
之而中𬜻本朝共琥珀未嘗有之謝肇成之辨可也然
時珍所謂倭國琥珀深紅者甚非也倭薫陸能相似而
吸塵或有夾蜂蟻者故以爲琥珀乎伹𤋱火試之眞者
[やぶちゃん注:「𤋱」は「薫」の異体字。]
有香氣𤋱陸有微臭氣
*
こはく 江珠《こうしゆ》
【梵書、「阿濕摩揭婆《あしばけいば》」
と名づく。】
琥珀
【虎、死すれば、則ち、精、魄《はく》、
地に入り、化《け》して、石と爲り、
琥珀、狀《かたち》、之れに似る。故、
「虎珀」と謂ひ、俗、「琥珀」と作《な》
フウベツ す。】
「本綱」に曰はく、『琥珀、是れ、松《まつ》≪の≫樹≪の≫枝・節、榮-盛《さかん》≪なる≫時、炎日《えんじつ》[やぶちゃん注:強烈な太陽光。]の爲めに、灼《やかれ》、流《ながさ》れて、脂《やに》、樹身《じゆしん》の外《そと》に出《いで》て、日《ひ》の、漸《やうや》く≪經(へ)て≫、厚大《かうだい》して、因りて、土中に堕ち、津潤《しんじゆん》[やぶちゃん注:水分が充分に浸透すること。]、歳久《としひさしく》して、土《つち》の爲めに、渗泄せられて[やぶちゃん注:滲み出されて。]、光瑩《くわうはう》[やぶちゃん注:光り輝くこと。]の體《たい》、獨り、存す。今、尚を[やぶちゃん注:ママ。]粘-性(ねばり)。有り。故、手-心(たなごゝろ)を以つて、摩《す》り、熱して、能く、芥(ちり)を拾ふ【芥は、卽ち、禾草《くわさう》[やぶちゃん注:単子葉植物綱イネ目イネ科 Poaceaeの植物の総称。]なり。】』≪と≫。
『䖝《むし》・蟻、中に有る者≪は≫、乃《すなはち》、未だ、土に入《いら》ざる時、粘《ねばり》する所≪の者≫なり。楓脂《ふうし》、地に入《いる》ること、千年、變じて、琥珀と爲《なる》。獨り、松脂の變ずるのみならざるなり。或いは、茯苓、千年して、琥珀に化《け》する說は、誤傳なり。伏苓[やぶちゃん注:「茯苓」に同じ。]は、陰《いん》に生じて、陽と成る。琥珀は陽に生じて、陰と成る。二物、皆、松より出でて、禀(う)くる所、各《おのおの》、異《い》なり。其の類《るゐ》、數種、有り。西戎《せいじゆう》[やぶちゃん注:中国の西方の異民族の地方を指す。]の產、色、差(やゝ)淡くして、明徹《めいてつ》なり。南方の產、色、㴱《ふかく》して、重《おもく》、濁《にごれる》なり。彼の土人、多《おほく》、輾(き)りて、物の形と爲《なして》、高麗・倭國に出《いづ》る者、色、㴱紅なり。蜂・蟻・松≪の≫枝、有る者、佳なり。』≪と≫。
『紅松脂《こうしようやに》は、琥珀のごとくして、只、濁《にごり》≪て≫、大《おほきに》脆(もろ)く、文《もん》、橫(よこた)はる者なり』。『水珀《すいはく》は、多《おほく》、紅色、無≪く≫、淺黃のごとき、皺文《しはもん》、多し』。『石珀は、石のごとく、重く、色、黃。用《もちふ》るに堪へず』。『花珀は、文、新《わかき》「馬尾松」の心《しん》[やぶちゃん注:芯。]に似て、文、一路は、赤、一路は、黃なり』。『物象珀《ぶつしやうはく》は、其の內に、自《おのづか》ら、物命《ぶつめい》[やぶちゃん注:生命。]、有り』。『瑿珀《えいはく》は、卽ち、是れ、衆珀《しゆはく》の長《ちやう》なり』。『蠟珀は、色、黃にして明瑩《めいほう》[やぶちゃん注:明るき輝き。]なる者なり』。『香珀は、香氣、有る者なり』≪と≫。
『琥珀【甘、平。】』『魂魄を定め、瘀血(をけつ[やぶちゃん注:ママ。「おけつ」。血液のの滞留を言う。])を消し、五淋を通じ、目を明《あきらか》にし、金瘡《かなさう》を合《あは》≪せ≫、能く、小便を通ず。若《も》し、血、少くして、利せざる者には、用ふべからず。反《かへつ》て、其の燥急《さうきふ》[やぶちゃん注:苛立ち、急ぐこと。]の苦《くるし》みを致す。』≪と≫。
「五雜組」に云はく、『琥珀は謂はく、「松・楓《ふう》の精液、多年、化《け》する所。」と。《而れども、》恐らくは、皆、未だ、必《かならず》≪しも≫然《しか》らず。中國に、松・楓、二木、乏(とぼ)しからず。何《いづこ》の𠙚に≪か≫、琥珀、有るを、得ん。而《し》かも、夷國《いこく》[やぶちゃん注:中国の東の異民族の地方を指す。]に琥珀を產(いた)すことは、此れ、自《おのづか》ら、天地、生《せい》する所の、一種、珍寶なり。又、水晶のごときも、云はく、「千年≪の≫老水、化する所なり」と。果《はた》して爾(しか)らば、則ち、宜しく、北方沍寒《ごかん》[やぶちゃん注:固く凍って寒いこと。]の地に出《い》づべし。而《しかも》、南方には、氷、無し。却《かへつ》て、水精《すいしやう》、有り。其の說の、稽《かんが》ふること無《なき》ことを知るべし。琥珀は、血珀《けつはく》を上《じやう》と爲し、金珀《きんはく》、之れに次ぐ。蠟珀は最≪も≫下《げ》なり。人、芥《ちり》を拾≪ひて≫、以≪つて≫、眞と爲《なす》者も、亦、非なり。僞る者、之れに傅《つ》くるに、藥を以つて、其れ、芥を拾《ひろふ》こと、捷(すみや)かなり。』≪と≫。
△按ずるに、琥珀、雲南の永昌より出づ。又、阿蘭陀より、琥珀を用《もちひ》て、物≪の≫形を作り、或いは、琥珀の油等を將來す。今、金珀・銀珀・蠟珀、三種、有り、色を以つて、之れを、名づけて、中𬜻・本朝、共に、琥珀、未だ嘗つて、之れ、有らず。謝肇成[やぶちゃん注:「五雜組」の著者「謝肇淛《しやちてうせい》」(現代仮名遣「しゃちょうせい」)の誤り。]が辨、可なり。然《しかる》に、時珍の所謂《いはゆ》る、『倭國の琥珀、深紅なり。』とは、甚だ、非なり。倭の「薫陸《くんろく》」、能く、相似《あひに》て、塵《ちり》を吸ふ、或いは、蜂・蟻を夾《はさ》む者、有る故、以つて、「琥珀」と爲(おも)へるか。伹《ただし》、火に𤋱《くん》じて、之れを試《こころみ》るに、眞なる者、香氣、有り。𤋱陸は、微《やや》、臭氣(くさきかざ)、有り。
[やぶちゃん注:「琥珀」は、英語で“amber”(アンバー)の、
天然樹脂の化石
で、古来より「宝石」として扱われてきたものである。以下の引用によれば、琥珀の代表的な一種は、
バルト海沿岸地域に古代に生育した、裸子植物門マツ綱マツ目マツ科マツ属アカマツ Pinus densiflora
の樹脂であると述べている。されば、これは、前項の「茯苓」が、旧態の博物学の範疇であったものが、ここでは、
樹脂の地質学的時間をドライヴしてきたものとして、この「寓木類」の二番目に在って相応しいもの
と言ってよいのものであることが明らかになるのである。
当該ウィキによれば(以下、部分的に引く。注記号はカットした)。『半化石の琥珀は』、『コーパル』(英語:Copal)、『加熱圧縮成形した再生コハクはアンブロイド』(英語: ambroid)と呼ぶ。『西洋でも東洋でも宝飾品として珍重されてきた』。『硬度は天然樹脂よりは硬く、色は飴色、黄色を帯びた茶色』、乃至、『黄金色に近い』。『「琥」の文字は、中国において虎が死後に石になったものだと信じられていたことに由来する。日本の産地である岩手県久慈市の方言では、「くんのこ(薫陸香)」と呼ばれる』。『英名 amber はアラビア語』の「龍涎香」(アンバーグリス(Ambergris):ベゾアール)』(Bezoar:ベゾアール石。動物の消化器などに発生した見つかる結石の一種で、マッコウクジラの腸内に発生する結石であり、香料の一種である)を指す語『に由来する』。『古代ギリシアではエーレクトロン』(ラテン文字転写『ḗlektron』『と呼ばれる。ただし』、『この語は』、『金の合金や銀の合金を意味することもある』。『elector』(ラテン文字転写(ēléktōr)『と関連があるとされた』、この語には、『照らす太陽、四元素説の火、あるいは太陽神の一名』、『という意味がある』。『英語で電気を意味する electricity は』、『琥珀を擦ると静電気を生じることに由来している』。『古代ローマでは、 electrum、sucinum (succinum)、glaesum、glesumなどと呼ばれていた』。『ベルンシュタイン(ドイツ語:Bernstein)はドイツ語で「燃える石」の意で、琥珀を指す。これは可燃性である石であることから名づけられた』。“amber”『(琥珀)の定義は、分野や人によって違う。狭義にはサクシナイト』(Succinite:個人サイト「鉱物たちの庭」の「こはく(サクシナイト) -マレーシア、ボルネオ島産」のページによれば、『ラテン語のサクシナム(樹液)に因む言葉で』、琥珀『を意味するものらしい。(ローマ人はコハクをサクシヌス Succinus』、『ギリシャ人はエレクトロン』『と呼んだ』とあり、『スレブロドリスキー著「こはく」によれば、Succinite は現在のバルト海沿岸地域に古代に生育したアカマツのラテン名という。そしてこの地域に産する良質の琥珀を指すようになった』とあった)『だけに限定する者もいる。しかし』、『他の化石樹脂も』 “amber” 『と呼ばれることが多い』。一八九五『年出版』の‘ A system of mineralogy ’ の第六版『(直訳:「鉱物学体系」。『ジェームズ・デーナ、エドワード・デーナ』(James Dwight Dana (父)・Edward Salisbury Dana(息子))『著)では、バルト海産に多い琥珀をサクシナイトと呼んだ。サクシナイトの特徴は』、『コハク酸を多く含むことである。これに対し』、『コハク酸が少ない琥珀類似の物質は総称してレチナイト』(resinite)『と呼ばれた』。二十『世紀末以降、琥珀は鉱物の分類からは除外されるようになった』。一九九五『年に』、『国際鉱物学連合は原則として地質学的過程でできた物質だけを鉱物と定義し』、『サクシナイトは』、二〇二四『年時点の鉱物一覧表に含まれていない』。一九九七『年出版の』‘ Dana's new mineralogy ’『(直訳』:「デーナの新鉱物学」『)にも琥珀類は掲載されていない』。『石炭組織学(石炭岩石学)では、石炭中の微細な樹脂状の粒を resinite(レジニット、レジナイト)と呼ぶ』。『植物化学の分野では』“amber” 『(琥珀)という用語は、広義に樹脂の化石全般を指すことがある』。一九九六『年発行の Amber, Resinite, and Fossil Resins では』、“f ossil resin” 『(化石樹脂)』“amber” 『(琥珀)』、“resinite” 『(レジニット、レジナイト)という用語は特に区別せずに同じ物質を指し、「石炭層などの堆積物中の固体の』個別『な有機物塊のうち、高等植物の樹脂を起源とするもの」と定義している』。『多くの琥珀の主成分はイソプレノイド』(isoprenoid:植物・昆虫・菌類・細菌などによって作り出される生体物質)『の重合体(ポリマー)』(polymer)『である』。『サクシナイトはバルト海沿岸以外にイングランドなどでも産出する。また、バルト海産の琥珀類であっても、サクシナイト以外のものもある』。『鉱物学で、コハク酸が少ない琥珀類似の物質は総称して retinite(レチナイト)と呼ぶ。琥珀類は試料ごとに特性が』、『皆』、『違う。そのため』、『エドワード・デーナは、個々に鉱物名をつけてもきりがなくて無駄だとして、サクシナイト以外のものをレチナイトと総称した』のであった。『日本の久慈産の薫陸』(くんろく)『は、コハク酸の含有量が少ないことからレチナイトの一種に分類された。「レチナイト」を「薫陸」の同義語のように説明している例があるが、「レチナイト」は総称なので、薫陸とは組成が全く違うレチナイトもある』。以下、「成り立ち」の項。『まず、樹液に含まれるテルペンが短期間で重合により』、『硬化して』、『天然樹脂になる。その後』、『長い時間を経るうちに蒸発、さらなる重合、架橋』(Cross-link:クロス・リンク:主に高分子化学に於いて、ポリマー同士を連結し、物理的・化学的性質を変化させる反応を指す)、『異性化などの化学変化により』、『琥珀となる』。『もっとも古い琥珀は』『石炭紀』(三億五千九百二十万年前から二億九千九百万年前まで)の『上部の地層の物とされている』。『ネックレス、ペンダント、ネクタイピン、 ボタンやカフリンクス』(cufflinks(単数形はcufflink)はドレスシャツ(ワイシャツ)やブラウスの袖口(カフ)を留めるための装身具)、『指輪などの装身具に利用されることが多い。人類における琥珀の利用は旧石器時代にまでさかのぼり、北海道の「湯の里』四『遺跡」、「柏台』一『遺跡」出土の琥珀玉(穴があり、加工されている)はいずれも』二『万年前の遺物とされ、アジア最古の出土(使用)例となっている(ゆえに真珠や翡翠と並び「人類が最初に使用した宝石」とも言われる)。また、ヴァイオリンの弓の高級なものでは、フロッグ』(Frog(英語):弓の、手で持つ部分の呼称)『と呼ばれる部品に用いられることがある。宝石のトリートメントとして、小片を加熱圧縮形成したアンブロイド』(Ambroid)、『熱や放射線等によって着色する処理も行われている』。『ロシアの琥珀なら』、『宝飾品に使われるのは三割程度と言われ、宝飾品にならない物が』、『工業用として成分を抽出して使われる』。『熱で分解した琥珀の残留物をテレビン油またはアマニ油に溶解させると、「琥珀ニス、琥珀ラッカー」ができ、木材の表面保護と艶出しに使える』。『その他の利用法として、漢方医学で用いられることがあったという』。『南北朝時代の医学者陶弘景は、著書』「名醫別錄」『の中で、琥珀の効能について』、『一に去驚定神、二に活血散淤、三に利尿通淋』『(精神を安定させ、滞る血液を流し、排尿障害を改善するとの意)と著している』。『ポーランドのグダンスク地方では琥珀を酒に浸し、琥珀を取り出して飲んでいる』。『樹脂の粘性に囚われた小生物(ハエ、アリ、クモ、トカゲなど)や、毛や羽、植物の葉、古代の水や空気(気泡)が混入していることがある。特に虫を内包したものを一般に「虫入り琥珀」と呼ぶ。昆虫やクモ類などは、通常の化石と比較すると、はるかにきれいに保存されることから、化石資料としてきわめて有用である』。『小説』「ジュラシック・パーク」(‘ Jurassic Park ’ :マイケル・クライトン(Michael Crichton 一九四二年~二〇〇八年:私は同書を面白いとは思わなかったが、彼との出会いは、私が中学二年の時、最初に大感激した彼の小説「アンドロメダ病原体」(‘ The Andromeda Strain ’ 浅倉久志訳・一九七〇年早川書房刊)で、ドラマ「ER」まで連綿とラヴ・コールは続いた)『のフィクションの設定は、琥珀内の蚊から恐竜の血とDNAを取り出して復元するというもので、作品発表当時のバイオテクノロジーで実際にシロアリでできたという事例がアイデア元となっている。ただし、数千万年前ともなると』、『琥珀に閉じ込められた生体片のDNAを復元することは実際には不可能である』。『市販の「虫入り琥珀」については、本物』・『偽物も交えて、偽物には精巧』・『稚拙』、『いろいろある。年代の浅い生物入りのコーパルを』、『あえて琥珀の名称で売っているもの、コーパルなどを溶解させ』、『現生の昆虫の死骸などを封入した模造品、樹脂で作った偽物、3Dプリント製など』があるので注意が必要である。『ビルマ琥珀』『は、ビルマ琥珀の古代生物相』『などの古生物を内包した琥珀が発掘される』。『特定の条件で琥珀を燃やした時に松木を燃やしたような香りがするが、近年の琥珀の香りと呼ばれるものは、人工的に再現された香が特許として取得され使用されている』とある。『それとは別に、近年のアンバーと呼ばれる香には、アンバーグリス』(Ambergris)『を再現したものも指している。このアンバーグリスは、琥珀と同様に浜に打ち上げられたマッコウクジラ』(哺乳綱鯨偶蹄目Whippomorpha亜目Cetacea下目ハクジラ小目マッコウクジラ科マッコウクジラ属マッコウクジラ Physeter macrocephalus )『の結石である』。『琥珀と似たような香木には、同様に樹脂の化石である薫陸というのも存在するが』、『コハク酸を含まない』。『産地だけなら世界中にあるが、産地のほとんどは海岸近くであり、比重が真水より重く海水より軽いことから』、『荒天時に海岸に流れ着いた結果ともされる。質と量が充実しているのはバルト海沿岸地域とドミニカ共和国。日本では岩手県久慈市で、質は良く、量は世界スケールで見れば』、『少ない』。『バルト海沿岸のプロイセンに相当する地域である、ポーランドのポモージェ県グダニスク沿岸とロシア連邦のカリーニングラード州が世界一の産地となっており、ポーランド・グダニスク沿岸とカリーニングラード州だけで世界の琥珀の』八十五%『を産出し、その他でも、リトアニア共和国、ラトビア共和国など大半がバルト海の南岸・東岸地域である』。『琥珀ができた年代は、それぞれの産地でことなり、久慈市で産するものは約』九千年『から』八千六百『年前の白亜紀のもので、バルト海のものは約』五千~四千『年前、ドミニカ産のものは約』三千八百~二千四百『年前の琥珀となる』。『産地であるバルト海沿岸を中心に、琥珀の交易路が整備された。この交易路は琥珀の道(琥珀街道)という名称が付けられた』。『ポーランドは琥珀の生産において圧倒的な世界一を誇り、世界の琥珀産業の』八十%『がグダニスク市にあり、世界の純正琥珀製品のほとんどが』、『このグダニスク地方で製造される』。『グダニスクでは国際宝飾展 AMBERMART が催される。また、琥珀博物館も建てられている』。『バルト海沿岸では、第二次世界大戦に使われた白リン弾から白リンが漏出し、琥珀と間違えて』、『火傷を負う事故が起きている。白リンは海中では発火しないが、人体に接触すると』、『発火発熱するため、注意が呼びかけられている』。『ドミニカ産のブルーアンバー』は、『青い波長のない光の下では普通の琥珀に見えるが、太陽光では青く見える』。『日本の岩手県久慈市近辺』で、『他には福島県いわき市や千葉県銚子市などで産出される』。『中国各地やミャンマー。インドネシアでは青色の琥珀も見つかっている』。『中央アメリカ』の『ドミニカ共和国、メキシコ合衆国。ドミニカ産琥珀』『には、歴史が新しめの熱帯林由来であるため』、『虫や小型爬虫類などが入っている場合が多く、赤や黄色を帯びているものもあるが、有機物質のペリレン』(perylene)『由来の青色も存在する』。『欧州では』、十八『世紀頃までは』、『海洋起源の鉱物だと考えられていた。海に沈んで上ってくる太陽のかけらや、人魚の涙が石となり、海岸に打ち上げられたのだと広く信じられていた。琥珀と黄金の二宝石は、太陽の化身と特別視された。その一方で、紀元』一『世紀』の『ローマの大プリニウスの著書』「博物誌」『には』、『既に植物起源と知られていたことが記されている』。『琥珀を擦ると布などを吸い寄せる摩擦帯電の性質を持つことは今日では有名であるが、歴史上最初に琥珀の摩擦帯電に言及をしたとされている人物は、現在は紀元前』七『世紀の哲学者タレスとされている』。『琥珀の蒸留物である琥珀油は』、十二『世紀に知られていた』。一五四六『年にゲオルク・アグリコラは、コハク酸を発見した。古代ローマの博物学者プリニウスは、既に琥珀が石化した樹脂であることを論じていたが、その証明は』十八『世紀のロシアの化学者ミハイル・ロモノーソフによってなされた』。一八二九『年にイェンス・ベルセリウスは、現代的な手法で化学分析を行い』、『琥珀が可溶性および不溶性成分からなることを発見した』。『琥珀様の色、透明感のある黄褐色や黄金色、黄色寄りのオレンジ色などを琥珀色または英語にならってアンバー(英:amber)と称し、ウイスキーの色あいなどに詩情を込める表現で用いられる。また、方向指示器の黄橙色などもアンバーと称する事例も見られる。 英語では、純色のうちオレンジ色と黄色の中間に当たる色(黄橙色、黄金色っぽい黄色)や交通信号機の黄信号を amber と表現する場合がある』とある。
「本草綱目」の引用は、「漢籍リポジトリ」の「卷三十七」の「木之四」「寓木類」の二番目にある([090-8a]以下)「琥珀」、及び、その最後に独立項である「瑿」([090-10b]以下)のパッチワークである。
「阿濕摩揭婆《あしばけいば》」「大蔵経データベース」で検索したところ、法雲編の「翻譯名義集」の「三」に『阿濕摩掲婆。此云琥珀。其色紅瑩。博物誌云。松脂入地千年。化爲茯苓。茯苓千年化爲琥珀。廣誌云。生地中。其上及傍。不生草木。深者八九尺。大如斛。削去上皮。中是琥珀牟婆洛掲拉婆。或牟呼婆羯落婆。此云青白色寶。今名硨磲。尚書大傳云。大貝如車之渠。渠謂車輞。其状類之。故名車渠。渠魁也』とあった。
「楓脂《ふうし》」何度も注意喚起しているが、この「本草綱目」で言う、則ち、中国語の「楓」は、本邦の我々に親しいムクロジ目ムクロジ科カエデ属 Acer のそれとは、全くの別種の、
ユキノシタ目フウ科フウ属フウ Liquidambar formosana
を指すからである。先行する「楓」を参照のこと。
「茯苓」「伏苓」前項「茯苓」を見よ。
「紅松脂《こうしようやに》」裸子植物門マツ亜門マツ綱マツ亜綱マツ目マツ科マツ属 Strobus 亜属 Cembra 節チョウセンゴヨウ Pinus koraiensis の樹脂である。ゆめゆめ、マツ属アカマツ Pinus densiflora と思われぬように!
「水珀《すいはく》」琥珀の一種で、水滴を封じ込んだものを指す。「百度百科」の当該項を参照。画像有り。
「石珀」黄色で透明で、石化の度合いが高く、より硬度の高い琥珀を指す。「百度百科」の当該項を参照。同前。
「花珀」ミャンマー産のものが著名。グーグル画像検索「花珀 原石」の中の原石画像を見られたい。
「馬尾松」マツ属タイワンアカマツ(バビショウ) Pinus massoniana 。当該ウィキによれば、『中国の南部を中心に広く分布する松で、針状の葉が』十五~二十センチメートル『と長くなり、ウマの尾を連想させるために、中国ではこの名が付いている。和名』別名『は中国語の漢字を音読みしたもの。アカマツと同じ二葉松であり、日本が台湾を統治した際によく目にしたため、タイワンアカマツ(台湾赤松)とも呼ばれる』。『中国の河南省から江西省、貴州省、海南省までの範囲の低山に広く分布する。特に福建省、広東省、広西チワン族自治区、湖南省の山地に密集している。台湾にも分布し、ベトナム北部から中部にかけても分布する』。『樹高は』二十五~四十五メートル『程度。樹皮は灰褐色で、厚い』。『中国では、松脂を採取する木として重要であり、植林も計画的に行われている。植林後、約』十五『年経つと、幹が松脂の採取が可能な直径に育つ』。『松脂を採取した後の木材は、枕木などの用途に用いられるほか、粉砕して、製紙用のパルプに利用されることが多い』。『葉は、紅茶の一種のラプサンスーチョン』(英語:Lapsang souchong・中国語:正山小種・立山小種・煙茶・烟茶。紅茶の茶葉を、松葉で燻して着香したフレーバー・ティーの一種で、癖のある非常に強い燻香が特徴。産地は福建省武夷山市周辺の一部)『の香り付けにも用いられる』とある。
「物象珀《ぶつしやうはく》」生物体が封じ込まれた琥珀を指す。
「瑿珀《えいはく》」ブラック・アンバー。「百度百科」のこちらを参照されたい。同前。
「蠟珀」ワックス・アンバー。蝋のような雰囲気を持った黄色の琥珀で、気泡を多く含むため、透明度が悪く、比重も低い。「百度百科」のこちらを参照されたい。同前。
「香珀」芳香成分が含まれているために香りが良い琥珀を指す。「百度百科」のこちらを参照されたい。画像はないが、解説動画の中に出る。
「五淋」石淋・気淋・膏淋・労淋・熱淋という膀胱・尿路に関する症状を指す語。
「五雜組」「五雜俎」とも表記する。明の謝肇淛(しゃちょうせい)が撰した歴史考証を含む随筆。全十六巻(天部二巻・地部二巻・人部四巻・物部四巻・事部四巻)。書名は元は古い楽府(がふ)題で、それに「各種の彩(いろどり)を以って布を織る」という自在な対象と考証の比喩の意を掛けた。主たる部分は筆者の読書の心得であるが、国事や歴史の考証も多く含む。一六一六年に刻本されたが、本文で、遼東の女真が、後日、明の災いになるであろう、という見解を記していたため、清代になって中国では閲覧が禁じられてしまい、中華民国になってやっと復刻されて一般に読まれるようになるという数奇な経緯を持つ。以上は「卷十」の「物部二」の一節。「維基文庫」の電子化されたここにあるものを示しておく(コンマその他は読点に代えた。一部の漢字表記に手を加えた)。
*
昔人謂松脂墜地、千年爲琥珀。又云是楓木之精液、多年所化。恐皆未必然。中國松、楓二木不乏、何處得有琥珀。而夷中產琥珀者、豈皆松嶺楓林之下乎。此自是天地所生一種珍寶。卽他物所變化、孰得而見之。又如水晶、雲千年老冰所化、果爾、則宜出於北方冱寒之地。而南方無冰、却有水精。可知其說之無稽矣。琥珀、血珀爲上、金珀次之、蠟珀最下、人以拾芥辯其眞僞、非也。僞者傳之以藥、其拾更捷。
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「雲南の永昌」現在の雲南省昆明市西山区永昌(グーグル・マップ・データ)。
「金珀」「百度百科」の「金珀」には、『黄金の琥珀』とし、『透明な琥珀はアンバーと呼ばれ、不透明な琥珀は緻密なワックスと呼ばれ』、『黄色は金と呼ばれる。明代の謝昭哲の「呉子圖」の「呉布四」の中で、『琥珀、血琥珀が一番上、金琥珀が二番目、蠟琥珀が一番下」と記している』とある。
「銀珀」前掲の「鉱物たちの庭」の「琥珀(バーマイト) Amber(Burmite) (ミャンマー産)」のページに、『雲南産の』、『やや淡い赤黄色のものは金珀で、次品。日本では銀珀と呼んだ。その次が淡い黄色のもので日本では蝋珀といった。蜜蝋に似るため』とあった。
『倭の「薫陸《くんろく》」』小学館「日本国語大辞典」の「くん-ろく【薫陸】」に、『「ろく」は「陸」の呉音』とし、『① インド、イランなどに産する樹のやにの一種。盛夏に、砂上に流れ出て、固まって石のようになったもの。香料、薬用となる。乳頭状のものは、乳香という。くろく。なんばんまつやに。薫陸香(くんろっこう)』とし、次いで、『② 松、杉の樹脂が、地中に埋もれ固まってできた化石。琥珀』『に似るが、琥珀酸を含まない。粉末にして薫香とする。岩手県久慈市に産する。わのくんろく』とある。]
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