和漢三才圖會卷第八十五 寓木類 附 苞木類 樹竹之用 樹
和漢三才圖會卷第八十五 寓木類 附 苞木類 樹竹之用 樹
樹竹之用
[やぶちゃん注:挿絵には、十項のキャプションがある。右→中央→左へ、上から下に向かって起こすと、「葉」・「枝」・「榦」(以上「右」。「榦」の字は「幹」の異体字である。「グリフウィキ」のこちらを見られたい(ぐっと下まで見よ))、「木末」「杪」(孰れも「こずゑ・こぬれ」)「條」(こえだ)・「橗(シン)」(以上、中央)、「翹楚(スハヱ)」(読みはママ。「すはへ・すはえ」でよい。木の枝や幹から、まっすぐに細く長く伸びた若い小枝のことを指す語で、「すわい」「ずわい」「すわえぎ」とも読む)・「枿」(ひこばえ)・「株」(かぶ)である。]
うへき 橗【音萠】木心也
杪 梢【同】
樹【音孺】 【和名古須惠】
根 入土𠙚
株【和名祢
土上也
和名久比世
今云加布】
△按樹【宇倍木】植木總名也 大枝曰榦【和名加良】 細枝曰條
又曰枝柯【和名衣太】 樹岐曰权【音砂】丫椏並同【和名末太布里】 木
𧄍髙起曰𧄍楚【俗云須波惠】木中之獨髙起者以况人之出
類拔萃也【今俗用氣條字】 伐木而根復生曰枿【俗云比古波惠】 斫
過樹根傍復生嫩條曰蘖【與𣎴同。】木幹榦中折而復生支旁
達者曰𣎴【牙葛切】右枿蘖𣎴三字註有少異而其本字𣎴
也
凡樹陰曰樾【音越和名古無良】 木自斃曰柛【音身】立死曰椔【音支】
木文曰橒【音雲俗毛久】 衆樹蔭蔽曰蓊薆【波江乃之太】
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樹竹《じゆちく》の用
[やぶちゃん注:この中題目は、樹木類・竹笹類の凡例解説を意味する。]
うへき 橗《バウ》【音「萠《バウ》」。】。木の心《しん》なり。
杪《シヨウ》 梢《べう》【同じ。】
樹【音「孺《ジユ》」。】 【和名「古須惠《こずゑ》」。】
根《コン》 土《つち》に入《い》≪るる≫𠙚。
株《シユ》【和名「祢《ね》」。土より、上なり。
和名「久比世《くひぜ》」。今、云ふ、
「加布《かぶ》」。】
[やぶちゃん注:以下、一字空けになっている箇所と、その他の独立と見なせる部分を、各小項として、特異的に改行して、読み易くした。]
△按ずるに、「樹《じゆ》」【「宇倍木《うへき》」。】は、「植木」の總名なり。
「大枝《だいし》」を「榦(から)」と曰《いふ》【和名「加良《から》」。】
「細枝《さいし》」を「條《じやう》」と曰《いひ》、又、「枝柯《しか》」【和名「衣太《えだ/ゑだ》」】と曰《いふ》。
「樹の岐(また)」を「权(また)」【音「砂」。】と曰《いひ》、「丫《ア》」・「椏《ア》」、並《ならびに》同《おなじ》【和名「末太布里《またふり》」。】。
「木、𧄍《ぬきんで》て、髙く起《おこれる》こと。」を、「𧄍楚(すはぎ)」【俗、云ふ、「須波惠《すばゑ》」。】と曰《いふ》。
「木≪の≫中の、獨り、髙く起《た》つ者《もの》。」、以《もつて》、「人の類《るゐ》≪に≫萃《すい》≪を≫拔≪きて≫出≪づ≫[やぶちゃん注:これは全く返り点がないので、良安は「出類拔萃」を音で「シユツルイバツスイ」と読んでいるようだが、勝手に返って、訓読した。]」に况(たと)ふなり【今、俗、「氣條《きえだ》」[やぶちゃん注:気が細長く伸びるの意か。]の字を用ふ。】。
「木を伐《きり》て、根、復《また》、生ずる。」を「枿(ひこばへ)」【俗、云ふ、「比古波惠《ひこばゑ》」。】[やぶちゃん注:「蘖(歴史的仮名遣:ひこばえ)」。原語は「孫(ひこ) 生え」の意で、「切り株や木の根元から出る若芽」を指す。「余蘖(よげつ)」とも言う。]と曰《いふ》。
「樹を斫《きり》過《すご》し、根の傍《かたはら》に復《ふた》たび、嫩條《わかえだ》を生ずる。」を、「蘖(わかばへ)」【「𣎴《がち》」と同じ。】と曰《いふ》。
「木の榦(おほまた)、中《なか》より折れ、復た、支《えだ》を生《しやうじ》、旁《かたはら》に達《たつする》者。」を、「𣎴」【「牙」「葛」の切《せつ》。】と曰《いふ》。右≪の≫「枿」・「蘖」・「𣎴」≪の≫三字の註、少異、有れども、其の本字は「𣎴」なり。
凡そ、樹の陰を「樾(こむら)」【音「越」。和名「古無良《こむら》」。】と曰《いふ》。
「木、自《みづか》ら、斃(たをるゝ[やぶちゃん注:ママ。])こと。」を「柛《シン》」【音「身」。】と曰ひ、「立《たち》ながら、死《か》る。」を、「椔(たてがれ[やぶちゃん注:ママ。「立ち枯れ」。])」【音「支」。】と曰《いふ》。
「木の文(あや)」を「橒《ウン》」【音「雲」。俗、「毛久《もく》」。】と曰《いふ》。
「衆樹《しゆじゆ》の蔭蔽《いんぺい》」を「蓊薆(はへのした)」【「波江乃之太《はえのした》」。】と曰《いふ》。
[やぶちゃん注:「𣎴」(部首は木部)は、「廣漢和辭典」によれば、第一義で、『切り株。𣡌の古字』とし、第二義で、『木の先が曲がってのびない』とある。
「蓊薆(はへのした)」「蓊」「薆」の字はともに「草木が盛んに茂るさま」の意で、和訓のそれは、恐らく「延(は)への下」で、茂り延びた枝葉で木蔭が出来ることを指しているのであろう。]
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