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2024/11/01

「和漢三才圖會」植物部 卷第八十四 灌木類 䑕取樹 / 卷第八十四 灌木類~了

 

Haribuki

 

ねすみとり 俗稱 【正字未考】

 

䑕取樹

 

 

△按䑕取樹遠州竹林中多有之髙一尺許如山橘樣而

 葉似𢎘絃葉長三四寸背莖有細刺觸之人刺入皮膚

[やぶちゃん字注:「𢎘」は「弓」の異体字。]

 難脫不知何因名䑕取乎蓋摘葉用覆置天井上則䑕

 不敢走若栗梂能避天井䑕之類爾秋結赤實大三倍

 似山橘實余國此樹未有矣

 

   *

 

ねずみとり 俗稱 【正字、未だ考へず。】

 

䑕取樹

 

 

△按ずるに、䑕取≪の≫樹は、遠州の竹林の中に多く、之れ、有り。髙さ、一尺許《ばかり》。「山橘(やぶかうじ)」樣《やう》≪の≫ごとくにして、葉は、「𢎘絃葉《ゆづりは》」[やぶちゃん注:「𢎘」は「弓」の異体字。]に似て、長さ、三、四寸。背の莖に、細き刺《とげ》、有り。之れに觸る≪れば≫、人、刺《さ》≪され≫、皮膚に入《いり》て、脫(ぬ)け難し。知らず、何に因りて、「䑕取」と名づくるか。蓋《けだし》、葉を摘(むし)り、用《もちひ》て、覆(うつむ)け、天井(てんじやう)の上に置けば、則ち、䑕、敢《あへ》て、走らず。栗の梂(いが)、能く天井の䑕を避《さく》るごときの類《たぐひ》のみ。秋、赤き實を結《むすぶ》。大いさ、似≪れる≫「山橘(やぶかうじ)」の實より三倍なり。余國には、此の樹、未だ有らず。

 

[やぶちゃん注:東洋文庫訳で、本文の解説の中の『取樹』に割注して、『(ウコギ科ハリブキ)』とする。それは、

双子葉植物綱類セリ目ウコギ(五加木)科ハリブキ属ハリブキ Oplopanax japonicus

である。但し、辞書及びネット記事にハリブキの異名とする記事は見当たらなかった。当該ウィキを引く(注記号はカットした)。漢字表記『針蕗』。『雌雄異株』。『高さは』一メートル『くらいになり、茎には針状の刺が密生する。葉は茎に互生し、直径』三十~四十センチメートル『の掌状になり、葉柄にも葉脈にも刺がつく。花期は』六~七『月で、緑白色の目立たない小さな花を多数つける。秋に果実が赤く熟す』。『北海道、本州、四国に分布し、深山の樹林下、特に針葉樹林内などのやや薄暗い場所に自生する』とある。「ブリタニカ国際大百科事典」の同種の解説の中に、『ごく近縁の種類が』、『北アメリカ東部にあり』、『太平洋をはさむ分布として有名である』とあったのが、目に止まった。

「山橘(やぶかうじ)」双子葉植物綱ツツジ目サクラソウ科ヤブコウジ亜科ヤブコウジ属ヤブコウジ Ardisia japonica 。先行する「山橘」を見られたい。

「𢎘絃葉《ゆづりは》」ユキノシタ目ユズリハ科ユズリハ属ユズリハ亜種ユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. macropodum 。先行する「讓葉木」を見られたい。]

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