和漢三才圖會卷第八十六 果部 五果類 金絲桃
きんしとう
金絲桃
[やぶちゃん注:「きんしとう」はママ。]
木本花詩譜云金絲桃花如桃而心有黃鬚鋪散於外若
金絲然亦以根下剪開分種
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きんしとう
金絲桃
「木本花詩譜」に云はく、『金絲桃、花、桃のごとくして、心《しん》[やぶちゃん注:芯。]に黃なる鬚《ひげ》有りて、外《そと》に鋪散《しきさん》じて、金≪の≫絲《いと》のごとく、然《しか》り。亦、根≪の≫下を以つて、剪《き》り開《ひらき》て、種《たね》を分ける。』≪と≫。
[やぶちゃん注:これは、桃では全くなく、
双子葉植物綱キントラノオ(金虎尾)目オトギリソウ(弟切草)科オトギリソウ属ビヨウヤナギ節 sect. Ascyreia ビヨウヤナギ(未央柳) Hypericum monogynum
である。臺灣正體で同属の「金絲桃屬」を見られたい。ウィキの「ビヨウヤナギ」を引く(注記号はカットした)。『半落葉』『広葉』『低木。ビョウヤナギとも通称するが、園芸的な呼び名であり植物名としては誤り』である。『枝先がやや垂れ下がり』、『葉がヤナギに似ているので、ビヨウヤナギと呼ばれるが、ヤナギの仲間ではない』。『中国では金糸桃と呼ばれている。ビヨウヤナギに未央柳を当てるのは日本の通称名。由来は、白居易の「長恨歌」に』、
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太液芙蓉未央柳
芙蓉如面柳如眉
對此如何不淚垂
太液(たいえき)の芙蓉(ふよう) 未央(びあう)の柳
芙蓉は面(おもて)のごとく 柳は眉(まゆ)のごとし
此れに對して 如何(いかん)ぞ 淚 垂れざらん
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★全詩は私の『白居易「長恨歌」原詩及びオリジナル訓読・オリジナル訳附』を見られたい。
『と、玄宗皇帝が楊貴妃と過ごした地を訪れて、太液の池の蓮花を楊貴妃の顔に、未央宮殿の柳を楊貴妃の眉に喩えて』、『未央柳の情景を詠んだ一節があり、美しい花と柳に似た葉を持つ木を、この故事になぞらえて未央柳と呼ぶようになったといわれている』。『中国原産。日本へは江戸時代に中国から渡来した』(正確には、本邦に渡来したのは、宝永五(一七〇八)年)頃とされる。本「和漢三才圖會」の成立は正徳二(一七一二)年であるから、良安の附言がないは頷かれる)。『古くから庭木や生け垣、公園樹としてよく植えられ、花材としてもよく用いられる』。『高さは』一・五『メートル』『前後、よく枝分かれして株立ち状になる。葉は十字対生する。葉身は長さ』五『センチメートル 』、『幅』二十五『ミリメートル』『の披針状の長楕円形で、中央部が最も幅広く、葉質は薄くてやわらかい。冬場の間も落葉せずに残っており、新葉が出ると同時に古い葉が落ちる。葉縁に鋸歯はなく、基部が茎を抱く』。『花期は』六~七『月ごろで、直径』五センチメートル『程度の鮮やかな黄色の』五『枚の花弁のある花を』、『多数』、『枝先に咲かせる。花弁はくさび形で、特に長い雄蕊が多数』、『つき、よく目立つのが特徴的である』。『これら雄蕊の基部は』五『つの束になっていて、雌蕊の先端は』五『つに裂けている。果実は円錐形で、先端に萼片を残す』。『一見してよく似ている植物にキンシバイ』(金糸梅:ビヨウヤナギ節キンシバイ Hypericum patulum )『があるが、こちらは』、『葉が披針形で基部が最も幅広く、普通に平面的に対生しており、花が小ぶりで雄しべが長くないので容易に区別できる』。『全草に消炎、利尿、鎮痛の効果があるといわれている。特に、全草を煎じて飲むと、腎臓結石を下す効果があるとされ、婦人病の薬としても利用されているといわれる。虫刺されに、葉を揉んで汁を患部につけると、効果があるといわれる』とある。
「木本花詩譜」東洋文庫の巻末の「書名注」を参考にすると、まず、「木本花詩譜」に『画譜』の中の『木本花譜』一巻のことであろうか。』とした次に、「木本画譜」を挙げ、その『『木本花譜』と同じものを指すか。』とする。而して、「画譜」は複数回既出既注で、再掲すると、「八種畫譜」。明の黄鳳池の編。「唐詩五言畫譜」・「新鐫六言唐詩畫譜」・「唐詩七言畫譜」・「梅竹蘭菊四譜」・「新鐫木本花鳥譜」・「新鐫草本花詩譜」・「唐六如畫譜」・「選刻扇譜」から成るものである。
……それにしても、またしても、東洋文庫訳は、桃じゃないのに、シカトして訳だけで、種同定を、全く、していない。やっぱり、ダメだな、東洋史専攻じゃ……]