茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 「一人の少女が歌ふ」
一人の少女が歌ふ
私は遠い異國で子供だつた。
あはれに、やさしく、盲目に――
羞耻の中から忍出た時まで。
私は森や風の蔭に私といふものを
もう長い間待つてゐる、確に。
私は獨りだ、家からは遠い
そして靜かに思ふ、私はどんなに見えるのかと――
―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
私を誰だと問ふ人があらうか。
……ああ私は若くて
ブロンドだ
そして祈禱も出來た。
そして確に無益(むだ)に輝らされて
知られずに私の側を行過ぎる。
[やぶちゃん注:標題の位置・ポイント(本文と同じ)はママ。
「確に」「たしかに」。
「輝らされて」「かがやからされて」では、リズムが悪い。「てらされて」であろう。]
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