茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「豫感」
豫 感
私は旗のやうに遠くから圍まれてゐる。
來る風を豫感して、それを生きなくてはならない、
下の物は末だ動かないのに。
扉はなほ軟く閉まつて、暖爐も靜かに。
窗も未だ慄はず、埃も未だ重い。
その時私はもう嵐を知つて海のやうに興奮し、
私を擴げ、私の中に落ち入り、
私を投げすてる、そして全くただ一人、
大きな嵐の中に。
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