茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「時禱篇」「修道院生活」
時 禱 篇
修道院生活
時間は傾いて、明るい
金屬の響で私に觸れ、
私の感官は慄へる。私は感ずる、私は出來る――
そして私は彫塑的な日をつかむ。
私の見なかつた中は、何も完成してゐなかつた。
總べての生成は止つてゐた。
私の眼は熟してゐる。そして花嫁のやうに
誰にでもその思ふものが來るのだ。
何でも私に小さ過ぎはしない。私は小さくても愛する。
そして金地へ大きくそれを畫いて
高く捧げる。誰にかは知らないが
それは魂を解きほぐす……
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