茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「家神奉幣」(一八九五年) 「夢」
夢
夜は來る、寶石で豐(ゆたか)に
飾られた碧いろの衣の緣(へり)。――
そのマドンナの兩手で、夜は
やはらかく私に夢を渡す。
やがて夜はその義務を果たさうと、
靜かな足どりで町を去る。
そして夢を與へたつぐのひに
病む兒の魂をつれてゆく。
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