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2025/01/05

和漢三才圖會卷第八十七 山果類 椑柹

 

Aburagaki

 

しぶかき   𣾰柹 花椑

       烏椑 青椑

       緑柹 赤棠椑

椑柹

       【俗云之布加木】

       此木老者心黒

ピイ スウ  堅俗名黒柹

 

本綱椑柹乃柹之小而卑者大如杏他柹至熟則黃赤惟

此柹雖熟亦青黑色擣碎浸汁謂之柹𣾰可以染𫅋扇諸

不可與蟹同食

△按柹𣾰【俗云之布】造法椑柹一斗去蒂和水二升五合碓擣

 盛桶經宿搾之渣亦和水經二日再搾之其用甚多染

 紙爲衣爲行李裹染布爲酒搾帒或和墨塗筧皆爲水

 不昜朽或𣾰塗之下先用柹𣾰凡柹𣾰夏月焦枯難貯

 茄子【切片】可投入又流柹𣾰於川上則鰷鯽大醉浮出

 

   *

 

しぶがき  𣾰柹《うるしがき》 花椑《くわひ》

      烏椑《うひ》 青椑《せいひ》

      緑柹《りよくし》 赤棠椑《せきたうひ》

椑柹

      【俗、云ふ、「之布加木《しぶがき》」。】

      此の木、老《らう》する者、心《しん》

      黒く、堅し。俗、「黒柹《くろがき》」と

ピイ スウ   名づく。

 

「本綱」に曰はく、『椑柹《ひし》は、乃《すなはち》、柹の小《しやう》にして、卑《いやし》き者なり。大いさ、杏《あんず》のごとし。他《ほか》柹は、熟するに至り、則《すなはち》、黃赤《わうせき》≪とたるも≫、惟《ただ》、此の柹≪のみ≫、熟すと雖《いへども》、亦、青黑色≪なり≫、擣《つ》き碎《くだき》、汁に浸≪し≫、之れを、「柹𣾰《かきうるし》」と謂《いふ》。以≪つて≫、𫅋《あみ》[やぶちゃん注:漁網。]・扇、諸物を染む。蟹と同≪じく≫食ふべからず。』≪と≫。

△按ずるに、柹-𣾰(しぶ[やぶちゃん注:二字へのルビ。])【俗、云ふ、「之布《しぶ》」。】、造る法。椑柹《しぶがき》一斗、蒂《へた》を去《さり》、水、二升五合に、和(ま)ぜて、碓-擣《つきうち》、桶《をけ》に盛り、宿《しゆく》を經て、之れを搾(しぼ)り、渣(かす)も亦、水に和して、二日を經《へ》、再たび、之れを搾《しぼ》る。其の用、甚だ多し。紙を染《そめ》、衣《ころも》と爲《なし》、行李裹(かうりつゝみ)と爲し、布を染《そめ》て、酒搾帒(さかぶくろ)と爲《なし》、或≪いは≫、墨≪を≫和(ま)ぜて、筧(かけひ)を塗(ぬ)る。皆、水の爲めに、朽ち昜《やす》からず。或《あるい》は、𣾰塗《うるしぬり》の下《した》≪に≫、先づ、柹-𣾰《しぶ》を用ふ。凡そ、柹-𣾰(しぶ)、夏月、焦-枯(やけ《かれ》)て、貯へ難し。茄子《なすび》【切片で。】≪を≫投入《なげいる》るべし。又、柹-𣾰を川上に流せば、則《すなはち》、鰷・鯽、大《おほい》に醉《ゑひ》て浮出《うかびい》づ。

 

[やぶちゃん注:一見、寒冷性の渋柿(前項の「柹」の注で示した「完全渋柿」を指すと考えてよかろう)群でよいと考えてしまうが、東洋文庫訳では、「本草綱目」の引用で出す「椑柹《ひし》」に割注して、『(カキノキ科アブラガキ)』と特定するので、これは、狭義の、本邦で野生種のカキノキとする、

双子葉類植物綱ツツジ目カキノキ科カキノキ属カキノキ変種ヤマガキ Diospyros var. sylverstris

を指すかとも思われたのだが、これに就いては、「跡見群芳譜 樹木譜 かき(柿)」にある中国産の「野柿・油柿・山柿」であり、そこでは、『福建・江西・兩廣・雲南』原産とするものであるが、しかし乍ら、同ページには、別に、

◎アブラガキ Diospyros oleifera

を「油柿」と表記し、原産地を『安徽・浙江・江西・福建・湖南・兩廣産』と記している。

さらに、★「維基百科」では、「椑柿」が「油柿」の独立項に送られてあり、そこでも、

◎油柿 Diospyros oleifera

という学名が示されてある。同属の英文ウィキをみても、この油柿 Diospyros oleifera Diospyros var. sylverstris をシノニムとする記載はなく、そもそも、英文ウィキで全検索をしても、どこにも、Diospyros var. sylverstris 自体の記載が存在しないので、油柿 Diospyros oleifera が正しいことが判った。明確には言い難いが、この事実は、本邦でまことしやかにカキノキ変種ヤマガキ Diospyros var. sylverstris と記載される種は、公的に全世界的に認められているものではない臭さが感じられなくもない。参考に、グーグル画像「油柿 Diospyros oleifera」をリンクさせておく。上から二段目半ばまでは、中国のサイトのものであるから、同種の画像として安心して見ることが出来る。青柿の実の有意な丸さや、割った実の核(さね)の様子など、私の知っている本邦のカキでは、見知ったものとは、ちょっと違うように感ずる。見られたい。

 ウィキの「カキノキ」「渋柿」の項があるが、既に前項で当該部を整理して引用してあるので、繰り返す気はないので、そちらを見られたい。悪しからず。

 「本草綱目」の引用は、「卷三十」の「果之二」の「椑柹」の項(「漢籍リポジトリ」のここ[075-23a]以降)のパッチワークである。短いので、一部に手を加えて、以下に示しておく。

   *

椑柹【音卑士宋開寶】

 釋名漆柹【日華】綠柹【日用】靑椑【廣志】烏椑【開寳】花椑【日用】赤棠椑

【時珍曰椑乃柹之小而卑者故謂之椑他柹至熟則黃赤惟此雖熟亦靑黑色擣碎浸汁謂之柹漆可以染罾扇諸物故有漆柹之名】

 集解【志曰椑柹生江淮以南似柹而靑黃潘岳閒居賦所謂梁侯烏椑之柹是也頌曰椑柹出宣歙荆襄閩廣諸州柹大如杏惟堪生啖不可爲乾也】

 氣味甘寒濇無毒【弘景曰椑生啖性冷服石家宜之不入藥用不可與蟹同食】

 主治壓丹石藥發熱利水解酒毒去胃中熱久食令人

 寒中【開寶】止煩渴潤心肺除腹臟冷熱【日華】

   *

 後は、特に注の必要を認めないので、これにて終わる。]

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