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2025/01/19

茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「舊詩集」 「少女等がうたふ」

 

  少女等がうたふ

お母樣だちの話されたやうな時は、

私たちの寢室(ねま)にはなかつた。

そこでは總べて滑かで明(あきら)かだつた。

嵐に吹きまくられた或る年に

挫けたと云はれるが。

 

私らは知らない。何だらう、嵐とは。

 

私らは何時も深く塔の中に住み

をりをりただ遠くから

外の森が風に搖れるのを聞くばかり。

一度は見知らない星が

私たちの側に立止つた。

 

それから庭にゐると、

始まるのかと、震へて

日に日に待つてゐる――

 

しかし私らを撓(たわ)ましさうな

風は何處にもない。

 

[やぶちゃん注:標題の位置・ポイント(本文と同じ)はママ。

「挫けた」「くじけた」。

「何時も」「いつも」。

「側」「そば」。]

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