茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「第一詩集」「家神奉幣」(一八九五年) 「冬の朝」
冬の朝
瀧は凍りついた。
烏は池の直ぐ側にうづくまる。
私の美しい子は耳を赤くして、
何か惡戲(いたづら)を考へてゐる。
太陽が私たちに接吻する。
夢みごこちな響が木の枝の中を軟音(モル)で泳ぐ。
私たちは進んでゆく。毛孔は皆
强い朝の芳香に充たされて。
[やぶちゃん注:「軟音(モル)」原詩(ドイツ語サイトのここで原詩を確認した)では“Moll”。これは、辞書(ドイツ語の辞書は、去年、亡くなった親友が呉れた)を引くまでもなく、音楽用語の「短調」である。「軟音」という語は知らない。]
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