茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版 「巡禮の歌」(一九〇一年) (今お前はお前のこころへ、……)
今お前はお前のこころへ、
平野へゆくやうに出なくてはならない。
大きな寂寥が始まる。
日々は聾(し)ひ、
風はお前の感覺から
枯葉のやうに世界を奪ふ。
その空しい枝を透いて
お前の持つ天が見える。
今こそ地となれ、夕の歌となれ、
また彼の守る國となれ。
事物のやうに謙遜(へりくだ)れ、
現實に熟せ――
知識の源である者が、
汝をつかむ時、汝を感ずるやうに。
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