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2025/01/22

茅野蕭々譯「リルケ詩抄」正規表現版「形象篇」「第一卷」 「孤獨」

 

 孤 獨

 

孤獨は雨のやうだ。

大海から夕ゆふべを迎へて上る。

遠く隔つた平野から

孤獨は天へゆく、天はいつも孤獨を持つてゐる。

そして天から始めて都會の上へ落ちる。

 

すべての街が東に向くとき、

そして何物をも見出さなかつた肉體と肉體とが

失望して悲しげに離れる時、

晝夜の間の時間に雨と降る。

そして互に嫌つてゐる人間が

一つ床に一緖に寢なければならない時

 

その時孤獨は流河と共に行く……

 

[やぶちゃん注:先行する、ここにある最後の詩篇「祈りの後」を踏まえるなら、「夕(ゆふべ)ゆふべ」であって、誤りではない。岩波文庫の校注にも、そのような判断記載がある。なお、そこには、再版「詩集」で、かなりの箇所に手入れをしていることが記されている。それに従って、改訳版を復元しておく。

   *

 

 孤 獨

 

孤獨は雨のやうだ。

大海から夕ゆふべを迎へて上る。

遠く隔つた平野から

孤獨は天へゆく、天はいつも孤獨を持つてゐる。

そして天から初めて都會の上へ落ちる。

 

晝夜の間の時間に雨と降る。

すべての街が朝に向くとき、

そして何物をも見出さなかつた肉體と肉體とが

失望して悲しげに離れる時、

そして互に嫌ふ人間が

一つ床に一緖に寢なければならない時、

 

その時孤獨は流河と共に行く……

 

   *]

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